安倍元首相銃撃事件後の日台友好関係  林 智鴻(高雄市議会議員)

2022年7月8日、安倍晋三元首相が奈良市内での街頭演説中に凶弾に倒れた事件は日本だけでなく、全世界に衝撃を与えました。

 安倍元首相は4期にわたり内閣総理大臣を務めました。歴代総理大臣中、在任日数が最長で、国内海外の政治に多大な影響力をお持ちでした。何よりも安倍元首相は、台湾が国際的な困難に直面したとき、いつも積極的に台湾を力強く支持されてきました。

去年3月に中国が台湾産パイナップルの輸入を停止した際には、安倍元首相が自身のツイッターに台湾産パイナップルを手にした画像を投稿されました。

 新型コロナウイルスが広がる中、日本政府の台湾へのワクチン供与を後押ししたのも安倍元首相であり、「台湾有事は日本有事、すなわち日米同盟の有事でもある」と強く訴えてきました。安倍元首相の言葉と行動に、台湾の人たちはどれほど勇気づけられたことでしょう。

現在、台湾の元政府高官、著名な実業家、学者らによる「安倍晋三友の会」の発足が進められております。

 台湾政府から安倍元首相に訪台を招請したところ、快諾されましたが、その直後にこのような歴史的な悲劇が発生しました。

 訃報に触れ、台湾全土は嘆き悲しみました。そしてその夜、民間で自発的に立ち上げた「台湾永遠の友達・安倍晋三総理を偲んで」メッセージの壁が設置されました。台湾で最も高いビル「台北101」の壁面にも安倍元首相を悼むメッセージが点されました。

 しかし、それだけでは台湾の人々の安倍元首相に対する、いや、日本に対する思いは十分に伝わらないとし、私が所属する高雄市議会の所在地で、いつも台日交流に力を入れている高雄市の紅毛港保安堂では、台湾政府からの要請よりも前に、国旗を半旗掲揚といたしました。そして、保安堂の主任委員の張吉雄氏と顧問の馮知葉氏の発案で同日、「日本元首相安倍追思會」(「追思會」とは「メモリアル」の意味)を設置し、7月10日から一般弔問客をお迎えすることができました。

 私はこのニュースに大変驚き、翌早朝に紅毛港保安堂の追思會会場に駆け付けました。また弔問の後、より多くの人に知っていただくために、マスコミにプレスリリースを送りました。

これらの情報はインターネットを通じて発信され、台北の「メッセージの壁」には、安倍元首相を悼む声があふれました。

 安倍元首相の追思會が紅毛港保安堂に設けられたという情報が報道やSNS等で流れ、会場は台湾全土からのたくさんの花輪であふれかえりました。 その後、数多くの在台日本人の他、台湾人も弔問に訪れました。

 産経新聞台北支局長の矢板明夫様、台湾高座の友会事務局長の檀上典子様、元仙台市議会議員のご子息である渡辺様、東京日台交流協会など日本台湾交流に関する諸団体様、許智傑・立法委員、林于凱・高雄市議、陳致中・高雄市議(陳水扁元総統のご子息)、陳明澤・高雄市議、陳慧文・高雄市議などです。

 日本台湾交流協会高雄事務所も弔問記帳の特設会場を設置し、陳其邁・高雄市長、黄偉哲・台南市長からも花籠とカードが贈られ、哀悼と敬意を表されました。そして紅毛港保安堂でも、同じように地元議員や市民が多く訪れ、献花・ご記帳されました。

7月15日には、民間団体「台湾安倍晋三友の会」(陳唐山会長)が企画し、金融大手の聯邦関連企業やホテルグループの瓏山林関連企業、大手紙の自由時報、陳水扁元総統の事務所など175の企業や団体・個人が広告に出資し、日本の産経新聞に見開き2ページで追悼の思いを掲載しました。

 安倍元首相の写真と共に、「追悼・感謝」の文字があしらわれ、台湾全土からの感謝の思いを伝えるとともに、「私たちは、安倍元首相が世界の自由と民主主義のために果たされた偉大な功績を決して忘れません」「安倍元首相の遺志を私たちが引き継ぎ、台日親善を推進します」のメッセージも添えられました。その下には「『台湾有事は日本有事』を訴えた真の友よ、安らかに」の文字も明記されました。

 「台湾安倍晋三友の会」は、台日関係の促進にはもっと日本の若者を、さらに台湾への理解を深めてもらいたい「知台派」の日本人を育成するため、奨学金制度の構築を進めるとの発表もしています。

さらに、「八田與一文化芸術基金会」「台湾伝統基金会」、「台湾好徳公益文化協会」など多数の民間団体や企業が中心となり、台北市内の音楽ホール台北国際会議センターで安倍元首相追悼コンサートを開催しました。

 高雄市に日本軍艦を祀るある宗教施設「紅毛港保安堂」では、等身大の安倍元首相像の制作を始めています。

これら台湾での動きから見ると、安倍元首相の存在は、台湾の人々の心の中においてどのような存在であるのか、お分かりいただけるかと思います。

 私も台日友好の政策に大変関心を持っています。手始めに、以前、私が働きかけて実現したものの、コロナ禍で欠航していた高雄─熊本間を結ぶ航空機の直行便を復活させたいと考えています。

(翻訳:山本康貴)

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