日本では近年、学校給食に台湾のバナナやパイナップルを出す小学校や中学校が増えています。
この動きは、台湾産果物を日本の学校給食に提供することで台湾農産品の日本向け輸出強化をはかりたいと考えていた台湾が、2016年6月に静岡県御殿場市と行政院農業委員会が「台日農産品交流強化の覚書」を交わしたことが手始めだったようです。
◆ブームでは終わらなかった日本の台湾産パイナップル支援
2020年まで台湾産パイナップルは毎年、全生産量の10%に当たる4万トンほどが中国に輸出されていましたが、よく知られているように、2021年2月26日、中国は害虫の混入を理由に3月1日から輸入を禁止すると発表。
それまで、日本ではフィリピン産パイナップルが輸入の98%ほどを占めていましたが、この中国の言いがかりともいうべき輸入禁止措置は、日本で「台湾を応援しよう!」「台湾の農民を救え!」といった声が高まり、日本への輸出量が飛躍的に伸びました。
2020年には2,171トンだったのが、2021年には1万7,919トンと約8倍になり、2022年は1万7,548トン、2023年は1万5,216トン、2024年には1万9,373トンに達し、過去最高を記録したそうです。
中国の「台湾いじめ」とも言える禁止措置は、日本と台湾の深い絆をいっそう強める逆効果をもたらしました。
もっとも、日本にとって台湾は第2位の輸入先ですが、2023年統計ではフィリピンから14万8,657トン(90.57%)も輸入していて、その差はきわめて大きいという実情に大きな変化はありません。
とはいえ、今年も日本では台湾産パイナップルが学校給食に提供され、共同で大量購入するなどでその輸入量は着実に伸びていて、一時のブームでは終わらなかったようです。
◆茨城県の水戸市、石岡市、大子町、笠間市、守谷市の5市町が共同購入
茨城県笠間市は2018年2月に2020年東京オリンピック・パラリンピックのホストタウンに登録し、同年8月には台北市内に「台湾交流事務所」を開設。
台湾事務所開設一周年を迎えた2019年7月24日、台湾の農業委員会農糧署と「食を通じた文化交流と発展的な連携強化に関する覚書」を締結し、笠間市内の全小学校、中学校、義務教育学校の給食に台湾産バナナを提供するようになりました。
その後、バナナのほかにマンゴーやブンタン(文旦)も提供し、2022年からは台湾産パイナップルも学校給食に提供されるようになりました。
今年も、茨城県の水戸市、石岡市、大子(だいご)町、笠間市、守谷(もりや)市の5市町では共同で285箱、1,896個、約3トンの台湾産パイナップルを購入し、92校の小・中学校に供給されたそうです。
◆八王子市では黒須元市長が1.5トンを市内の全中学校の給食に提供
東京都下の八王子市でも、市内の38か所全ての中学校で5月9日と10日、高雄市で生産されたパイナップルが提供されたそうです。
これは、2006年11月に当時の八王子市長だった黒須隆一(くろす・りゅういち)氏が高雄市と「友好交流都市協定」を結んでいますが、市長を退任して現在は台湾友好交流協会理事長をつとめる黒須氏が高雄からパイナップルを約1.5トン買い付け、それを八王子市に寄贈し、八王子市内すべての中学校に提供して実現しているそうです。
3年前から続けているそうです。
八王子市教育委員会も給食を通じて台湾の魅力を知り関心を高めてもらおうと、高雄の場所や八王子市と高雄市の姉妹都市交流の歴史、台湾のパイナップルが食卓に届くまでのプロセスなどを説明し、八王子市内の中学生たちに台湾や高雄市との交流の歴史を学ぶ糧にしているそうです。
◆富良野市では富良野日台親善協会が購入希望を取りまとめ約3トンを購入
北海道の富良野市は2024年8月に台南市と「友好交流協定」を結びました。
締結は、2021年3月に中国が台湾産パイナップルの禁輸措置を行った際、富良野地域日台親善協会がいち早く購入支援に動いたことが主なきっかけだったそうです。
その後も台南市との協定で「双方の地方創生や、観光や特産品などのマーケティングの促進に資する取組」を謳っていることから、このほど富良野日台親善協会が購入希望を取りまとめたことを受け、富良野市が台南市に約3トンを注文。
5月15日に台南市で生産された高級品種の金鑽(きんさん)パイナップルが出荷されたそうです。
◆台湾産パイナップルの申し込みが年々増える理由
本会も2023年から台湾産パイナップルを案内しはじめ今年で3年を迎えましたが、年々お申し込みが増えていっていますので、台湾産パイナップルが日本で定着していることを実感しています。
本会が取り扱っている台湾産の金鑽パイナップルは、芯まで食べられるのが最大の特徴です。
果肉も柔らかくてみずみずしく、苦みやえぐみもありません。
トゲトゲも痛くなく、取扱いが至って楽です。
冷凍庫に保管しておけば、1ヵ月後でも2ヵ月後でも、切ったときと同じ新鮮なまま召し上がっていただけます。
いいことづくめの台湾産金鑽パイナップル。
ただ、大きさが約1kgくらいから大きいものは1.8kgとまちまちですので発送業者泣かせなのですが、ライチやマンゴーと同じようにコールドチェーン化も進み、瑞々しい新鮮なパイナップルをお届けできるようになりつつあり、まだまだ伸びしろは大きいようです。
学校給食などを通じて広がることをおおいに期待したいものです。
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