昨年12月16日、青森県とむつ市は高雄市と農水産品、観光、教育などの分野で協力を進めることを目的に「国際交流促進覚書」を締結しました。
驚いたことに、むつ市の山本知也市長は3月21日に辞令を交付し、4月から高雄市に職員1名を派遣したそうです。
むつ市が職員を海外に長期間派遣するのは初めてだそうです。
むつ市によれば「現地との強固なつながりを築くことで経済・文化等の交流機会を創出し、このイニシアティブを通じて、むつ市の魅力を世界市場に広め、市の持続可能な発展に貢献」するために職員を派遣するとのことですが、都道府県ならまだしも基礎自治体が職員を海外に派遣するのは容易なことではありません。
群馬県みなかみ町は2013年6月から台南市に職員の阿部真行氏を派遣しました。
阿部氏は唯一無二の日本人公務員として台南市政府国際課に席を置き、日本交流の窓口を担当してみなかみ町との交流や教育旅行誘致などに取り組みました。
2015年11月からは群馬県内初の「公務員交換」により、台南市も職員を派遣し通訳やパンフレットの翻訳などを行っていましたが、みなかみ町は2022年3月31日に職員派遣を終了し、阿部氏は4月1日付けでみなかみ町役場に戻っています。
むつ市はこの4月から職員の小林晋氏(42歳)を高雄市に派遣し、高雄市では国際交流を担う部署に1年間配属され、高雄市とむつ市の交流の架け橋として観光や教育、農・水産分野で協力を推進するそうです。
ちなみに、現在、台湾に現地事務所を開設して職員を派遣しているのは、静岡県と茨城県笠間市です。
静岡県は2013年4月22日に台北市内に駐在員事務所「ふじのくに静岡県台湾事務所」を開設し、駐在員2名を派遣(現地採用職員2名)。
笠間市は2018年8月23日に台北市内に「台湾交流事務所」を開設し、職員1人と現地職員2人の態勢です。
日本で初めて台湾に現地事務所を開設したのは沖縄県与那国町(よなぐにちょう)で、2007年5月29日のことでした。
花蓮市内に「与那国駐花蓮市連絡事務所」を開設しましたが、いつの間にか閉鎖していました。
最近では、福岡県豊前市が昨年5月に台北市内に連絡拠点「台北連絡処」を開設しましたが、職員は派遣していません。
やはり、日本の自治体が駐在員事務所を開設するのはもちろん、職員を派遣することにもかなり厳しい現実があることは容易に推察できます。
そのような厳しい面があるにもかかわらず、むつ市は職員派遣に踏み切りました。
派遣された小林氏は、唯一無二の日本人公務員として高雄市政府の行政及び国際処に席を置いての活動がはじまっています。
みなかみ町のケースを思うと1年間は短いような気がしますが、次につながるよう、小林氏に「ガンバレ! 加油!」と声援を送りたくなります。
ご奮闘を切に祈ります。
◆むつ市 職員2人を台湾やアメリカなどに長期派遣へ 辞令交付 【NHKニュース:2025年3月21日】 https://www3.nhk.or.jp/lnews/aomori/20250321/6080025162.html
青森・むつ市が職員を高雄市政府に派遣 今月から任期1年間【中央通信社:2025年4月7日】https://japan.focustaiwan.tw/politics/202504070003
(高雄中央社)南部・高雄市政府で、青森県むつ市から派遣された職員が今月から勤務している。
任期は1年間で、両市の交流を推進する。
高雄市政府行政・国際処の張硯卿処長は都市外交がより実質的な段階に入っていることの表れだとしている。
高雄市が7日に発表した報道資料によれば、両市の交流は双方の中学校が30年以上前に姉妹校となったのがきっかけ。
両市は昨年12月、青森県を含んだ3者で国際交流促進覚書を締結した。
張氏は、協力深化のためにむつ市が積極的に職員の派遣を提案してくれたと説明。
派遣職員の尽力で、若者や学校、観光などの分野における高雄市、青森県、むつ市の交流が今後より深まることに期待しているとした。
(蔡孟[女予]/編集:田中宏樹)
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