7月29日、安保法制の審議が行われている参議院の「我が国及び国際社会の平和安全法制に関す
る特別委員会」において、答弁に立った安倍晋三首相は、台湾を「重要なパートナーであり、大切
な友人」と答弁した。次世代の党所属の和田政宗・参議院議員の質問に答えたもの。
和田議員は安保法制に関連し「台湾やASEAN諸国との安全保障協力関係を、我が国の抑止力
向上のため、推進していくべきではないかと考えますがいかがでしょうか」と質問。
中谷元・防衛大臣に続いて答弁に立った安倍首相は、台湾について「台湾との関係については、
非政府間の実務関係を維持するのが我が国政府の立場であります。台湾は、基本的な価値観を共有
する重要なパートナーであり、大切な友人であります。どのような協力や対話を進めていくかは、
我が国の基本的立場を踏まえつつ検討してまいります」と答えた。
この安倍首相の「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会」における答弁は、参
議院の審議中継ホームページからご覧いただけます。4:47:35前後から安倍首相の答弁が始まりま
す。
◆我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会(第4回)[7月29日] http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
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ちなみに、安倍首相が台湾を「重要なパートナー」「大切な友人」と発言するのは、今回が初め
てではない。
まず口火を切ったのは、岸田文雄・外務大臣だった。第二次安倍内閣が始まった直後のことだ。
安倍首相が2013年1月18日に発表した「外交5原則」を受け、岸田外相は交流協会の台湾情報誌
『交流』2013年1月号「交流協会設立40周年特別号」において「台湾は、我が国との間で緊密な経
済関係と人的往来を有する重要なパートナーです」「日台間の深い友情と信頼関係を支えているの
は、民主、自由、平和といった基本的価値観の共有」だと表明する。
次に、東日本大震災2周年追悼式の当日の2013年3月11日、安倍首相は自らのfacebookで「台湾は
世界のどの国よりも多額の200億円を超える義援金を贈ってくれた大切な日本の友人です」と、初
めて台湾を「大切な友人」と表明した。
さらに安倍首相は2013年5月31日、三重県志摩市において開かれた「2013日台観光サミットin三
重」におけるビデオメッセージで初めて「台湾は日本の重要なパートナー」と表明するに至る。
まず外務大臣が台湾を「重要なパートナー」と表明し、次に総理大臣が台湾を「大切な友人」と
表明、そして「重要なパートナー」と位置づけたのだった。用意周到とも言える手順を踏んでい
る。
また、2013年4月10日に日台漁業協定が締結されたことについて、安倍首相は月刊「Voice」7月
号のインタビューで、まず「台湾は大切な友人」と述べてから話を始めた。そして「先般、政治判
断を行い、日台の漁業交渉を17年ぶりに妥結させました。さまざまなご意見があるなかで、これは
『戦略的な観点』から決断をしたわけです。日本の友人を大切にする、ということをやはり忘れて
はなりません」と述べたのだった。
さらに、昨年(2014年)4月26日に千葉市の幕張メッセで開かれたインターネットサイト「ニコ
ニコ動画」のイベントに参加したとき、会場内の台湾ブースに立ち寄って「台湾は日本の大切な友
人です」と参加者にネット中継で呼び掛けている。
そして、今回の参議院特別委員会での「台湾は、基本的な価値観を共有する重要なパートナーで
あり、大切な友人」という答弁となる。
実は、第二次安倍内閣が始まる前、自民党が野に下っていた2011年9月、安倍首相は現在の菅義
偉・官房長官とともに台湾安保協会(羅福全理事長)主催のシンポジウムに招かれ、安倍首相はこ
のシンポジウムですでに「台湾は民主、自由、平和といった基本的価値観を共有する重要なパート
ナー」と表明していた。
元首相としての発言の重さはあるが、現役総理の発言とは天地雲泥の差がある。しかし、安倍首
相が決して思いつきなどで表明や答弁をしていないことは、この経緯から明らかだろう。むしろ周
到と言ってよい。