石垣・基隆間に545人乗り2万トンの定期フェリー貨客船「やいま丸」が年内就航

石垣市は本年中に、石垣市から約265kmの基隆市と間に週3便の定期フェリー航路を開く予定だ。

フェリーは石垣港を夜に出発すると、7時間後の翌朝には基隆港に到着するという。

これは、中山義隆市長の長年の夢であり、4選された2022年市長選での公約(石垣〜台湾の定期貨客船航路開設)でもあった。

ところが、今年6月、市が議会に提出した書類の日付や議会への説明などに誤りが発覚して不信任決議が成立。

中山市長は議会解散は筋が通らないとして自動失職を選ぶ。

自由民主党石垣支部は満場一致で中山氏を市長選の候補者に決定し、5度目の市長選に挑んだ中山氏は8月17日に当選する。

「5期目も選挙で掲げた公約をしっかり進める」と述べ、台湾との定期貨客船航路開設を急ピッチで進めると宣言している。

すでに新たに設立された株式会社「商船やいま」(大濱達也社長)は、かつて東京─那智勝浦─高知航路を航行していた「さんふらわあ くろしお」を取得し、新たに「やいま丸」と命名して運航することを進めており、石垣市役所には「石垣・基隆定期フェリー航路開設準備課」も設けられ、航路開設までサポートする体制を確立していた。

「やいま丸」はパナマ船籍で2万1535総トン、全長160m、全幅25m、旅客定員約545人。

貨物の積載能力は乗用車70台と8トントラック150台を積むことができるという。

中山市長は、コストと輸出、安全保障の3点から定期貨客船のメリットを強調する。

コストとは日本本土から商品購入の際に高い運賃を払っているが、台湾からなら低コストで輸入できること、輸出とは石垣牛をはじめさまざまな特産品を出荷できるようになること、安全保障とは台湾との経済交流で台湾有事に対する抑止力が高まることだという。

無事の就航を祈りつつ、下記に石垣と基隆(きいるん)を結ぶ定期フェリー貨客船「やいま丸」の年内就航を巡る記事をご紹介したい。


「日本最南端の国際フェリー」年内就航へ! 石垣島─“台湾”の新航路 そもそもなぜそこにフェリーを? 深水千翔(海事ライター) 【乗りものニュース:2025年10月13日】https://www.msn.com/ja-jp?bv=midlevel

「日本最南端の国際旅客フェリー」と銘打つ新しい航路が誕生しようとしています。

沖縄の石垣島(石垣市)と、台湾北部の基隆(キールン)を結ぶ航路です。

2025年9月の就航予定などと報じられていましたが、いまどうなっているのでしょうか。

この航路は石垣市と台湾の物流企業・華岡集団(ワゴングループ)が提携し、新会社である商船やいま(Yaima Line)が運航します。

同社はすでに中古フェリーの「やいま丸(YAIMAMARU)」を取得済み。

石垣市は「2025年内」の就航を目指すとしたうえで、航路の開設が「観光産業の活性化とともに、新たなビジネスの創出にもつながる」と意気込みます。

「やいま丸」は1997年に三菱重工業下関造船所で竣工。

もともとブルーハイウェイライン(現・商船三井さんふらわあ)が東京─那智勝浦─高知航路へ投入した「さんふらわあ くろしお」です。

4年後に同航路が廃止された後、韓国パンスターグループが取得し、2002年から大阪─釜山(韓国)の「パンスタードリーム」として2025年まで活躍しました。

日台航路に就航すれば2度目の転身となります。

新航路の開設に当たり、同船を選んだ理由について石垣市の石垣・基隆定期フェリー航路開設準備課は、「整備の状況、燃費、サイドランプなどの改修有無など、さまざまな事情を総合的に考慮した結果、当時のマーケットに出ている複数の候補船の中から『パンスタードリーム』が最良であると判断した」と説明しています。

同市の資料でも「船内設備の状況も良く、大幅な改修は不要であり、燃費も良い」とメリットを強調しています。

「やいま丸」のスペックは2万1535総トン、全長160m、全幅25m、旅客定員約545人、船籍国はパナマです。

貨物の積載能力は180TEU相当で、乗用車70台と8トントラック150台を積むことができます。

石垣市によると、デッキプランについては船内の改修を行っているため、改修が整い次第発表を予定するとのこと。

カラーデザインは白をベースとしつつ、ファンネルマークや喫水線付近などは青色とし、船体側面には大きくマンタと「Yaima Line」の文字を描きます。

◆「赤字補填はしない」と市

石垣島と台湾を結ぶ航路は以前から構想があり、2016年前後にはワゴングループの東聯航運(ユニワゴン)が高速フェリー「ナッチャンレラ(麗娜輪)」で石垣─花蓮(台湾)航路を運航しようとしていました。

もっとさかのぼると、名古屋から台湾へ向かう有村産業の「クルーズフェリー飛龍21」が寄港していたこともあります。

石垣市は航路開設の背景について、「リーディング産業である観光業のさらなる発展と、本市全体の持続的な経済成長につなげていくため」としています。

「2023年5月に新型コロナの感染症法上の取り扱いが5類感染症に移行されて以降、多くの観光客の姿が見られ、街に活気が戻ってきた。

海外からの入域観光客数の大半を占める台湾からの誘客や企業誘致などを一層推進する必要があることから、『石垣・基隆定期航路フェリー開設に係る検討委員会』を設立した」(石垣市)

市は「石垣・基隆定期フェリー航路開設準備課」を立ち上げ、運営主体となる新法人(商船やいま)の設立から航路開設までをサポートする体制を確立しているといいます。

「やいま丸」の購入にあたっては「石垣港・基隆港定期航路開設支援事業」として国の沖縄離島活性化推進事業費補助金が活用されており、市の負担分に関しては全てふるさと納税で支出する予定です。

一方で赤字補填や運営費の補助に関しては支出しないと説明しています。

収益面ではフェリーの強みを生かし、旅客輸送だけでなく、貨物を積載することにより安定的な運航を目指しています。

石垣市は「検討委員会でのビジネスプランだけでなく、どのようなプランが費用対効果として最適なのか調査を行っている。

また、貨物については、国内企業の誘致や新規航路開拓による貨物需要創出に関して台湾企業とも調整している」と回答しました。

このほか、同市独自の施策として、市民へのパスポート取得助成や観光客に対する地域クーポンの創設などの支援が計画されています。

◆台湾側が提案する「もう一つの寄港地」

石垣市はまた、「輸送コストの上昇などに直面している各業界の事業者が、台湾から良質な資材を低コストで仕入れられるようになるなど、離島特有の不利性解消や八重山エリアにおける経済の振興に大きく寄与する」と、貨客船であることのメリットを強調しました。

「文化交流を含め海外からのヒト、モノ、アイデアを積極的に呼び込み、持続的な発展の基礎となる生産性向上やイノベーションの促進、雇用機会の創出などを期待している」(石垣市)

一方、台湾の交通部航港局も「基隆と石垣の両港は距離が近く、台湾製品を石垣島へ輸出する機会が増え、両国の貿易が促進される可能性がある。

また、同航路により日本国内の旅行客が石垣島経由で台湾を訪れることも期待され、台湾に観光効果をもたらすと同時に、台湾住民の日本旅行の選択肢が広がり、双方向の観光発展が創出できる」と歓迎しています。

さらに葉協隆局長は台湾東部の蘇澳(スーアオ)港にクルーズ船向けターミナルを整備したことに触れ、より多様な航路を提供するため、蘇澳港への寄港を提案しているといいます。

石垣市と蘇澳は30年来にわたり姉妹都市として提携してもいます。

石垣─基隆航路は2025年内に開設され、週3便の運航となる予定。

現時点で「やいま丸」に2船目の投入する考えはないとのことです。

石垣市は「定期航路の開設により、石垣島と台湾がつながり、さらには台湾からその先のアジアへとつながることで、石垣島がアジアの玄関口として日本とアジアの架け橋になることを望んでいる」と新航路への期待を示しています。

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深水千翔(海事ライター)1988年生まれ。

大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。

現在はフリーランスの記者として活動中。

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