1月も年初から各国要人の相次ぐ「台湾訪問」

 本誌では台湾を訪問する海外要人について注目し、日本や米国のみならず、これまでほとんど見られなかったヨーロッパ各国からの訪問について特に注目しています。

 本誌1月6日号では、12月26日から29日にかけて訪台していた日本の世耕弘成・参議院自民党幹事長ら12人の国会議員訪問団と入れ替わり、韓国国会議員の趙慶泰氏を団長とする訪問団が12月28日から31日まで訪台し、年明け早々の1月3日からは元デンマーク首相で、2009年から2014年までNATO事務総長をつとめたアナス・フォー・ラスムセン氏が30年ぶりに台湾を訪問したことをお伝えしました。

 その後も、8日に台湾と外交関係を結ぶツバルの国会議長一行、またパラグアイの下院議長一行、翌9日にはドイツ連邦議会の幹部とリトアニア国会の幹部、10日からはスペインの下院保健委員会委員長一行、そして米国からシンクタンク「プロジェクト2049研究所」のランドール・シュライバー理事長一行も訪問するなど、年頭から訪台ラッシュが続いています。下記に、覚書として、それぞれの訪台について短く列記してみます。

 それにしても、ドイツから大臣が訪問していたことには驚かされました。リトアニアに「駐リトアニア台湾代表処」が開設されたことに並ぶ象徴的な動きで、ヨーロッパが大きく変化していることがこの一事で分かります。

◆ツバル

 1月8日、太平洋島嶼国家ツバルのサミュエル・テオ国会議長は国会議員2人を率いて訪台。12日までの滞在中、9日に蔡英文総統と会談し、その後、立法院を訪問して游錫●・立法院長と両国議会の連携に関する文書に署名しました。

 ツバルは1979年に台湾と国交を結んでいて、国交国14ヵ国の一つ。中国から経済支援と引き換えに台湾との断交を迫られましたが断っています。昨年9月にもカウセア・ナタノ首相が訪台しています。(●=方方の下に土)

◆パラグアイ共和国

 1月8日、中南米にあるパラグアイのカルロス・マリア・ロペス下院議長は超党派議員団4人を率いて訪台。12日までの滞在中、9日に蔡英文総統と会談しました。

 ロペス下院議長は台湾初訪問ですが、所属する真正急進自由党のエフライン・アレグレ党首は4月の大統領選に出馬を表明し、選挙に当選すれば台湾と断交し中国と国交を結ぶと明らかにしています。4月の大統領選が注目されます。

◆ドイツ連邦共和国

 1月9日、ドイツからは連邦議会国防委員会委員長のマリー・アグネス・シュトラック・ツィンマーマン氏と自由民主党副幹事長のヨハネス・ボゲル氏が率いる代表団が訪台。12日までの滞在中、10日に蔡英文・総統を表敬訪問し、政府高官らと会談しています。

 ドイツからは昨年10月2日、ドイツ連邦議会による正式な訪問団として超党派の国会議員団6人が訪問し、10月23日にはドイツ議会人権委員会の正式派遣による超党派の国会議員団6人が台湾を訪問しています。

 台湾国際放送によると「アメリカのシンクタンク、ジャーマン・マーシャル・財団(GMF)のノア・バーキン(Noah Barkin)氏は最新のプレスリリースで、『去年8月のナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問後、ヨーロッパは中国を刺激することを恐れず、台湾訪問を停止するどころか、相次いで台湾訪問を行っている。ドイツ教育研究省のベッティーナ・シュタルク・ヴァッツィンガー大臣もまた台湾を訪れており、これは四半世紀ぶりのドイツの大臣クラスの人物による台湾訪問となっている』と述べています」(1月9日)と伝えています。

 シュタルク・ヴァッツィンガー大臣が台湾を訪問したというのは初耳で、調べてみますと、唯一、NNAグローバルナビが昨年11月22日に、台湾行政院の国家科学・技術委員会による発表として「呉政忠主任委員はこのほど、ドイツ連邦教育研究省(BMBF)のシュタルク・ヴァッツィンガー大臣と会談した。台湾とドイツ間のハイテク部門トップによる会談は今回が初めて」と報じていて「ヴァッツィンガー氏は、『地政学面から見て、台湾のハイテクサプライチェーンにおける重要性はより一層明確であり、われわれは重要な民主的パートナーである台湾とハイテク研究の提携強化を望む』とコメント」したことを伝えています。

 台湾と国交のないドイツからは大臣も訪台していたことに驚きましたが、シュタルク・ヴァッツィンガー大臣の訪台を加えますと、ドイツからは昨年10月から今年1月にかけ、大臣や国防委員長を含む訪台団を4回も送り出していることになります。異例のことと言っていいのではないでしょうか。

 10月3日に超党派の国会議員団6人が蔡英文総統と会談した際、団長のウィルシュ議員が「我々は(ウクライナと同様に)、台湾が武力による脅威を受けた時にはともに立って支援する」(朝日新聞)と述べたことを思い出します。米国と同じように、この心強い台湾支援の背景に連邦議会の存在があるようです。

◆リトアニア共和国

 1月9日、リトアニア議会の国家安全・国防委員会委員長のローリナス・カシューナ氏とリトアニア議会親台派グループの副主席を務めるドビーレ・シャクリアン議員を共同団長とする国家安全保障と国防問題に関する超党派国会議員9人が訪台。14日までの滞在中、12日に蔡英文総統と会談し、蘇貞昌・行政院長とも会談しました。

 台湾は2021年11月18日、リトアニアの首都ヴィリニュスに事実上の大使館となる代表事務所に台湾の名を冠した「駐リトアニア台湾代表処(駐立陶宛台湾代表処)」を正式に開設し、一方のリトアニアも2022年11月7日、台北市内に「リトアニア貿易代表処」を正式に開いています。

◆スペイン王国

 1月10日、スペイン下院保健委員会委員長のローザ・ロメロ・サンチェス議員を団長とする超党派下院議員6人が訪台。スペイン国会からの訪台団は2019年11月以来となり、14日までの滞在中、游錫●・立法院院長や沈栄津・行政院副院長を表敬訪問。また、衛生福利部、大陸委員会、経済部、農業委員会、新竹サイエンスパークを訪問するそうです。(●=方方の下に土)

 なお、スペイン下院外交委員会は昨年10月6日に「台湾海峡の緊張情勢」に関する声明を可決しているそうですが、これは「中華民国(台湾)とスペインの国交断絶後50年間で初めて、スペイン国会が台湾に友好的な声明を書面形式で正式に可決した」(台湾国際放送)と伝えられています

◆アメリカ合衆国

 米国のアジア太平洋安全保障担当の元国防次官補で、シンクタンク「プロジェクト2049研究所」の理事長をつとめるランドール・シュライバー氏一行が訪台。11日に蔡英文総統と面会し、蔡総統は「親友であるランドール・シュライバー理事長及び専門家、学者のみなさんと会えてうれしい」と述べるとともに「今年も台湾は米国と各分野における連携を強め、自由で開かれ、繁栄するインド太平洋地域のために貢献していくと宣言し、訪問団により多くの提言を要請した」と「Taiwan Today」誌は報じています。

 ただ「プロジェクト2049研究所」の訪台に関する報道はほとんどなく、訪台した日やメンバーなどについては不明です。

◆日本

 日本からの国会議員の訪台は1月14日までにありませんでしたが、1月には2組の国会議員団が訪問するそうです。

 一方、地方自治体の首長などの訪台は少なくなく、釧路市の蝦名大也市長率いる訪問団や熊本県の蒲島郁夫知事が熊本市や菊陽町、県内の経済団体など25人が訪問しています。

 また、全日本教職員連盟(前田晴雄委員長)による「第38回日本教師中華民国訪問研修団」(団長:前田晴雄)の一行10人が1月4日から訪台し、嘉義市で行われた「台日教育学術シンポジウム」に出席し、また台南市の中学校や教育部(日本の文部科学省に相当)を訪問して教育交流をしてきたそうです。

 ちなみに、1984年に結成された全日本教職員連盟は「教育の正常化を目指し、教育現場に特定のイデオロギーを持ち込まず、中正不偏の教育を推進し、美しい日本の伝統と文化・日本人の心を守る」とホームページで謳い、1986年に初めて教職員による研修団を台湾へ派遣、それ以降、2020年まで35年連続で研修団を派遣してきたそうです。新型コロナウイルスのため2年間の中断を経て、今回の研修団派遣となったとのことです。

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