台湾代表が広島の平和記念式典に初めて参加  9日は長崎の平和祈念式典にも参加

厚生労働省は、広島と長崎で被爆した台湾人被爆者が18人いることを明らかにしています。

また、在外被爆者への被爆者健康手帳を交付したのは台湾人女性が初めてのケースで、1963年10月のことだったそうです。

1996年に広島市が発行した『市原爆被爆者援護行政史』にも記載されているそうです(「中国新聞」2011年10月13日)。

米国が原爆を落とした当時、台湾は日本が統治していたのですから、自由に行き来できた広島や長崎で被爆された方がいてもなんら不思議なことではありません。

それは、戦死した台湾の軍人や軍属が靖國神社に祀られたことと同じです。

おかしいのは、同じ被爆者がいる台湾にもかかわらず、広島の平和記念式典も長崎の平和祈念式典も、これまで外交関係の有無を招待状や案内状を送る基準としてきたことではないでしょうか。

広島も長崎も、外交関係の有無ではなく、被爆者の有無を基準とすべきだったと今さらながらに悔やまれます。

5月23日、広島市は8月6日の平和記念式典に台湾にも開催を伝える通知を同日付で送付したと明らかにし、長崎市も7月5日、8月9日の平和祈念式典に台湾も台湾できることを伝えたと明らかにしました。

8月6日、駐日台湾大使に相当する李逸洋台北駐日経済文化代表処代表は、台北駐大阪経済文化弁事処の洪英傑処長などを伴い、初めて台湾代表として広島の平和記念式典に臨みました。

李逸洋代表は、8月9日の長崎市における平和祈念式典に台北駐大阪経済文化弁事処福岡分処の陳銘俊処長などを伴って参列するそうです。

李代表は広島での式典後、「広島の悲劇は決して他人事ではなく、台湾の人々も深い共感を抱いている」と述べていたそうです。

戦後も80年を経て、被爆者を抱える台湾を無視してきた広島市も長崎市も、ようやく迷妄から覚めて正気を取り戻しました。

国交のあるなしに関わりなく、これが慰霊の本来の姿です。

広島市と長崎市への感謝の念を台湾の人々と分かち合いたいと思います。


台湾、広島平和記念式典に初参加 李逸洋・駐日代表「極めて意義深い」【台湾国際放送:2025年8月6日】https://www.rti.org.tw/jp/news?uid=3&pid=157400

台湾の在日大使館に相当する台北駐日経済文化代表処の李逸洋・駐日代表(大使)が6日、日本の広島市で開催された「平和記念式典」に台湾を代表して初めて出席しました。

李・駐日代表は式典終了後の記者会見で、「1947年に広島市がこの式典を始めて以来、台湾が正式に招待されて参加したのは初めてであり、極めて意義深い」と述べました。

李・駐日代表は、「世界各国の代表と共にこの式典に参列し、広島が発信する歴史の教訓を共有し、平和の意義を共に考える貴重な機会となった」と語りました。

また、1945年8月6日の原爆投下により、日本で学び、働いていた多くの台湾人も被害を受けたことに触れ、「広島の悲劇は決して他人事ではなく、台湾の人々も深い共感を抱いている」と述べました。

さらに、「核兵器の廃絶」や「世界恒久平和の実現」といった広島市の理念に対し、台湾として深く支持・賛同していると表明しました。

李・駐日代表は、今回の式典参加を可能にした広島市および関係機関に感謝の意を示し、「これは台湾と国際社会が緊密に連携していることの象徴でもある」と語りました。

また、1982年に広島市が核兵器廃絶を推進するために創設した「平和首長会議」についても言及し、2025年8月時点で、台湾の北部・台北市、中部・台中市、南部・台南市と高雄市など、台湾の都市を含む世界8509都市が加盟していると紹介。

今後さらに多くの台湾の都市の参加を期待していると述べました。

加えて、広島市議会および広島県議会における「日台友好議員連盟」の存在にも触れ、同連盟が長年にわたり台湾と日本の友好関係の促進や台湾の国際参加を支持してきたことに謝意を表しました。

具体的には、2022年12月には広島市議会が台湾のCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)参加を支持する意見書を、2020年12月には広島県議会が台湾の世界保健機関(WHO)参加を支持する意見書を可決したことが挙げられ、李・駐日代表は謝意を表するとともに、今後も経済、貿易、科学技術、文化などの分野でさらに交流を深めていきたいと期待を寄せました。

李・駐日代表はまた、国際情勢がますます厳しさを増していると指摘し、ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢、さらにタイとカンボジアの緊張にも言及。

「台湾は平和を重視する国家として、真の平和を守るには、いかなる侵略行為にも無関心ではいられない。

自由と民主主義を尊ぶ国々が団結することが、侵略を抑止する鍵である」と述べました。

台湾海峡の情勢にも言及し、「台湾海峡の平和と安定」は既に国際的な共通認識となっていると強調。

今年2月の日米首脳会談、3月のG7外相会合、4月の日米韓外相会合、6月の日フィンランド首脳会談、7月の日EU首脳会談、さらに昨年のG7首脳会議および外相会議の共同声明に至るまで、すべてが台湾海峡の安定と繁栄の重要性を強調していると述べました。

李・駐日代表は、「台湾は今後も日本、米国などの民主国家と緊密に連携し、権威主義の拡張に対抗しつつ、インド太平洋地域の平和と安定を守っていく」と力強く述べました。

また、前日に訪れた広島平和記念資料館についても触れ、「爆心地では一瞬にしてすべてが消え去った。

現在の核兵器は当時の20〜30倍の破壊力を持ち、その使用は人類に壊滅的な結果をもたらす」と述べ、歴史の教訓を決して忘れてはならないと訴えました。

さらに、中国の台湾に対する軍事的脅威にも言及。

「我々は民主的な台湾と地域の平和を守る決意を持っているが、信念だけでは不十分。

社会全体の防衛意識の強化、自衛能力の向上、そして理念の近い民主国家との連携が不可欠だ」と述べました。

李・駐日代表は、日本政府の「2025年防衛白書」についても言及。

「中国が台湾海峡周辺での軍事行動を常態化させ、遼寧号・山東号などの空母が日本第一列島線から第二列島線へと進出している」とし、白書が初めて中国を「戦略的脅威」と明記したことを紹介。

これが極めて明確なメッセージであると強調しました。

式典の場で李・駐日代表は多くの国の外交使節と交流。

特に、アメリカのジョージ・グラス駐日大使(George Glass)とは数席を隔てた位置に座り、握手と短い対話を交わしました。

李・駐日代表は「グラス大使とは今回が初対面。

アメリカが台湾海峡の平和に強く関心を持ち、多くの声明の中で台湾海峡の平和と安定の維持の重要性を強調したほか、軍艦を通過させるなどの行動で支持を表明していることに感謝を伝えた」と述べ、グラス大使からは「当然のことであり、今後も連携を深めていこう」との応答があったということです。

(編集:王淑卿)


※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。