韓国国会議員団や元NATO事務総長一行も台湾を訪問

 本誌は、台湾を訪問する海外要人について注目して紹介している。

 昨年末の12月26日から29日にかけ、日本から世耕弘成・参議院自民党幹事長が同院同党の議員で清和政策研究会(通称:安倍派)に所属する山本順三、末松信介、中田宏、山田宏、北村経夫、大野泰正、堀井巌、松川るい、加田裕之、生稻晃子、友納理緒の11人を率いて訪問したことをお伝えした。

 この日本からの国会議員訪問団と入れ替わり12月28日から31日にかけ、韓国の国会議員団として、韓台議員親善協会会長を務める趙慶泰・議員を団長に、鄭宇澤・国会副議長、李達坤・議員、李元旭・議員らが訪台した。韓台湾議員親善協会が台湾を訪れるのは2019年12月以来だという。

 訪台中は、蔡英文総統らと会談したほか、大陸委員会側と台湾海峡や南北関係について意見交換したと伝えられている。

 2023年の年明け早々の1月3日からは、元デンマーク首相で、2009年から2014年までNATO事務総長をつとめたアナス・フォー・ラスムセン氏が5日まで台湾を訪問した。ラスムセン氏は、世界の民主主義の発展を推進する非営利団体、「アライアンス・オブ・デモクラシーズ・ファウンデーション」の代表をつとめ、1994年以来、約30年ぶりの訪台だそうだ。NATO事務総長経験者の台湾訪問は初めてだという。

 ラスムセン氏は訪台の目的について、蔡英文総統との会談で「台湾とヨーロッパの関係強化や、いかにして台湾の未来を守り、台湾の人々が自分の未来を決定する権利を確保する方法について議論する」ことだと述べている(下記に紹介の「Taiwan Today」記事)。

 台湾とヨーロッパの関係強化は、本誌で何度か指摘しているように、2020年1月にチェコ共和国プラハ市のズデニェク・フジブ市長と柯文哲・台北市長が姉妹都市協定を締結したことに端を発し、その年の8月にはチェコ共和国のミロシュ・ビストルチル上院議長など代表団90人が訪台している。

 翌2021年に入ると、2月にオランダ議会が中国によるウイグル族弾圧について「ジェノサイド(集団虐殺)」と認定する動議をヨーロッパで初めて可決し、リトアニアやフランス、スロバキア、チェコ、イギリス、アイルランド、ドイツなどでも同様に可決する動きに発展してゆく。10月には欧州議会が台湾との関係強化をヨーロッパ連合(EU)に求める「EUと台湾との政治関係と協力」報告書を賛成多数で可決し、11月18日にリトアニアの首都ヴィリニュスに事実上の大使館となる代表事務所に台湾の名を冠した「駐リトアニア台湾代表処」を正式に開設する。

 同時に、フランス、欧州議会公式代表団(フランス、リトアニア、チェコ、ギリシャ、イタリア、オーストリア)、スロバキア、リトアニア、エストニア、ラトビアなどから続々と国会議員の台湾訪問が続いた。

 その動きは2022年以降も変わらず、昨年は日本からも3年ぶりに自民党の青年局が訪台してことを皮切りに、国会議員の訪台が相次ぎ、年末に至って萩生田光一・自民党政調会長や世耕弘成・参議院自民党幹事長という大物議員の訪台につながっている。

 ドイツやイギリスからも訪台が相次ぎ、ここに遅ればせながら韓国も加わり、NATO元事務総長も約30年ぶりに訪台するという事態に至っている。

 中国としてはまったく面白くない現象だろう。各国から議員団が訪台するたび「一つの中国」原則に反するなどと抗議の声を挙げているが、ウイグル族への人権弾圧や香港の一国二制度の形骸化、急速な軍備拡張、期待したほどではない「一帯一路」経済圏構想への幻滅、新型コロナウイルスの情報隠蔽への不信感など、すべて自ら蒔いた種である。

 今年も台湾を訪問する海外要人について注目してゆきたい。

—————————————————————————————–蔡英文総統と頼清徳副総統、AoDのラスムセン代表とそれぞれ会見【Taiwan Today:2023年1月5日】https://jp.taiwantoday.tw/news.php?post=231155&unit=149&utm_source=Taiwan+Today+JP+9&utm_medium=email&utm_content=%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9+textlink

 世界の民主主義の発展を推進する非営利団体「アライアンス・オブ・デモクラシーズ・ファウンデーション(Alliance of Democracies Foundation, AoD)」のアナス・フォー・ラスムセン(Anders Fogh Rasmussen)代表が3日から5日までの日程で台湾を訪問している。ラスムセン氏はデンマークの元首相で、北大西洋条約機構(NATO)事務総長を務めた経歴を持つ。蔡英文総統と頼清徳副総統は4日、それぞれラスムセン氏が率いる訪問団による表敬訪問を受けた。

 ラスムセン代表は2017年にAoDを設立。2018年から毎年、世界の民主主義国家の元首や要人を招き、「コペンハーゲン民主主義サミット(Copenhagen Democracy Summit, CDS)」を開催している。蔡英文総統は2020年から毎年招待を受け、同サミットで演説(オンライン)を行っている。

 蔡総統は、このサミットでは台湾の民主化の経験を共有し、近い知念を持つ国々のリーダーとともに、世界の民主主義国家が連携を強化して権威主義の挑戦に対応しようと呼びかけているとして、サミットを立ち上げたラスムセン代表に感謝した。

 蔡総統はまた、ラスムセン代表が前回台湾を訪れたのが1994年であることに言及し、「この約30年間で台湾は大きく変化した。民主化が大きく進み、経済の繁栄を生んだ。人々の団結によって、我々はしなやかで活力のある市民社会を築き上げた」とし、ラスムセン代表が今回の訪問で、台湾の発展を確認するだけでなく、民主主義と自由が台湾の人々にとってゆるぎない価値となり、我々の生活の一部になっていることを深く実感するだろうと述べた。

 蔡総統は続けて、「台湾はその他の成功している民主国家と同様、権威統治を経験しており、民主主義や自由が得難いものであり、当然のものではないことを十分認識している。だからこそ我々はその尊い資産を、より大切にしているのだ」と強調した。

 蔡総統はさらに、「台湾は世界における民主主義の砦(とりで)であり、権威主義の拡張と向き合っている」とした上で、このほど「全民国防兵力の強化に向けた構造調整計画」を発表し、トータル・ディフェンス(全面防衛)体系を見直しと調整を指示したことに言及。これから台湾の全体的な防衛力を引き上げると同時に、より多くの民主陣営の国々と連携することで、インド太平洋地域の平和と安全、安定を維持していきたいと意気込みを見せた。

 これに対してラスムセン代表は、5年前にAoDを立ち上げたのは、世界の民主主義陣営の連携を強化することで権威主義の拡張に対抗しようとするのが目的だったと説明。世界の民主主義陣営は世界経済の60%を占めており、これらがともに努力すれば大きな力となり、北京当局を含む権威主義国家に対して大きな抑止能力を持つことになると述べた。

 ラスムセン代表はまた、台湾は強靭な民主主義を持ち、世界の民主主義陣営という大家族の一員だとした上で、「1994年に台湾を訪れたとき、台湾はまさに民主化の過渡期にあった。今回の訪台で目にした台湾の民主主義の進歩に、自分は強い印象を受けた。台湾はすでに自由の灯(ともしび)である」と台湾の民主化を称賛した。

 ラスムセン代表はその後、頼清徳副総統を表敬訪問した。頼副総統はラスムセン代表に対して、台湾は世界の民主主義の秩序作りのために、前向きで積極的な役目を果たしたいという意欲を持っているとした上で、AoDと協力しながら、民主主義、自由、人権など共通の価値の普及に努めたいと伝えた。

 ラスムセン代表は、台湾は民主陣営にとって重要な一員だとした上で、台湾のリーダーたちと直接会見し、台湾とヨーロッパの関係強化や、いかにして台湾の未来を守り、台湾の人々が自分の未来を決定する権利を確保する方法について議論するのが今回の台湾訪問の主な目的だと語った。

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