を持つ南部の嘉南平野を沃野に変えた八田與一(はった・よいち)。台湾の人々が未だに
尊敬してやまない日本人の一人だ。この八田技師を軸に、生まれ故郷の金沢市と烏山頭ダ
ムがある台南市の交流は順調に進んでいる。
八田與一の事績を顕彰する奇美実業創業者の許文龍氏は2004(平成16年)年5月、八田與
一の胸像を制作して金沢市に寄贈しているが、このたび2度目の寄贈をされたという。胸像
は許氏自ら制作、八田の母校である花園小学校に設置して欲しいという許氏の意向だそうで、
その手紙を頼清徳・台南市長が持参するという。
一方、その頼清徳市長は台南市議会や台南市旅行商業同業公会などの関係者150人を率い
て17日にチャーター便で小松空港に降り立ち、20日には金沢市観光協会と台南市旅行商業
同業公会が「友好交流協定」を締結の予定だという。ちなみに、この便は、台南空港と小
松空港を結ぶ初めてのチャーター機だそうだ。
すでに本誌で伝えているように、頼清徳・台南市長は、4月21日には「交流促進都市協定」
を結ぶ、東日本大震災で被災した仙台市に義援金約1億円を贈呈。また6月11日には、「観
光友好都市協定」を結んでいる日光市の鬼怒川温泉を300人もの大観光団を率いて訪れてい
る。観光客が激減した日光市を激励するためだ。
頼市長のこのような積極的な支援に、仙台市も日光市もおおいに感激、ますます交流は
深まっている。そして今度は金沢市である。
実は、昨年11月の金沢市長選挙で当選した山野之義(やまの・ゆきよし)市長は大の台
湾ファン。平成17年(2005年)5月、金沢市議会議員だった山野氏は「八田技師夫妻を慕い
台湾と友好の会」の一員として訪台し、李登輝元総統とお会いし、八田技師の墓前祭に参
拝してきたときの訪台記をブログに掲載した。
このブログで、李元総統にお会いした印象を「衰えることない知の欲求。驚くべき、『知
の巨人』である」とつづっていることもあり、本誌への転載をお願いすると、わざわざ手
を入れてお送りいただいたことを思い出す(下記参照)。
このような山野市長と台南市の頼清徳市長だ、交流が深化するのも当然だろう。近い将来、
金沢市と台南市は姉妹都市を結ぶのではないかと楽しみである。
下記に許文龍氏が寄贈した八田與一の胸像の記事と金沢市観光協会と台南市旅行商業同
業公会が友好交流協定締結の記事をご紹介したい。
◆八田與一の旅(その1)山野之義【メルマガ「日台共栄」2005年6月18日】
http://melma.com/backnumber_100557_1758289/
◆八田與一の旅(その2)−浜野弥四郎の胸像【メルマガ「日台共栄」2005年6月23日】
http://melma.com/backnumber_100557_1758290/
◆八田與一の旅(その3)−殉工碑【メルマガ「日台共栄」2005年6月28日】
http://melma.com/backnumber_100557_1758293/
金沢へ八田技師の胸像贈る 台南の実業家、花園小に設置へ
【北國新聞:2011年9月14日】
http://www.hokkoku.co.jp/subpage/HT20110914401.htm
*写真:寄贈された胸像=金沢市花園公民館
台湾南部の水利事業に尽力した八田與一(はったよいち)技師(金沢出身)を敬愛する
台南市の実業家、許文龍氏が13日までに、金沢市へ八田技師の胸像を寄贈した。技師が建
設した烏山頭(うさんとう)ダムほとりにある銅像や数々の資料を参考に許氏が作った作
品で、穏やかな表情が表現されている。市は技師の母校である花園小に設置する方針で、
「ダムの父」が時を超えて「里帰り」した。
寄贈された胸像は高さ60センチ、幅51センチ、奥行き23センチ、重さ26キロの銅像。ち
ょうネクタイを結び、遠くを見詰める八田技師の姿が精巧に仕上げられた。銅像の裏には
「許文龍」と刻まれている。
許氏は1959(昭和34)年に奇美実業を創業し、一代で世界的企業に育てた。一方で芸術
文化にも造詣が深く、本社社屋には「奇美博物館」を開設し、無料で開放している。
許氏が市に八田技師の銅像を贈るのは、金沢ふるさと偉人館の胸像に続き2回目で、自作
の作品は初めてとなる。小松空港と台南空港を結ぶチャーター便が17日に初就航し、金沢
と台南の関係がより密接になる機会を捉え、日台友好の象徴である技師の銅像を寄贈する
ことにした。
チャーター機に乗り込んで金沢を訪問する頼清徳台南市長は、許氏が「銅像を小学校に
飾ってほしい」と記した文書を、山野之義市長に手渡す予定。銅像は現在、花園公民館で
保管されており、市は許氏の意向を受け、花園小に設置する方向で検討を進める。許氏と
親交の深い「八田技師夫妻を慕い台湾と友好の会」の中川外司世話人代表は「許氏の八田
技師に対する尊敬の気持ちを子どもたちが感じ取り、より深く郷土の偉人を学んでほしい」
と話した。