台湾は断じて中国ではない  廣瀬 勝(本会理事・熊本県支部長)

【機関誌『日台共栄』7月号「台湾と私」(31)】
http://www.ritouki.jp/magazine/pdf/31-2.pdf

 「台湾人は断じて中国人ではありません!」「日本に住む台湾の人々の尊厳と人格権
は、戸籍の国籍欄に記されている『中国』という誤った表現により侵害されています!」
と演説している私がいた。昨年11月17日、熊本市・辛島(からしま)公園前の街頭署名活
動だった。

 道ゆく人々へ語りかけながら、頭の中では1年6ヵ月に及ぶ中国・青島(チンタオ)にお
ける駐在時代を想起し始めていた。ただ重く暗い記憶がぐるぐると回り始めたのだ。

 2006年5月、3工場のうちの1つの金型工場が中国人労働者により不法占拠され、その占有
回復と現地法人の黒字化という難題を、社長の兄から与えられた上での赴任だった。

 不法占拠の首謀者たる30歳になる中国人総経理の退職金要求額は、年間給与額の25年分
という法外なものであった。また、暴力団と結託し、日本製工作機械の競売を目論む彼ら
の活動を阻止するには全く骨が折れた。

 窮状を訴えた警察には、不愉快そうに占拠は合法であると吐き捨てられ、弁護士には
「不動産侵奪罪」を知らないのであろうか、「没弁法(仕方ない)」と諭された。

 後に、中国は民事訴訟法231条という国家権力の恣意的濫用を無限に許容した史上稀にみ
る悪法(2008年4月施行。民事訴訟で被告とされると、その個人は勿論、法人の場合、法定
代表人、主たる責任者、財務担当者が、出国の自由を奪われる効果を生ぜしめる)を制定
するが、私の従兄弟はこれにより150日間も中国に閉じ込められ、大事件に発展した(詳し
くは三橋貴明著『中国がなくても、日本経済はまったく心配ない!』の巻末エピローグを
参照)。

 日系食品メーカーへの地道な営業活動の結果、現地法人の黒字化という目標はなんとか
達成できたものの、工場の占有回復はできないまま鬱々とした日々が虚しく過ぎていっ
た。

 そんな中で、あてもなく異臭漂う青島の街を歩いていると、ふと「台湾高山茶」という
看板を見つけた。天祐であった。店の主人は正真正銘の台湾人で、よどみのない日本語を
快活に話す年配の方だった。傍らにいた女性は台湾語を話し、彼女の満面の笑みに安堵し
た。久しぶりに温かい人々との間に会話が弾み、時間を忘れてお茶を何杯も飲み干した。

 私にとって台湾の人々とは、15年に亘る長くしんどい場面の中に、ぽつりぽつりと時折
元気な笑顔で現れ、私を励ましてくれる人々のことである。日本が先の震災において、世
界最大の義捐金と数限りない声援を台湾の皆様から戴いたのは象徴的なことのように思わ
れる。誠に感謝に堪えない。

 私たちの先達が台湾の人々との間に長い歳月をかけて作りあげた有形無形の遺産があま
たある。現代に生きる私たちはこの恩恵を蒙る幸福感を味わう以上に、この稀有にして奥
深い価値を含んだ「日台の絆」とも呼ぶべき遺産の大切さを次世代へ伝える必要性を強く
感じる。

 とりわけ、台湾が国家の実態として必要な最高法規を有し、軍事的独立性の維持という
要件を具備し、議会制民主主義が健全に機能している以上、 「台湾は中国の一部」という
謬見に与することは如何なることがあろうと拒絶しなければならない。

 最後に、昨年12月、熊本県の公立高校で初めて台湾への修学旅行を実現させた大津(お
おづ)高校の白濱裕(しらはま・ひろし)前校長が掲げるスローガンがある。 「凡事徹
底」。 あたりまえのことを徹底して遂行すべしということだ。私はこれを教訓として自分
のライフワークとしたい。 「台湾は台湾。中国は中国」という「凡事」の世界的な認識の
共有化「徹底」についてである。


廣瀬勝[ひろせ・まさる] 昭和39(1964)年1月、福岡県生まれ。西南学院高校、中央大
学法学部卒業。昭和61年、産経新聞社第138回「わたしの正論」にて佳作2位入賞(題名
「『誤謬なき』憲法の問題」)。昭和62年、産経新聞社第150回「わたしの正論」にて入選
1位入賞(題名「防衛予算の制約と効率」)。大学卒業後、父親の経営するプラスチック食
品容器メーカーに入社。東京営業所に配属。平成17年より中国・青島に駐在。平成19年に
退社し、現在は熊本県阿蘇郡小国町で温泉施設「豊礼の湯」を経営。著書『台湾記』
(2010年、文芸社)は台湾の前衛出版社からも2010年10月に刊行。現在、(株)豊礼専務取
締役、日本李登輝友の会理事、同会熊本県支部長。


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