本誌ではこれまでヨーロッパの政府高官などの台湾訪問が多くなっていることに着目し、何度も訪問状況をお伝えしている。その背景には中国が自ら招いた反中感情があるとして、ウイグル族への人権弾圧や香港の一国二制度の形骸化、中国軍の急速な軍備拡張、投資やインフラ事業が期待したほど実現されていない「一帯一路」経済圏構想への幻滅などがあるのではないかと指摘してきた。
ヨーロッパからの政府高官などの台湾訪問の大きなきっかけは、2020年8月のチェコ共和国のミロシュ・ビストルチル上院議長やフジブ市長など代表団90人が訪台したことだった。それ以降、メディアも「台湾詣で」と評したヨーロッパからの政府高官などの台湾訪問が続いている。いまでもその勢いは衰えていない。6月だけでも下記のような状況だ。
6月18日、欧州議会の外務委員会議員で安全保障・防衛小委員会をつとめるリトアニア元国防大臣のラサ・ユクネヴィチエネ副委員長が団長をつとめる一行7名が23日まで台湾を訪問している。
同じ18日、ポーランドからも下院外交委員会副委員長を団長とする10名が22日まで台湾を訪問中だ。
また、リトアニアからも農業省のヴィテニス・トムクス副大臣が訪問団を率いて台湾を訪問し、6月14日に開催された「第1回台湾・リトアニア農業協力会議」に出席している。リトアニアからは、今年1月のカスチュナス国会安全保障防衛委員会代表、2月のカロリス・ジェマイティス経済革新省副大臣に続く3回目の訪問で、政府高官の訪問が相次いでいる。
6月14日には、イタリアからジャン・マルコ・チェンティナイオ上院副議長をはじめとする一行が訪問した。イタリア議会から台湾を訪問した人物として副議長はこれまでで最も高いレベルであり、イタリアの現政権発足後、国会のメンバーが台湾を訪問するのは今回が初めてだった。
6月11日から16日までは、米国のマシュー・ポティンガー元大統領副補佐官(国家安全保障担当)がシンクタンク「民主主義防衛財団」(Foundation for Defense of Democracies、FDD)チャイナ・プログラムのチェアマンとして訪台し、国防部、海巡署(海上保安庁に相当)、数位発展部(デジタル発展省)などを訪問し、国家安全保障戦略やサイバー・セキュリティのエコシステム構築などについて意見交換を行った。
6月にはまた4日から9日まで、スロバキアから経済省副大臣一行26名が訪問して「台湾・スロバキア経済協力委員会第3回会合」を行うなど、経済・貿易・投資、産業の連結とサプライチェーンの安全保障などの分野の協力関係について意見交換している。
台湾とヨーロッパの国々で国交を結んでいる国はない。しかし、副大臣クラスの高官が次々と訪台している。ドイツはすでに大臣も派遣している。
翻って日本は、副大臣が公式訪問したのは、安倍内閣時代の2017年3月、赤間二郎・総務副大臣が台北市内で日本台湾交流協会が主催する食品・観光イベントの開幕式に出席したときだけで、これが日華断交以降初の公式訪問だった。
新型コロナウイルスの影響もあったと思われるが、2017年以降の政府高官の「重要なパートナー」「大切な友人」とする台湾への訪問はいまだにない。
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