宮城県議会(石川光次郎議長)は6月定例会最終日の7月6日に開かれた本会議において「台湾の世界保健機関(WHO)への参加を求める意見書」を57対0の全会一致で可決しました。
また、山口県議会(柳居俊学議長)も6月定例会最終日の7月10日に開かれた本会議において「台湾の世界保健機関(WHO)への参加を求める意見書」を46対0の全会一位で可決しました。
さらに、名古屋市会(中里高之議長)も、6月定例会最終日の7月6日に開かれた本会議において「台湾の世界保健機関年次総会へのオブザーバー参加等の支持に関する意見書」を可決しました。
下記に両県で可決された「意見書」全文をご紹介し、名古屋市会はPDF版にてご紹介します。
本誌でも、これまで兵庫県議会(3月25日)、神戸市議会(3月26日)、山形市議会(6月26日)が同様の意見書を可決していることをお伝えしました。全国各地の議会でこのような意見書が可決されることは台湾への関心が深まっているなによりの証であり、慶賀すべきことかと思います。
宮城県の仙台市は台南市と2006年1月に「交流促進都市協定」を結んでおり、意見書でも「東日本大震災が発生した際には、台湾から寄付金や義援金、衣類・食料品などの多くの支援を受け、また、宮城県からは、平成28年2月6日に台湾南部で地震が発生した際に台南市への寄付を行ったところである」と明記しています。
一方の山口県も都市間提携はないものの、意見書に「超党派により、『日台友好促進山口県議会議員連盟』を設立し、県が進める観光や海外展開等の取組の支援を行ってきた」と記すように、「日台友好促進山口県議会議員連盟」が桜を台湾に寄贈するなどして交流を深めてきています。今年の1月には山口県選出で自民党内の「日台議員連盟」会長をつとめる岸信夫・衆議院議員を団長として台南市を訪問しています。
台湾の中央通信社は「両県と交流を持つ台南市の黄偉哲(こういてつ)市長は、両県議会が実際の行動で台湾を支持してくれたとして、『大変感謝する』と謝意を表明」していると報じています。
名古屋市もまた昨年10月、台中市と「観光パートナー都市協定」を締結しています。また、1931年の全国中等学校優勝野球大会の決勝戦で「KANO」(嘉農)こと嘉義農林学校(現在の嘉義大学)と中京商業(現在の中京大学付属高校)が戦ったことなどを描いた映画「KANO」を縁とし、名古屋市は嘉義市や台中市などと交流しています。
宮城県、山口県、名古屋市の意見書可決には、いずれもが都市間提携や日台友好議連などを通じて交流してきた歴史があります。
◆名古屋市会:台湾の世界保健機関年次総会へのオブザーバー参加等の支持に関する意見書【7月6日】 https://www.city.nagoya.jp/shikai/cmsfiles/contents/0000130/130031/08.pdf
—————————————————————————————–宮城県議会:台湾の世界保健機関(WHO)への参加を求める意見書【7月6日可決】https://www.pref.miyagi.jp/site/kengikai/ikensho-r0206.html#01
台湾と宮城県は、深い絆で結ばれている。東日本大震災が発生した際には、台湾から寄付金や義援金、衣類・食料品などの多くの支援を受け、また、宮城県からは、平成28年2月6日に台湾南部で地震が発生した際に台南市への寄付を行ったところである。さらに、昨年台湾から宮城県を訪れて宿泊した方々は21万7540人で、本県の外国人宿泊者数の中で第1位となるなど、様々な交流が行われている。
世界保健機関(以下「WHO」という。)は、日本時間の1月31日未明、中華人民共和国湖北省武漢市における新型コロナウイルス感染症関連肺炎の発生状況が、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に該当すると宣言した。これにより、加盟国は、感染者が発生した場合には24時間以内に通告する義務が課せられるとともに、空港や港での検疫や渡航制限といった水際対策の強化が求められている。
こうした中、台湾は、昨年末に武漢市で原因不明の肺炎が発生している可能性があることをWHOにいち早く提供すると同時に、入国時の検疫を強化するなど、迅速に感染拡大防止策を講じ、新型コロナウイルス感染症の封じ込めに一定の成果を収めている。国際社会が一致して新型コロナウイルスに対応する上で、保健衛生分野における豊富な知見と経験を持つ台湾のWHO参加が重要であり、本年2月のWHO執行理事会において米国の代表は、新型コロナウイルスによる肺炎の治療法やワクチン開発について話し合う会合への台湾の参加支持を各国に呼びかけ、日本、カナダ、ドイツ(EU加盟国代表)等の国際世論も支持を表明した。しかし、本年5月に開催されたWHO年次総会において台湾のオブザーバー参加が認められなかったことは、誠に遺憾である。
WHOの憲章には、「人種、宗教、政治信条や経済的、社会的条件によって差別されることなく、最高水準の健康に恵まれることは、あらゆる人々にとっての基本的人権のひとつ」と掲げており、台湾を排除することは、この基本理念に反するものである。
よって、国においては、感染症対策等に地理的な空白を生じさせないためにも、保健衛生分野における豊富な知見と経験を持つ台湾のWHOへの参加に向け、関係各国との連携を図りながら、必要な支援とWHOに対する働きかけを強化するよう強く要望する。
右、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和2年7月6日
宮城県議会議長 石 川 光 次 郎
衆議院議長参議院議長内閣総理大臣 あて外務大臣厚生労働大臣内閣官房長官
◇ ◇ ◇
山口県議会:台湾の世界保健機関(WHO)への参加を求める意見書【7月10日可決】https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a30000/r2-teirei-rinzi/6teireikai07-2.html
台湾の世界保健機関(WHO)への参加を求める意見書
令和2年6月定例会 (令和2年7月10日)
台湾は日本の極めて重要なパートナーであり、経済活動や観光など様々な分野でつながりがある。また、甚大な災害が発生した際には、相互支援の強い絆を有する関係である。
本県議会においては、平成25年10月に、台湾との友好を促進し、親善を図ることを目的として、超党派により、「日台友好促進山口県議会議員連盟」を設立し、県が進める観光や海外展開等の取組の支援を行ってきた。
そして、知事のトップセールスの機会や、県議会独自に台湾を訪問し、本県が持つ多彩な魅力について、改めてPRを行うとともに、親交をさらに深めるための取組を進めている。こうした中で生じた新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大に際しては、いち早くウイルスを封じ込めた台湾から、本県に対しても、マスクや医療用資材が届けられるなど、温かい支援が寄せられているところである。
国際化の進展に伴い、これまで世界各地の間で人々が往来し、経済や観光、文化、スポーツ、ボランティアなど様々な交流や活動が行われてきた。一方で、新型コロナウイルスの感染拡大は、国境を越えた感染症の脅威を世界に知らしめており、これからの新たな交流や活動等の在り方が模索されているが、国境を越えた人の往来は、今後もとどまることはない。
そして、感染症の世界的流行に対峙していくためには、公衆衛生危機対応を網羅的に充実・強化することが強く求められ、防疫に係る地理的空白が生じることがあってはならない。しかしながら、このたびの感染症の世界的大流行の中で、危機対応の先頭に立つWHOに、感染症対応の知見や経験を有する台湾が、今年5月に開催された年次総会へのオブザーバー参加すら認められなかったことは極めて問題である。
WHO憲章では、「到達しうる最高基準の健康を享有することは、人種、宗教、政治的信念又は経済的若しくは社会的条件の差別なしに万人の有する基本的権利のひとつ」とうたっており、保健衛生分野において、高い知見やノウハウを持つ台湾のWHO参加が妨げられてはならない。
よって、国におかれては、台湾のWHOへの参加を支持し、下記事項に取り組まれるよう、強く要望する。
記
台湾のWHOへの参加に向け、台湾参加を支持している関係各国と連携し、加盟国及びWHO事務局への働きかけを強化すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
(提出先) 衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、外務大臣、厚生労働大臣、内閣官房長官
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