台湾は2025年の大阪・関西万博に企業の一つとしてパビリオン参加

 2025年4月13日から10月13日まで、大阪市此花区の夢洲(ゆめしま)において「2025年日本国際博覧会」(略称:大阪・関西万博)が開かれる。

 残念なことに、台湾は中国の反対で招請されず、13の企業・団体のひとつとしてパビリオンを出展することになったという。

 2月10日、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会は、下記の企業・団体等による「パビリオン出展」への内定参加者を発表、台湾は「玉山(たまやま)デジタルテック株式会社」としての参加が内定したそうだ。

・飯田グループホールディングス株式会社・一般社団法人大阪外食産業協会・住友EXPO2025推進委員会・特定非営利活動法人ゼリ・ジャパン・玉山デジタルテック株式会社・電気事業連合会・一般社団法人日本ガス協会・日本電信電話株式会社・株式会社バンダイナムコホールディングス・株式会社パソナグループ・パナソニック株式会社・三菱大阪・関西万博総合委員会・吉本興業ホールディングス株式会社

 本誌3月20日号で、昨年11月、台北駐日経済文化代表処の政務部長から台北駐大阪経済文化弁事処長に就任した向明徳氏への産経新聞のインタビューを掲載した際、向明徳処長は「国として参加できればなお良い」という質問に「もちろんそうだ。(中略)企業の形でパビリオンをつくる、ということ。台湾としてのパビリオンを出展したいということは強く表明した。台湾の強みである半導体やITなどをアピールしたい」と吐露していた。

 産経新聞が「玉山デジタルテック株式会社」の社長で、台湾貿易センター東京事務所長の陳英顕氏にインタビューし、陳社長から会社設立の目的の一つが万博への参加であることを聞き出し、「より柔軟に対応できる株式会社の設立を準備していた」と苦しい胸の内を聞き出している。下記にその記事をご紹介したい。

 実は、台湾の台湾日本関係協会や日本の大使館に相当する台北駐日経済文化代表処の謝長廷代表をはじめ職員が首相官邸はおろか外務省を訪問することを日本政府は認めていない。実質的な外交官でありながら、空港でも一般人と同じ扱いであり、外交官ナンバーを付けていない車で移動している。

 片や、日本の日本台湾交流協会及び日本台湾交流協会台北事務所の泉裕泰代表や職員は、元首である蔡英文総統をはじめ呉[金リ]燮外交部長などとも会談することができる。

 日本は台湾との関係を「非政府間の実務関係として維持する」という基本的立場を定めているものの「我が国との間で緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナー」(平成28年5月20日の安倍晋三総理の「答弁書」)と表明しているにもかかわらず、台湾の外交官を一般人として扱っている。

 これが「重要なパートナー」台湾の外交官に対する扱いの実態だ。台湾とは外交関係がないとはいえ、これはあまりに理不尽な扱いではないのか。

 台湾の万博パビリオンへの対応もしかりで、中国が何を言おいうと、それにおもねたり忖度することなく、主権国家日本として「重要なパートナー」への礼を失することは許されない。台湾の好意へ甘えすぎることも、日本は慎むべきである。

 なお、下記に紹介する産経新聞の記事の最後に登場する河崎眞澄氏は、『李登輝秘録』で知られる産経新聞論説委員で、この4月から東京国際大学教授に就任している。

—————————————————————————————–台湾、万博は民間パビリオン 中国反対で「実をとる」【産経新聞:2022年4月3日】https://www.sankei.com/article/20220403-L3HHJUJHNFPWTPUE6K3SA6WRGY/?472605

 2025年大阪・関西万博に、台湾が民間企業を通じてパビリオンを出展する。台湾は半導体分野で世界的にずば抜けた存在感を誇るが、中国の反対で万博開催国が招請せず、出展を再三拒まれ続けてきた経緯がある。今回、台湾側は半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)などにも参加を呼びかけるといい、?名を捨てて実を取る?構えだ。

 大阪万博の運営主体「日本国際博覧会協会」は2月、パビリオンを出展する13の民間企業・団体を発表。パナソニックやNTTなど著名な日本企業の中に、昨年10月に設立されたばかりの「玉山(たまやま)デジタルテック」(東京都千代田区)の名があった。同社は台湾の非営利組織で日本貿易振興機構(ジェトロ)にあたる「台湾貿易センター」が100%出資した子会社。会社の登記簿によると、本社は台湾貿易センター東京事務所と同じ場所にあり、社長も同事務所長の陳英顕氏が務めている。

 「日本の大都市で開催される万博に台湾も貢献したいと考えた。どういう形で参加できるか検討した結果、企業パビリオンの形なら可能性があるということで、とりあえず応募した」。陳氏は産経新聞の取材に「万博への参加も会社設立の目的の一つだ」と認めつつ、「台日間の貿易実務に関する支援依頼が多いため、より柔軟に対応できる株式会社の設立を準備していた」と説明する。

 玉山(ぎょくざん)は台湾の最高峰だ。一方、日本には「玉山(たまやま)」という地名もあるため、会社の名称は「たまやま」と呼ぶことにしたという。

 万博では台湾のハイテク産業界と連携し「未来のライフスタイル」を提案する計画。TSMCなどの有力企業に結集を呼びかける。

 台湾の産業は日本と深いつながりがある。ジェトロ・アジア経済研究所の佐藤幸人上席主任調査研究員は「日本の貿易額で台湾は輸出、輸入ともに5位以内に入る重要なパートナー。日本は台湾でしかつくれない半導体に依存する一方、日本の半導体材料などの重要な顧客でもあり、結びつきは強い」と指摘する。

 1970年の前回大阪万博では、台湾が当時、日本と外交関係があり、国連にも加盟していたため「中華民国館」として出展。71年の国連脱退後は中国の圧力で正式な万博出展ができなかった。一方、中国は2010年の上海万博で、親中路線の馬英九政権発足を受けて40年ぶりに台湾を招待。民間名義とするなど「玉虫色の解釈で出展した」(陳氏)経緯がある。

 東京国際大の河崎眞澄教授は「中国はその時々の政治事情で、国際イベントにまで?政治介入?してくるが、台湾は『名を捨てて実をとる』との現実的な戦術をとり、存在感を高める努力を続けている」と指摘する。(西見由章)

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