麻生氏 台湾での基調講演要旨【産経新聞:2023年8月9日】https://www.sankei.com/article/20230808-C7LTTWKYNVNQLKHI5A33HXSLOA/
自民党の麻生太郎副総裁は8日、訪問先の台湾で開かれた「ケタガラン・フォーラム」で基調講演を行った。要旨は以下の通り。
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台湾訪問は2011年以来12年ぶりだ。11年は東日本大震災の直後だった。大きな被害を受けた日本に台湾は最も早く温かい手を差しのべてくれた。
12年前と今では日本と台湾を取り巻く環境は大きく変化した。私たちは平時から非常時に少しずつではあるが確実に変わっていっている。基本的な構造の中で潜在的に存在していた懸念やリスクがより顕在化した。
台湾は日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーで大切な友人だ。
昨年8月に当時のペロシ米下院議長が台湾を訪問した直後、中国は台湾周辺で実弾射撃を含む軍事演習を行い、わが国の排他的経済水域(EEZ)を含む日本近海に複数の弾道ミサイルを撃ち込んだ。先進7カ国(G7)は緊急の外相声明を発表し、中国に力による一方的な現状変更をしないよう求め、日本は軍事演習の即時中止を求めた。
「台湾海峡の平和と安定」はわが国はもとより、国際社会の安定にとって重要だ。日本は中国を含む各国にこの点を指摘し続けている。
われわれにとって今、最も大事なことは台湾海峡を含むこの地域で戦争を起こさせないことだ。抑止力は能力がいる。そして力を使うという意思を持ち、そしてそれを相手に教えておく。その3つがそろって抑止力だ。
日本、台湾、米国をはじめとした有志国に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている。戦う覚悟だ。お金をかけて防衛力を持っているだけでは駄目。それをいざとなったら使う。台湾防衛のために。台湾海峡の安定のためにそれを使うという意思を相手に伝え、それが抑止力になる。
基本的価値を共有し、平和で安定した国際秩序を擁護する国々が、特に台湾と密接な隣人関係にある日本が率先して中国を含めた国際社会に向けた発信をし続けることは極めて重要だ。日本の毅然(きぜん)とした態度は岸田文雄政権のもと、それ以後も変わらない。
経済安全保障の時代に改めて、自由で公正なルールに基づく経済秩序の重要性を訴えたい。台湾は(環太平洋戦略的経済連携協定=TPPの)加入申請に向けたさまざまな取り組みを公にしており、わが国として申請を歓迎している。
現代社会に欠かすことのできない半導体のサプライチェーン(供給網)が途切れるようなことがあってはならない。世界の半導体の7割近くを製造する台湾と、半導体の製造装置や材料で世界トップクラスの技術を持つ日本が手を携えることは経済安保の観点からも極めて重要だ。(台北 大橋拓史)
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