日本維新の会の馬場伸幸代表が8月1日からの訪台を終えて3日に帰国したばかりだというのに、今度は自民党副総裁の麻生太郎・元内閣総理大臣が8月7日から9日まで台湾を訪問するという。麻生氏の訪台は2011年10月以来だそうで、台湾政府の招待による。
産経新聞は「党青年局によると、1972年の日台断交後、自民の現職の副総裁が台湾を訪れるのは初めてで、国会議員としては最高位という」と報じている。
台湾では、7日に五指山軍人墓地の李登輝元総統への墓参、8日は台湾の外交部と財団法人両岸交流遠景基金会が共催する「ケタガラン・フォーラム」で安全保障をテーマに講演し、蔡英文総統や頼清徳副総統、蒋萬安・台北市長などとも会談を予定しているという。
この訪台には、自民党麻生派(志公会)の鈴木馨祐(すずき・けいすけ)衆院議員と中西健治・衆院議員も同行するという。
ちなみに、現在、自民党の政務調査会副会長をつとめる鈴木議員は、昨年7月26日に開かれた「ケタガラン・フォーラム」にパネリストとして登壇している。自民党青年局長のときの2017年3月には、訪台から帰国直後、当時の安倍晋三総理から「台湾は価値と利害を共有している大事なパートナーだ。青年局を中心に関係をしっかりと強化してほしい」と激励されたこともあった。
JPモルガン証券会社副社長から政界に転じた中西議員は現在、自民党の財務金融部会長をつとめ、菅義偉内閣では財務副大臣をつとめた財政通。麻生氏の信任も厚いと言われる。
麻生氏は昨年8月の麻生派の夏季研修会では「現状に合わせて外交や防衛を真剣に考えなければならない」と説き、今年1月の福岡・直方の講演では「われわれは台湾の安全保障に十分、関心を持たざるを得ない」と指摘している。今年4月の福岡講演でも「今までの状況と違う。戦える自衛隊に変えていかないとわれわれの存立が危なくなる」と述べるなど、台湾有事への対応と自衛隊の体制強化を表裏一体として考えていることがうかがわれる。
「ケタガラン・フォーラム」の基調講演では安全保障をテーマに講演する。蔡英文総統との会談でも台湾海峡の平和と安定に関わるテーマも出てくるものと思われる。麻生副総裁を招いた台湾側と受諾した自民党側の思惑は一致しているようで、訪台により日台間の安全保障関係が大きく進展する可能性もあり、麻生氏の発言に注目したい。
—————————————————————————————–麻生氏、7日から訪台 自民副総裁で初、中国反発も【産経新聞:2023年8月5日】https://www.sankei.com/article/20230804-BBIEIR37GFPLHJWWEE4EFBXOMY/
自民党は4日、麻生太郎副総裁が7〜9日の日程で台湾を訪問すると発表した。党青年局によると、1972年の日台断交後、自民の現職の副総裁が台湾を訪れるのは初めてで、国会議員としては最高位という。麻生氏は蔡英文総統や頼清徳副総統との会談なども予定しており、中国が激しく反発する可能性もある。
麻生氏は7日に日本を出発し、台北郊外にある五指山軍人墓地で台湾の民主化を進めた李登輝元総統の墓参を行う。翌8日には、国際シンポジウム「ケタガラン・フォーラム」に出席し、安全保障をテーマに講演。蔡氏と頼氏とそれぞれ会談し、現下の国際情勢などについて意見を交わす。訪台中、蒋万安・台北市長とも会談する予定だ。
台湾では来年1月に総統選が予定されており、頼氏は立候補予定者の1人だ。総統選には、最大野党、中国国民党の侯友宜氏、国民党に次ぐ勢力の台湾民衆党トップ、柯文哲氏も立候補を表明している。
麻生氏は6月に柯氏と、8月1日に侯氏とそれぞれ日本で会談している。総統選に関しては中立の立場だが、政府関係者は「与党系シンクタンクが開くフォーラムに出席し、頼氏と個別に会うのは、『頼氏が総統になれば日台関係は良好だ』というメッセージになるだろう」と解説する。
中国が台湾への軍事的威圧を強める中、安倍晋三元首相は「台湾有事は日本有事」と語り、日台関係を重視する姿勢を示していた。同じ首相経験者の麻生氏が8日のフォーラムで台湾を巡る情勢についてどのような認識を示すかも焦点になる。
台湾外交部(外務省)は4日、麻生氏の訪台について「台湾と日本の強固な友情の象徴だ」と歓迎した。
(大橋拓史)
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