今朝の産経新聞は、政府が6月7日の臨時閣議において、経済財政運営の指針「骨太の方針」と、その中核となる成長戦略「新しい資本主義」実行計画、規制改革実施計画を決定したことを伝え、「骨太方針では、国際情勢の緊迫化を念頭に『外交・安全保障双方の大幅な強化が求められている』と明記。その例として、中国の圧力が強まる『台湾』の記述を初めて盛り込んだ」と報じている。
本誌としてやはり気になるのは台湾のことで、朝日新聞は、木原稔・政務調査会事務局長が「骨太の方針に台湾関連の記述が盛り込まれることは異例だという。6日の全体会議では、記述を注釈から本文に『格上げ』するよう求める声も複数出たため、高市早苗政調会長に取り扱いを一任することとなった」と報じている。
この自民党政調会の全体会議について、産経新聞は「自民側がとりわけこだわったのが『台湾』の明記だ」「100点ではないが、台湾が骨太に初めて記載された意味は大きい」と語る佐藤正久・外交部長などの発言を紹介しながら、論議の模様を詳しく伝えているので下記に紹介したい。
「骨太の方針」には「『「自由で開かれたインド太平洋』の実現に向け、日米同盟を基軸としつつ、豪印、東南アジア諸国連合(ASEAN)、欧州、太平洋島嶼国家等の国・地域との協力を深化させ」とあり、ここに台湾が含まれるという。そして、注釈に「台湾海峡の平和と安定」との文言が記載された。
遅々とした歩みではあるものの、台湾は確実に日本に近づいている感が深い。
—————————————————————————————–「台湾」明記 粘った自民 政府と綱引き、ODA文言にも注文【産経新聞:2022年6月8日】
経済財政運営の指針「骨太の方針」をめぐる政府と自民党の調整では、外交をめぐって“文言闘争”が繰り広げられた。
「外交と防衛は安全保障の両輪なのに、力点が置かれているのは防衛だけだ。バランスが悪い」
5月下旬、骨太の方針案を見た自民の佐藤正久外交部会長はこう述べ、政府担当者に突き返した。自民側がとりわけこだわったのが「台湾」の明記だ。日本が安全保障政策の抜本的見直しを迫られている主な要因は、台湾有事の現実味が高まっていることにほかならない。
「前例がない」と台湾明記を渋る政府側が示したのが、米国や豪州、インドなど友好国の並びに「国・地域」の文言を挿入する妥協案だ。「地域」から台湾の存在を読み取れるとする論法だったが、自民側は「ごまかしに過ぎない」と一蹴。政府側は最終的に、本文とは別の注釈に「台湾海峡の平和と安定」との文言を記載することを決めた。
一方、6月6日の自民の政調全体会議では、7人の議員から台湾を本文に記載するよう求める声があがったが、政府は受け入れなかった。佐藤氏は「100点ではないが、台湾が骨太に初めて記載された意味は大きい」と語る。
より外交予算に直結する綱引きもあった。政府開発援助(ODA)をめぐり、当初案は「質・内容共に充実させる」との表現にとどまっていた。政府のODA予算はピーク時には1兆円超を計上したが、近年は5000億円台で推移し、今年度は7年ぶりに対前年度比で減少に転じた。日本の安全保障にとって有利な環境をつくるためにも増額は喫緊の課題となっている。
自民側は「これでは量(予算)が増えるとは読み込めない」と注文し、「拡充」に改められた。外務省幹部は「党から強い追い風が吹いた」と歓迎している。
(石鍋圭)
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