北海道議会、札幌・釧路市両議会が台湾のWHO参加を求める意見書を可決

 日本の地方議会が次々と台湾の世界保険機関(WHO)の年次総会へのオブザーバー参加を求める意見書を可決しています。

 このたび、札幌市議会が12月10日、自由民主党、民主市民連合及び公明党所属議員全員の提出による「台湾の世界保健機関(WHO)年次総会へのオブザーバー参加を求める意見書」を可決し、翌11日には北海道議会が笠井龍司議員ほか4議員の提案による「台湾の世界保健機関(WHO)へのオブザーバー参加を求める意見書」を可決しました。

 北海道では、9月11日に釧路市議会が「台湾の世界保健機関へのオブザーバー参加を引き続き支持し、必要な支援を強く求める意見書」を可決していました。下記に札幌市議会と北海道議会のそれぞれの意見書をご紹介します。

 日本政府は米国とともに平成14(2002)年5月から台湾のWHOへのオブザーバー参加支持を表明しています。今年の武漢肺炎こと新型コロナウイルス感染症を押さえ込んで「台湾モデル」と言われるまでの優等生ぶりを世界に示した台湾が、世界保健機関(WHO)加盟はもとより年次総会(WHA)へのオブザーバー参加さえできないというのは、どう考えても不可思議なことです。

 医療に地理的な空白地帯があってはならないとする日本政府は、地方議会の意見を全面的に汲み上げ、米国をはじめヨーロッパ各国などとともに、世界保健機関(WHO)にWHO憲章の主旨をまっとうさせるためにも、WHO加盟や年次総会(WHA)へのオブザーバー参加を働きかけ、中国の圧力を取り除くよう積極的に働きかけて欲しいものです。

 ちなみに、これまで同様の意見書を可決した議会は下記のとおりです(本会調査)。

・神戸市会(2020年3月26日)・大分県議会(2020年7月1日)・宮城県議会(2020年7月6日)・名古屋市会(2020年7月6日)・山口県議会(2020年7月10日)・釧路市議会(2020年9月11日)・山梨県議会(2020年10月6日)・札幌市議会(2020年12月10日)・北海道議会(2020年12月11日)

—————————————————————————————–釧路市議会 意見書案第8号台湾の世界保健機関へのオブザーバー参加を引き続き支持し、必要な支援を強く求める意見書

 世界保健機関(WHO)は、中国で発生した新型コロナウイルス感染症が中国以外の地域にも広がり始め、国際的な協力態勢が必要であると判断して、1月31 日に、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を宣言した。

 こうした状況の中、台湾では早期の適切な対策が功を奏し、5月末時点で累計感染者数は 442 人、死者数は7人と、世界的にも低い数値を示している。

 この台湾の対応は世界から高く評価され、台湾のWHOへの参加を支持する声が国際社会から相次いで上がっている。

 5月18日と19日に開催されたWHOの年次総会には、台湾のオブザーバー参加が認められなかったが、日本を含む多数の国が台湾のWHOへの参加について言及した。

 国際的な保健課題への対応に当たっては、地理的空白を生じさせるべきではなく、特に全世界に甚大な影響を与える感染症に対しては、台湾のように公衆衛生上の成果を上げている地域を含め、自由で、透明かつ迅速な形で各国及び地域が持っている情報や知見を広く共有することが重要である。

 よって、国においては、各国及び我が国における新型コロナウイルス感染症のいち早い収束を図るためにも、台湾の世界保健機関へのオブザーバー参加を引き続き支持し、実現に向けて必要な支援を行うよう強く要望する。

 以上、地方自治法第 99 条の規定により意見書を提出する。

   令和2年9月11日

                                       釧 路 市 議 会  衆 議 院 議 長 参 議 院 議 長 内閣総理大臣 総 務 大 臣 外 務 大 臣

—————————————————————————————–札幌市議会 意見書案第2号台湾の世界保健機関(WHO)年次総会へのオブザーバー参加を求める意見書

 今般の新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、人類全体に対する脅威であり、国際化の進展に伴う人々の往来が加速する現代において、そのまん延を防止していくためには、世界的な公衆衛生対策の強化と国際協調が不可欠となっており、空港や港での検疫や渡航制限などの水際対策の強化が求められている。

 こうした中、台湾は、これまでの重症急性呼吸器症候群(SARS)の経験を生かし、優れた防疫システムを構築しており、今回の新型コロナウイルス感染症においても迅速な感染拡大防止策を講じ、封じ込めに一定の成果を収めている。

 しかしながら、世界保健機関(WHO)への正式な参加が認められておらず、平成29年以降オブザーバー参加も認められていない状況にあり、台湾での感染例や予防措置の詳細な情報が国際的に共有されていない実態にある。

 札幌市においては、台湾からの市内宿泊者数について、感染拡大前の平成30年度に、北海道胆振東部地震の影響から減少したとはいえ50万人を超え、観光・経済交流の重要なパートナーとなっており、札幌市議会においても、我が国と台湾との友好親善を図ることを目的に日台友好議員連盟を組織し、行政、議会、経済、文化などの諸分野における交流を行い、良好な関係の構築に努めており、さらなる都市間交流の進展を期待しているところである。

 こうした状況の中、新型コロナウイルスの感染拡大防止には、全世界が一致団結して協力体制を築くことが重要であり、台湾における感染防止に係る各種情報が早期終息の一助になり得るものと考える。

 よって、国会及び政府においては、感染症対策に地理的な空白を生じさせないためにも、保健衛生分野の豊富な知見・経験を持つ台湾について、世界保健機関(WHO)の年次総会へのオブザーバー参加を引き続き支持するよう強く要望する。

 以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。

   令和2年(2020年)12月10日

                                         札幌市議会

(提出先)衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、外務大臣、厚生労働大臣(提出者)自由民主党、民主市民連合及び公明党所属議員全員

—————————————————————————————–北海道議会 意見案第3号台湾の世界保健機関(WHO)へのオブザーバー参加を求める意見書

 台湾は、我が国にとって重要なパートナーであり、本道とも経済や観光など、様々な分野における交流が進められている。

 観光では、令和元年度は約50万人の方が台湾から北海道を訪れており、また、貿易においては令和元年の北海道から台湾への輸出額が約95億円に上り、国・地域別では10位となっている。また、令和元年9月には、道が道産品の販路拡大や観光客の誘致、アイヌ文化の発信を行う情報発信拠点「北海道チャレンジサポートカフェ」を台中市に開設するなど、観光・貿易での交流のほか、スポーツ、青少年交流など、様々な交流が行われている。

 また、東日本大震災が発生した際には、台湾の観光事業者による訪問団がいち早く本道を訪れ、台湾からの観光客回復に多大な支援をいただくなど、台湾と本道は相互支援の強い絆を有している。

 現在、人々の往来が増加する中、感染症の拡大を防止するためには、世界的な公衆衛生危機対応の強化が不可欠であり、世界保健機関(以下、「WHO」という。)が果たすべき役割は大きい。また、感染症の世界的流行に対峙していくためには、公衆衛生危機対応を網羅的に充実・強化することが強く求められ、防疫に係る地理的空白が生じることがあってはならない。

 しかしながら、台湾は平成21年以降8年連続でWHO年次総会にオブザーバーで参加し、保健衛生分野において国際貢献をしてきたにもかかわらず、平成29年より参加がかなわない状況となっている。日本・米国等国際的な働きかけによって、今回の新型コロナウイルス感染症流行の中、専門家会合への参加は認められたが、オブザーバーでの参加は認められず、国際的な公衆衛生・防疫体制を構築する上で、地理的空白が生じている。

 また、WHO憲章は、「人権、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく、最高水準の健康に恵まれることは、あらゆる人々にとっての基本的人権のひとつ」と掲げており、保健衛生分野での豊富な知見と経験を有する台湾のWHO参加が妨げられてはならない。

 よって、国においては、台湾のWHOへのオブザーバー参加に向け、台湾の参加を支持している関係各国と連携し、WHOに対する働きかけを強化するよう強く要望する。

 以上、地方自治法第99条の規定により提出する。

   令和 年 月 日

 衆 議 院 議 長 参 議 院 議 長 内 閣 総 理 大 臣 総 務 大 臣 外 務 大 臣 厚 生 労 働 大 臣 内 閣 官 房 長 官

                                北海道議会議長 村 田 憲 俊

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