熊本県では10年ほど前まで、熊本県教育委員会は海外修学旅行先について「国外の場合は原則として韓国、中国とする」(修学旅行に関する実施基準)と定めていて、渡航先に台湾は入っていなかった。その突破口を開いたのが当時、大津(おおづ)高校の校長だった白濱裕(しらはま・ひろし)氏だった。
白濱校長は県教委に掛け合い、県議会議員に台湾への修学旅行振興についての質問をしていただくなどして「修学旅行に関する実施基準」に台湾を追記させるに及び、2011年12月、大津高校は台湾への修学旅行を実施するに至っている。学年単位(一年生=314名)の訪台は県内初のことだった。
白濱校長はその後も台湾への修学旅行を実施し、その一方で、戎義俊氏が弁事処長をつとめていた台北駐大阪経済文化弁事処福岡分処(略称:台北駐福岡弁事処)が主催する「台湾教育の現状と修学旅行セミナー」において「台湾修学旅行のすすめ」と題して報告するなど、積極的に台湾への修学旅行に取り組んでいた。その甲斐あって、熊本県の県政や教育委員会の台湾修学旅行への取り組みは大きく前進したという。
当時、白濱氏から台湾修学旅行の実施についていろいろお聞きし、福岡で開いていた修学旅行セミナーが熊本でも開かれ、昨年は10校が台湾への修学旅行を実施したという「テレビくまもと」のニュースは感慨深いものだった。現在、本会熊本県支部副支部長としても活躍する白濱裕氏もまた、同じ思いでこのニュースを聞いたのではないだろうか。
なお、「テレビくまもと」は台北駐福岡弁事処を「台湾の総領事館にあたる」としているが、総領事館は台北駐大阪経済文化弁事処で、福岡は現在、大阪弁事処の分処(支所)にあたる。
台北駐福岡弁事処のホームページによると、戦前は中華民国駐長崎領事館で、1970年7月に福岡に移って福岡総領事館となるも、1972年の断交後は亜東関係協会駐大阪弁事処福岡分処となり、1992年6月に台北駐大阪経済文化弁事処福岡分処と改称して現在に至っているという。
◆台北駐大阪経済文化弁事処福岡分処(略称:台北駐福岡弁事処) http://www.roc-taiwan.org/JP/FUK
◆白濱裕「台湾修学旅行のすすめ」:機関誌『日台共栄』平成26年(2014年)12月発行 http://www.ritouki.jp/index.php/magazine/magazine036/
—————————————————————————————–「修学旅行や留学で台湾へ」県内初のセミナー開催【テレビくまもと:2019年5月19日】https://www.tku.co.jp/news/%e3%80%8c%e4%bf%ae%e5%ad%a6%e6%97%85%e8%a1%8c%e3%82%84%e7%95%99%e5%ad%a6%e3%81%a7%e5%8f%b0%e6%b9%be%e3%81%b8%e3%80%8d%e7%9c%8c%e5%86%85%e5%88%9d%e3%81%ae%e3%82%bb%e3%83%9f%e3%83%8a%e3%83%bc%e6%94%b9/
修学旅行や留学先に台湾を選んでもらおうと学校関係者を招いたセミナーが県内で初めて行われました。今月16日のセミナーは台湾の総領事館にあたる台北駐福岡経済弁事処が主催したもので、県内の学校や市町村の関係者など約50人が参加しました。
セミナーでは弁事処の陳忠正処長が「次世代を担う若者にバトンを渡せるように体験や交流で友情を育んでほしい」とあいさつ。台湾の大学の奨学金やカリキュラムなど多様な受け入れ制度が紹介されたあと高校生の修学旅行のポイントが説明されました。県内では去年合わせて10の高校が台湾への修学旅行を実施しています。