コロナ禍ではっきりしたこと  矢板 明夫(産経新聞台北支局長)

【産経新聞:2021年7月21日】https://www.sankei.com/article/20210721-QBL2WFTKKNNXLCBGUQVLCQHBKM/

 台湾のテレビ局で記者をしている友人からリトアニア産のチョコレートをもらった。ネットで同じものを大量に購入し、色々な所で配っているらしい。理由を聞くと「ワクチン支援の恩返しだ」と言った。

 バルト三国の一つで、人口約280万人のリトアニアは6月下旬、英アストラゼネカ製新型コロナウイルスワクチン2万回分を台湾に無償提供すると発表した。決して裕福とはいえないリトアニア自身もコロナ禍による深刻な被害者で、国内の感染はいまだ収まっていない。

 しかし、台湾が中国の妨害によりワクチンの調達に難航していることを知ると、協力を決断した。東欧のスロバキアも7月、台湾にワクチン1万回分を送ると発表した。

 かつて旧ソ連の恐怖政治に苦しめられた経験を持つリトアニアとスロバキアは、ワクチン支援を通じて、台湾に「独裁政権に負けるな」というエールを送るつもりかもしれない。

 台湾へのワクチン支援に関し、すでに米国からの約250万回分と、日本からの約330万回分が到着しており、台湾は「ワクチン危機」を何とか乗り切ることができそうだ。

 「コロナ禍で、誰が友人なのか、誰が敵なのか、はっきりしたことがありがたい」と友人はしみじみと話していた。

(矢板明夫)

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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