【祝】 湯徳章を機縁に宇土市、宇城市、美里町と台南市が「友好交流協定」を締結

3月13日は、1947年の「2・28事件」で、身を挺して台南市民の命を救った弁護士、湯徳章(日本名:坂井徳章)の「正義と勇気の記念日」。

頼清徳総統が台湾市長時代の2014年に定めました。

湯徳章は熊本県宇土(うと)市出身の坂井徳蔵と台湾出身の湯玉を父母として台南で育ち、日本に渡って難関中の難関だった高等文官試験司法科(現在の司法試験)と行政科(現在の国家公務員試験総合職試験)に合格し、台南に戻って弁護士事務所を開設。

2・28事件では、二二八事件処理委員会台南分会治安組長として地方の秩序維持に努めましたが、国民党軍によって逮捕され、拷問を受けても決起を図った人々の名前を明かさなかったため、1947年3月13日に大正公園(現在の湯徳章記念公園)で公開銃殺されました。

湯徳章の没後78年を迎えた命日の3月13日午前、この湯徳章記念公園で追悼会が開かれました。

黄偉哲・台南市長をはじめ、日本からもこの日にぜひ参加したかったという熊本県宇土(うと)市の元松茂樹・市長、美里町(みさとまち)の上田泰弘・町長、天川竜治・宇城(うき)市副市長ら39名が参加しました。

参加者は湯徳章の銅像に献花後、公園から歩いてすぐのところにある湯徳章の旧宅に向かい、修復のために休止していた旧宅を記念館として再開するセレモニーにも立ち会いました。

この日の午後は、宇土市、美里町、宇城市の2市1町と台南市の「友好交流協定」締結式が行われ、この模様を「台南市政府市府新聞」と中央通信社が報じていますので下記にご紹介します。

熊本県は、今回の台湾との都市間提携で10件目となりますが、台湾で敬愛されている熊本県出身の先人を機縁とする提携は3件に及んでいます。

「大甲の聖人」志賀哲太郎を機縁として益城町と台中市大甲区(2023年1月)、「六士(氏)先生」の一人、平井数馬を機縁として小国町と台北市士林区(2024年2月)、そして今回の「台南の英雄」湯徳章を機縁とする宇土市、美里町、宇城市の2市1町と台南市の「友好交流協定」です。

このような地元の偉人を機縁とした台湾との都市間提携は他の都道府県にはほとんど見られず、熊本県の大きな特徴となっています。

この背景には平井数馬顕彰会や志賀哲太郎顕彰会など、民間による粘り強い先人の顕彰活動がその土台となっていて、3件の都市間提携は、日本と台湾をつないだ先人への感謝の念を忘れまいと続けてきた顕彰活動の賜物と言っても過言ではないかと思います。

ちなみに、日台の都市間提携は、2月13日に本庄市と台南市が「友好交流協定」を締結して以来、今年2件目となり、1979年10月の青森県大間町と雲林県虎尾鎮の「姉妹町」締結からは155件(本会調査)となりました。

◆湯徳章律師的正義與勇氣牽起情誼 台南與熊本縣宇城地域締盟
 【台南市市府新聞:2025年3月13日】
 https://www.tainan.gov.tw/News_Content.aspx?n=13370&s=8729233


台湾・台南市、熊本県3市町と友好交流協定締結 交流深化へ
【中央通信社:2025年3月14日】
https://japan.focustaiwan.tw/society/202503140006
写真:
友好交流協定書を手に持つ(左から)美里町の上田泰弘町長、台南市の黄偉哲市長、宇土市の元松茂樹市長、宇城市の天川竜治副市長=3月13日、台南市(台南市政府提供)

(台南中央社)南部・台南市と熊本県宇土市、宇城市、美里町は13日、友好交流協定を締結した。

今後、観光や経済、文化、教育などの分野で交流を深める方針だ。

台南市政府によると、日本から元松茂樹宇土市長や上田泰弘美里町長ら35人が台南市を訪問し、協定を締結したという。

黄偉哲(こういてつ)台南市長は、国民党政権が市民を弾圧した1947年の「2・28事件」で、身をていして市民を救った弁護士、湯徳章(日本名:坂井徳章)の父親が宇土出身であることに触れ、台日の友情が次の若い世代に受け継がれることに期待を寄せた。

また2月27日には台南市の南化中学校と宇土市の住吉中学校がオンラインで国際交流を行ったとして、今後は学術やスポーツなどの交流イベントを奨励すると語った。

(張栄祥/編集:齊藤啓介)


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