日本は順位5つ下げる─コロナ時代に最も安全な国ランキング (訂正)【ブルームバーグ:2020年12月22日】https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-12-21/QLO1ZXT0G1KZ01
冬の訪れと待たれていた新型コロナウイルスワクチンの接種開始が、ブルームバーグがまとめる新型コロナ時代の世界で最も安全な国・地域の番付であるCOVIDレジリエンス(耐性)ランキングに変化をもたらした。
経済や社会に最も痛手が少ない形でコロナに最も効果的に対応している国・地域を特定するため、ブルームバーグは毎月データを算出する。
国境を閉ざしワクチン契約を確保、国内の感染拡大封じ込めに成功したニュージーランドが12月も1位を維持した。冬の寒さ到来で前回上位だった日本や韓国が苦戦する中、台湾が2位に浮上した。
冬の厳しさで人々は密になり得る屋内で過ごすことが増え、ロックダウン(都市封鎖)を行わずに感染拡大を抑え込もうとしていた国々が脅かされている。11月に2位だった日本は7位となり、韓国とスウェーデンも順位を下げた。経済への影響を最小限にして感染を抑制しようとするアプローチには、圧力がかかっている。
北半球の冬は欧州と米国の厳しい状況をさらに悪化させた。米国はメッセンジャーRNA(mRNA)技術に基づくワクチン2種をいち早く承認したにもかかわらず、ランキングは19位下げた。
メキシコは最下位の53位にとどまっている。検査陽性率の低下やワクチン確保の動きによって他国・地域との差は縮まりつつあるものの、感染者数は依然として多い。
今月に入って一部の国で接種が始まったワクチンの影響はさらに複雑だ。
ブルームバーグCOVID耐性ランキングは経済規模が2000億ドル(約20兆6900億円)を超える53の国・地域を、感染者の増加ペースや全体の致死率、検査能力、国内医療体制の能力、ロックダウンのようなコロナ関連の行動制限が経済にもたらす影響、移動の自由など10の主要指標に基づいてランク付けした。12月の番付ではワクチンの契約に基づく供給数が明確になったため、関連指標を人口に対してワクチンが行き渡る割合のスコアに修正した。
◆ブルームバーグCOVID耐性ランキングの補足説明
英国はファイザーとビオンテックが開発したワクチンの緊急使用を世界に先駆けて今月前半に認めたが、ランキングは11月から2段階下がった。契約済みのワクチンは人口の3倍近くの接種に十分なものの、配布は始まったばかりで、歯止めのかからない感染拡大でロンドンと周辺地域はクリスマスが終わるまでロックダウンされることになった。
米国のランキング急低下はワクチン依存戦略のリスクを示した。同国はワクチン2種をいち早く承認し数十万人規模の国民への接種を開始したが、41秒に1人がコロナで死亡し多くの州では病院が能力の限界に近い状況にあるなど、事態の改善につながっていない。
また、米国が確保したワクチンは人口の154%分にとどまり、この割合はカナダや欧州連合(EU)に比べ少ない。年内には2000万人分の供給があるとしているものの、配布状況は州によってばらつきがあるとみられ、国民の広い層に接種が広がるのはまだ何週間も先のことと思われる。
来年1月の耐性ランキングでは、ワクチン接種でどの程度素早く感染拡大を抑えられるかが焦点になる。
最新ランキングでほかに目立ったのは、オーストラリアとシンガポール、フランス、ナイジェリア、イラク、フィリピンが順位を上げたことだが、いずれも制限の緩和を伴っていた。
一方で大きく下げたのはギリシャ、インドネシア、トルコ。感染者と死者が過去最多を更新し、新たに一段と厳しいロックダウンを導入せざるを得なくなったドイツの順位も低下した。中国とインドは人口の多さから、国民のワクチン確保で他の国以上の困難に見舞われるもようで幾分下げた。
◆共通点
米国やインドなど世界で最も優れた民主主義国家の一部が後れを取った一方で、中国やベトナムなど全体主義的な国家が新型コロナウイルス抑え込みに成功したことは、民主的な社会がパンデミック(世界的大流行)への対応に適しているのかという疑問を投げ掛ける。
しかし、ブルームバーグCOVID耐性ランキングはその疑問を否定する。11月も今回も、トップ10の大半は民主的な国・地域だ。悪影響を最小限に抑えて新型コロナを封じ込めることに成功している政府は、市民に命令し服従させる力によってではなく、高い信頼と社会のコンプライアンスを引き出すことによってそれを可能にしているように見受けられる。
市民が当局とその指針を信頼している場合、ロックダウンは不要かもしれない。日本と韓国、そしてある程度においてスウェーデンがこれを示した。ただ、厳しい冬の訪れが今、こうした比較的オープンなアプローチに問題を突き付けている。
ニュージーランドは最初から、コミュニケーションを重視した。同国の4段階の警戒システムは、感染拡大の状況に伴い政府がどのように、またどういう理由で行動するかを国民に明確に理解させた。
公衆衛生インフラへの投資も重要だ。20年より前には多くの場所でその価値が過小評価されていた接触追跡システム、効果的な検査が新型コロナ対応で上位にランクされる要因となり、健康に関する知識の普及が手洗いやマスク着用を社会に定着させる助けとなった。これが、経済に大打撃を与えるロックダウンを回避する鍵になったと、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長は指摘している。
メルボルン大学で世界疾病負担(GBD)グループのディレクターを務める アラン・ロペス名誉教授によればまた、社会的結束もこのパンデミックへの対応の成否を分ける要素だった。
「日本や北欧の社会を見ると、不平等がほとんどなく、非常に規律が行き届いていることが分かる」とロペス氏は述べた。「これが、国としてより結束した対応につながり、優れたコロナ対応ができた理由だ」と分析した。
◆米国のワクチン優位
米国から効果的な対応が見られなかったことが、今回のパンデミックで最も驚くべき展開の1つだった。超大国の米国が感染者数と死者数で世界最多となり、危機への対応は最初から出遅れていた。医療機器および個人防護具(PPE)の不足、検査と追跡システムにおける協調の欠如、マスク着用の政治問題化など不備が目立った。
トランプ米政権は予防よりも治療とワクチンを第一に重視した。「ワープ・スピード作戦」と銘打った取り組みの下、ワクチンを開発する製薬会社などに約180億ドルを配分した。一方、国内の各州は危機対応のための資金を求めていた。
ワクチン確保の指標では人口の5倍以上に十分な量を確保したカナダが依然トップ。オーストラリアとニュージーランドは人口の2倍以上分を確保、一方で台湾の割合は26%にすぎない。
人口に対するワクチン注文の割合に基づく新たなワクチンアクセス指標は、中国、インド、米国など人口の多い国が抱える大きな課題を反映する。中国とインドの注文あるいは製造能力は年20億回分を優に超えるものの、それでも人口の少ない国に比べ不利になる。
全体として、ワクチンアクセス指標は豊かな国の永続的な強さを浮き彫りにする。こうした国の一部はウイルス抑え込みに失敗しているが、それでもワクチン確保では優位だ。規模の比較的小さい新興国・地域の多くは国内での臨床試験実施やワクチン製造を請け負うことによって供給契約を確保した。
シンガポールのリー・シェンロン首相は11月にブルームバーグ・ニューエコノミー・フォーラムで、「大国は、場合によっては驚くほどの包括的な措置によって自分たちが第一にワクチンを入手することを確実にした」と指摘。「そのような政治的緊急性は理解できる。大国はある程度自分の言い分を通すのが現実だと思う」と語った。
◆これから
ブルームバーグCOVID耐性ランキングは53の国・地域の現在のランキングを示すものだが、ワクチンへのアクセスをランク付けすることによって各国経済の将来への展望も提供する。
いずれにせよ最終的な番付ではないし、ウイルスについてのデータの不完全さや危機の展開の速さを考えれば番付が固定されることは決してない。第1波を比較的うまく乗り切った国・地域も第2波、第3波に見舞われている。その時々の状況や純粋な運も結果を左右するが、これらを定量化することは難しい。
来年はワクチンの普及がさらに決定的な要素となることは確かだ。物流と保管、国民の不安と、課題は多い。しかし、新型コロナとの1年間の闘いを経て、政府も国民も感染拡大を抑える方法、影響を緩和する方法への理解を深めている。
順位はデータとともに変わっていく。ブルームバーグは事態の展開に伴い、毎月ランキングを更新していく。
原題:The Best and Worst Places to Be in Covid: U.S. Sinks in Ranking(抜粋) (ランキング表の43位をコロンビアに訂正します)
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