市町村長など29人のミッション団を率いて訪台、台北市の花博ドームで開かれる観光物産イベント
「2015新・日本旅遊節」に出席するなどしてトップセールスを行うことをお伝えした。
達増知事一行の訪台目的の一つが、「いわて花巻空港」へのチャーター便運航拡大と定期便就航
を中華航空と交渉することだ。
台湾から観光客を誘致する最大のポイントは「足」、すなわち飛行機の確保にある。まずチャー
ター便を飛ばし、それを定期化して定期チャーター便とし、旅客数が安定したところで定期便化し
たいというのが地方空港を抱える自治体の念願だ。足が不安定ではどうにもならない。定期便の就
航は地方空港の「悲願」と言ってよい。
例えば、仙台空港も台湾との定期直行便の運航が「悲願」だった。そのために、後に県議会議長
をつとめる仙台市議会議員だった相沢光哉(あいざわ・みつや)氏らは、当時の桜井謙二・宮城県
議会議員ら7人とミッションを組んで台湾の航空会社と交渉に当たった。1989年(平成元年)3月の
ことだ。
紆余曲折を経て、エバー航空の台北・仙台間の定期直行便が実現したのは、実に16年目の2004年
(平成16年)。定期便を飛ばすということがいかに難しい事業か、その一端が垣間見える。
実は、7人のミッション団長をつとめた桜井謙二県議は、台北での交渉のさ中、台北市内のホテ
ルで心臓発作のため急逝した。相沢氏らは、桜井県議の「悲願成就」に思いを馳せ、仙台空港から
の初便を「謙ちゃんの翼」と名付けて参加者を募ったという。相沢氏はそれを「無念の魂魄(たま
しい)に応えるささやかな意志(こころ)」の表現だったと述懐している(平成18年9月発行、機
関誌「日台共栄」第14号「台湾と私」)。
相沢氏はその後、県議会議員となって議長もつとめ、現在、6期目となり、本会宮城県支部の副
支部長として、また宮城県日台親善協会会長として、宮城県と台湾との交流には欠かせない人と
なっている。
いささか前置きが長くなった。
現在、高雄空港と熊本の阿蘇くまもと空港にはが定期チャーター便を運航している。昨年10月か
らは週3往復運航とし、平均搭乗率は約75%と順調に推移してきたという。
昨日(6月9日)の国土交通省の利用状況概況(速報値)が発表され、1979年の国際線開設以降、
昨年度の国際線旅客数が初めて5万人を突破したことが判明した。要因はこの台湾・高雄間を結ぶ
チャーター便だったという。
これに力を得て、蒲島郁夫(かばしま・いくお)熊本県知事は6月16日から訪台、中華航空側と
定期航空路線を10月に開設する方向で最終合意する見通しだという。地元紙の熊本日日新聞が詳細
を伝えているので、下記に紹介したい。
これまで本誌では何度かお伝えしたが、実は熊本県はこれまで中国べったりだったと言ってい
い。上海に事務所まで開設していた。高校生の修学旅行先も原則として中国と韓国しか認めてこな
かった。ところが、尖閣問題などで日中間の関係が悪化し、韓国とも竹島問題や慰安婦問題で関係
が悪化。そこで目を向けたのが台湾だった。
記事にもあるように、熊本県と熊本市は2013年9月9日に高雄市と経済交流促進に関する「国際交
流促進覚書」を締結して以降、台湾からの観光客が増えはじめた。熊本のゆるキャラ「くまモン」
も台湾で人気爆発、台湾セブンイレブンが熊本フェアを開催するなど、台湾の人々の熊本への関心
もうなぎ登りに高まった。
最初はチャーター便、そして定期チャーター便が運航されるようになり、いよいよ定期便の就航
という過程を経ている。
しかし、熊本と台湾の交流の突破口を開いたのは「国際交流促進覚書」ではない。実は修学旅行
だった。4年前の2011年(平成23年)12月に大津(おおづ)高校の白濱裕(しらはま・ひろし)校
長が率先して台湾修学旅行を実施したことが突破口となった。これは、熊本県下の公立高校が学年
単位(8クラス、約300人)で初の台湾修学旅行だった。
白濱裕氏は現在、大津高校を定年退職し、本会熊本県支部の副支部長として、熊本からの台湾修
学旅行の実施などに力を注がれている。
台湾修学旅行の初実施に至る経緯については、白濱氏本人に本会の機関誌「日台共栄」第36号
(昨年12月発行)で「台湾修学旅行のすすめ」と題して書いていただいている。パイオニアの苦労
がいかなるものだったか、読んでいて胸に迫るものがある。
白濱氏のこの寄稿文はすでに本会ホームページの機関誌「日台共栄」欄に掲載しているので、P
DF版で読むことができる。
◆白濱裕「台湾修学旅行のすすめ」
http://www.ritouki.jp/index.php/magazine/magazine036/
熊本−高雄、10月定期便化へ 中華航空
【熊本日日新聞:2015年6月9日】
台湾航空大手の中華航空が、熊本と台湾・高雄を結ぶ定期航空路線を10月に開設する方向で最終
調整していることが8日、分かった。実現すれば、アシアナ航空(韓国)のソウル線に続き、熊本
空港発着の国際線は2路線になる。
蒲島郁夫知事が16日から台湾を訪問し、中華航空と最終合意する見通し。関係者によると、定期
便は10月末のダイヤ改正に合わせて就航し、当面は週2〜3往復が有力だ。
熊本−高雄間では、中華航空の子会社が昨年10月下旬から期間限定の定期チャーター便を週3往
復運航。103人乗り機材で、今年3月までに約1万人が利用した。このうち約8割が台湾からの旅行者
だが、今年に入り熊本からの利用客も増えている。
1月には蒲島知事が中華航空幹部と会談し、4〜10月のチャーター便継続と、10月の定期便化に向
けて協議を進めることで合意していた。
2014年に訪日した台湾の旅行者は283万人。円安などを追い風に前年から28%増え、国・地域別
でトップだった。中華航空は熊本−高雄線について(1)熊本は阿蘇や熊本城など人気の観光地が
ある(2)九州の中央にあり、他県への移動が便利−などと評価。「チャーター便の実績も需要が
あることを示している」(福岡支店)としている。
高雄市は、台湾の南部に位置する第2の都市で人口約280万人。重工業や海運業が盛んで、観光地
としても注目されている。同市と県、熊本市は13年9月、経済交流促進に関する覚書を締結した。
(蔵原博康、並松昭光)