援助で繋がる日本と台湾」と題して講演しました。講演の翌日、本誌でも「台湾にとって日本は特
別な存在だということを理解した」などと述べたことを伝える産経新聞の記事をご紹介しました。
講演は「まさかの友は真の友」「日台新時代」「生命共同体」「共同誓言」の4つから成ってい
ます。「まさかの友は真の友」では台湾南部地震、東日本大震災、熊本地震に言及し、台湾南部地
震の折に義援金を直接台南に届けたとして、石川県日華親善協会、日本青年交流会、日本地方議員
連盟、東京都議会、読売巨人軍などとともに「日本李登輝友の会」の名前も挙げていただいていま
す。
本会は昨年4月7日、折しも頼市長も尊敬する鄭南榕烈士ご命日の日、台南市政府に頼市長を訪
ね、皆さまからの義捐金534万4,200円を直接手渡してまいりました。講演で名前を挙げていただく
とは光栄かつ有難いことで、義捐金を寄せていただいた方々も喜ばれるものと拝察しております。
頼市長はまたこの講演で、李登輝元総統と同じく、日本と台湾は「生命共同体」となるべきと述
べ、「台南市長として、私の政治生命において『日台間に真心のこもった繋がりを育てること』、
そして『日台関係を守ること』を私の重要な任務の一つとし、最後まで貫く」と述べるなど、決意
表明とも言うべき格調高い内容です。
かなり長い講演原稿ですので、2回に分けてご紹介します。
なお、日本記者クラブのホームページでは、司会を務めた毎日新聞社専門編集委員の坂東賢治・
日本記者クラブ企画委員による「会見リポート」を掲載し、YouTubeで講演の模様も掲載していま
すので、下記にご紹介します。
◆会見リポート:台南市長「日台は新時代の交流を」
https://www.jnpc.or.jp/archive/conferences/34728/report
◆頼清徳 台南市長 2017.1.16
https://youtu.be/L0aq93k0PVs
新時代の日台交流─震災援助で繋がる日本と台湾(下) 頼 清徳(台南市長)
【日本記者クラブ:2017年1月16日】
◆生命共同体
さて、現時点における日台関係は、歴史や政治的要素により、多くの限界があります。両者間に
は、正式な外交関係はありませんが、「古く深いつながり」があり、また「価値を同じくし」、
「地理的にも互いに助け合う」関係でもあります。ですので、今後は、さまざまな形で、両者の考
えが一致する範囲で日台関係を発展させ、両者は生命共同体となるべきではないかと考えます。
そこで、三つ目のテーマを「生命共同体」とします。
日本と台湾は「生命共同体」となるべきだと考える第一の理由は、双方には「古く深いつなが
り」があるからです。例えば、日台間の野球の歴史からもわかるように、映画「KANO」の嘉義農林
が甲子園に出場したのも「負けられない」という精神があったからです。
私が小さい頃、大人たちは、大きな困難に見舞われた時には、常に「死んでも退くな」という日
本精神を持てと言っていたので、私はこの頃から日本に非常に興味をもっていました。
また、最近、大変話題となったドキュメンタリー映画「湾生回家」からも、日本と台湾の緊密な
繋がりを見ることができます。「湾生」とは、1895年から1946年までの間に台湾で生まれた日本人
のことを指すのですが、この「湾生」もまた、日台の古く深い繋がりの証人だと言えるでしょう。
昨年の9月、台南を訪問された、日本人最後の台南市長羽鳥又男氏の三男の羽鳥直之氏から、父
の又男氏が台南の文化財を保護するために、赤嵌楼の修復に奔走した話をお聞きし大変感動しまし
た。「海の彼方」は、台湾から八重山への移民が、80年前にどのようにして海を渡り、沖縄の八重
山に根をおろしたかの歴史を描いたドキュメンタリーです。
また、先程ご紹介した作家の一青妙さんは、先日、台南に関する本を出版なさっています。台南
市は、日本と台湾の両方にルーツを持つ一青妙さんに台南の親善大使をお願いし、日本と台南の交
流の架け橋になっていただきたいと希望しています。
最後に、野崎孝男さんですが、記者、練馬区区議会議員を務められ、現在は、実業家として成功
を収めていらっしゃいます。台南市の都市外交顧問をお願いしています。
さて、日本と台湾の間には、毎日のように、ルーツ探し、結婚、移住等の新たな物語が紡がれて
いますが、最近、また一つおめでたい話がありました。台南出身の卓球選手、江宏傑さんと日本の
卓球選手、福原愛さんの結婚です。福原愛さんは、長年、中国で卓球をなさっていたそうで、中国
の大勢のファンは中国人と結婚して中国に来てほしいと思っていたとのことですが、台湾人と結婚
して、台湾にお嫁さんに来てくれました。台南に新居があるので、台南にいらっしゃれば、福原愛
さんに会えるかもしれません。
日台を「生命共同体」にと考えた二つ目の理由は、台湾も日本も同じ価値観を持つと考えたから
です。日本も台湾も「民主主義が深化し」、「自由を守り」、「人権を守ります」。
三つめの理由は、日本と台湾は、地理的に見て「苦楽をともにし、互いに助け合う」関係にある
からです。日本と台湾は、ともに地震の脅威があるほか、毎年、たいへん多くの台風に見舞われま
す。ですので、防災に関する経験や技術、人的・物的資源を共有することができます。
このほか、アジア太平洋地域の平和を守るために日台は協力し合わなければなりません。国際的
に見て、台湾を守れなかったら日本に危険が及びますし、日本が危なかったら台湾にも危険が及び
ます。今、日本も台湾もそれぞれに十分な能力をもっています。両者が協力することで、より積極
的な役割を担っていくべきではないでしょうか。日本と台湾は「生命共同体」となるべきではない
でしょうか。
◆共同誓言
最後に、日台関係を前に進めるために、共同の誓言を持つべきではないかと思っています。
台湾は蔡英文総統の指揮の下、日本との協力関係を強化したい考えです。蔡総統が前行政院院
長、謝長廷氏を駐日代表に任命したことは、台湾が日本を重視していることをより鮮明に表してい
ます。謝代表も日台関係を安定させ、これが台湾の安定と発展に繋がることを強く望んでいます。
台湾の政治家として、震災の援助を経験したことで友好的な繋がりができた台南市長として、私
の政治生命において「日台間に真心のこもった繋がりを育てること」、そして「日台関係を守るこ
と」を私の重要な任務の一つとし、最後まで貫くことを、ここに皆様にお約束いたします。
私は台南市長として、今ここに、日本の地方自治体との交流の最前線に立っております。日本の
各地と交流し互いに助け合うことで、日本と関連ある様々な事を、今後も引き続き深めていきたい
と願っています。これからも、日本と台湾の関係が、新たな段階へと継続・発展していくよう、全
力で邁進してまいります。
皆様、ご清聴、ありがとうございました。