【祝】 熊本県と屏東県が1月下旬に「交流促進MOU」を締結

 鹿児島県の塩田康一(しおた・こういち)知事は1月4日に年頭記者会見を開き、1月20日から22日まで屏東県(周春米・県長)を訪問し、青少年や芸術・文化、観光、経済などの分野で交流を促進するMOUを結ぶと発表しました。

 MOU(Memorandum of Understanding)は、同意している基本事項をまとめ、今後の方向性を決めるために取りまとめる同意書・覚書のことで、法的拘束力は持たないとされています。

 しかし、2013年9月に熊本県と熊本市は高雄市と「国際交流促進覚書」を結びましたが、その後も物産展の開催やマラソン交流などの交流を行い、覚書の期間満了に伴い、2017年1月11日に「友好交流協定」を締結しています。

 中には、ワインやウイスキーの醸造業が盛んな北海道余市町(よいちちょう)が昨年5月18日に彰化市と「友好交流に関する覚書」を結びましたが、それから2ヵ月ほどしか経っていない7月21日に「友好交流協定」を調印したという例もあります。

 日台間では、双方の国民性を反映するように、覚書であっても正式な協定を結んでいるような交流を続けている例が多く、また、覚書から協定締結に至ることが少なくありません。

 塩田知事の記者会見で配布された資料「台湾屏東県とのMOU締結について」では、3年前の2021年4月に鹿児島で開催した「屏東県物産展」・「台湾文物展」以降の屏東県との交流について記していましたが、実利を伴った立派な都市間交流となっているようです。

 このような交流に目をつけたのが台北駐福岡弁事処の陳銘俊・総領事だったそうで、塩田知事は陳総領事のバックアップがあったことについて言及していました。また、防衛庁長官や通産大臣などをつとめ、日華議員懇談会会長も長年つとめた故山中貞則(やまなか・さだのり)衆議院議員が鹿児島出身であり、台湾の台北第二師範学校を卒業後は屏東県で教師をつとめていたご縁についても触れていました。

 ちなみに、山中氏は鹿児島県曽於(そお)市の出身で、勤めていた里港國民小学校の創立100周年の際にYAMAHAピアノを寄贈していますが、山中氏を縁に曽於市は、昨年(2023年)5月16日に屏東県里港郷と「国際交流促進に関する覚書」を締結しています。

 日台間では交流に尽力した先人が架け橋となる例も少なくありません。

 その典型的な例は山本悌二郎(やまもと・ていじろう)です。

 昨年(2023年)年7月に佐渡市と高雄市は「友好交流協定」を締結しましたが、架け橋となったのは、佐渡出身で台湾製糖社長や農林大臣などをつとめた山本悌二郎(やまもと・ていじろう)で、この山本の銅像を制作したのは台湾の著名な彫刻家の黄土水。この銅像が佐渡市から高雄市に返還された一昨年7月、これを機に佐渡市と高雄市は「友好交流覚書」を締結。さらにその1年後、銅像のレプリカが完成し、佐渡で行われたレプリカの除幕式を機に「友好交流協定」の締結に至っています。

 山中貞則や山本悌二郎など政治家や実業家以外も、僻地医療に従事していた台湾人医師や台湾人子弟の教育に熱心だった日本人教師など多くの例を見ることができます。

 なお、鹿児島県が予定通り屏東県と「交流促進MOU」を結べば、本年初の日台間の都市間提携となり、1979年10月の青森県大間町と雲林県虎尾鎮の「姉妹町」締結以来、132件(本会調査)となります。

 下記に、塩田知事の記者会見の動画、記者会見の配布資料、奄美新聞の記事をご紹介します。

◆塩田康一知事の年頭知事記者会見:1月4日、午前11時〜正午、県庁5階記者会見室 https://www.pref.kagoshima.jp/aa02/move/1ch/chijikaiken060104.html

◆鹿児島県「台湾屏東県とのMOU締結について」:1月4日 https://www.pref.kagoshima.jp/aa02/chiji/kaiken/r05/documents/110591_20240104171350-1.pdf

—————————————————————————————–台湾屏東県とMOU締結へ 塩田知事、今月下旬に訪問【奄美新聞:2024年1月5日】https://amamishimbun.co.jp/2024/01/05/47951/

 台湾と鹿児島県の交流は、西郷隆盛と愛加那の長男・西郷菊次郎が初代庁長を務めた歴史的なつながりから宜蘭県と行われているが、台湾最南端の屏東県との交流にも乗り出す。今月下旬に塩田康一知事が訪問し、MOU(包括協定)の締結を計画している。

 4日に県庁であった年頭会見で塩田知事が発表した。屏東県(行政区分としては日本の県に相当、1市3鎮29郷で構成)は三方が海に面し、漁業が盛んなほか、トロピカルフルーツやコーヒー栽培などの農業も盛ん。総人口は81万9793人(2019年10月現在)。知事は「農業、水産業、観光を主要産業としているなど本県との共通点も多い」とした。

 県国際交流課によると、これまでの両県におけるPRイベントは▽21年に県庁で「屏東県物産展」・「台湾文物展」を開催▽22年に山形屋(鹿児島市)での物産展で屏東県を紹介するパネル展及びPRブースを設置▽21、22年度に「屏東クリスマス」への出展(鹿児島県PRブース)▽21、23年度に「屏東・日本友好感謝祭」への出展(県PRブース出展のほか、開会式典で塩田知事メッセージ動画を上映)─がある。また、23年9月には屏東県の周春米知事一行が県庁を表敬訪問、両県の今後の友好交流について懇談した。

 塩田知事と県庁職員の屏東県訪問は今月20〜22日の日程で。青少年や芸術・文化、観光、経済などの分野で交流を促進するMOUを結ぶ。知事は「訪問交流によってお互いを知ることができる。MOU締結により農林水産物の輸出促進(販路開拓)や観光客誘致を期待したい。(台湾との交流を)台北に近い北部の宜蘭県に続き南部まで広げたい」と述べた。

──────────────────────────────────────

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。