【黄文雄】安倍首相が習近平の生殺与奪の権を握っている理由−2

【黄文雄】安倍首相が習近平の生殺与奪の権を握っている理由−2

5月14、15日に北京で開催された「一帯一路」国際会議では、アメリカが代表団を送り、安倍首相も二階俊博幹事長を特使として派遣して習近平主席に親書を渡しました。これに対して、人民日報は6月4日、「中日改善改善に日本は具体的行動を」という記事を掲載し、日中関係を改善したいなら、具体的な政策と行動を示せと、かなり上から目線で「命じて」います。

● 中日関係改善に日本は具体的行動を

記事では、文部科学省が「銃剣道」を中学「学習指導要領」に入れたことや、台湾と日本の交流窓口の名称を「亜東関係協会」から「台湾日本関係協会」に変更したことなどを挙げて、「日本は歴史問題で小細工を繰り返している」などと批判しています。

さらに、「日本は東中国海で緊張をつくり、南中国海問題に干渉し、朝鮮半島情勢を刺激してエスカレートさせている。こうした行動の背後には中国と主権・権益を争う私利があり、改憲・軍拡につなげる魂胆もある。中国は、地域の安全における消極的要素になってはならないと日本に警告する」とまで論じています。東シナ海も南シナ海も、日本が緊張をもたらしているのだから、挑発をやめろと言っているわけです。

要するに、「一帯一路」に入りたいなら中国の言うことを聞け、ということをかなりあからさまに要求してきているのです。これだけでも「一帯一路」に参加することは、日本の国益を犠牲にしなくてはならないことだということがわかります。

安倍首相が「一帯一路」国際会議に親書を送り、また、条件次第では協力するという発言を行ったのは、むしろ習近平に対するリップサービスだと見るべきでしょう。もちろん、北朝鮮問題を解決するために中国を動かす狙いもあるでしょうが、それに加えて夏に行われる北戴河会議を念頭に、習近平に恩を売る目的があると思われます。

今年の秋に5年ぶりの中国共産党大会が開かれますが、習近平にとってもっとも重要なのがその人事です。チャイナ・セブンと言われる党中央政治局常務委員で、習近平と李克強の残留は確実視されていますが、残る席を習近平派で固められるかどうかが焦点となります。

それにより、習近平が完全に権力を掌握できるかどうか、あるいは抵抗勢力が増えて政権がレームダック化するかの分かれ目になるからです。

加えて、現在の党軍事委員会の副主席(主席は習近平)の2人は、胡錦濤が総書記のときに選ばれたのであり、党大会後、ここに自分の手下をもってこれるかどうかも注目となっています。

そして、党の長老たちが集まって、こうした重要人事をあらかじめ内々に決めるのが、夏の北戴河会議なのです。そのため、習近平としてはこれまでの実績をできるだけアピールしたいところです。そのために「一帯一路」国際会議を5月に開催したのです。

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