海上保安庁と台湾の海巡署が初の合同訓練

7月18日、海上保安庁(略称:海保 国土交通省の外局)と台湾・海洋委員会の海巡署がそれぞれの巡視船1隻を派遣し、千葉県の房総半島沖において初の合同訓練を行ったという。

快挙である。

この合同訓練は、1972年12月26日に作成した「財団法人交流協会と亜東関係協会との間の在外事務所相互設置に関する取決め」や2010年4月30日に交わした「団法人交流協会と亜東関係協会との間の2010年における日台双方の交流と協力の強化に関する覚書」に基づく。

特に、2017年12月20日に結ばれた「公益財団法人日本台湾交流協会と台湾日本関係協会との間の海難捜索救助分野の協力に関する覚書」(略称:日台海難捜索救助協力覚書)には、その第1項に「両協会は、海難事故発生時の迅速かつ効果的な捜索救助活動の確保を目的として、日台間における捜索救助分野全般の協力の推進に努めることとし、日本台湾交流協会は海上保安庁の担当部局に対し、また、台湾日, 本関係協会は海岸巡防署の担当部局に対して、それぞれ協力を要請する。

」とある。

今回の合同訓練はこの覚書に基づくが、それでも結ばれてから7年目にしてようやく実現できた。

中国が仕掛ける台湾有事はグレーゾーンからという見立てが米国などのシュミレーションで指摘されている。

このときに対応するのが沿岸警備に当たる台湾の海巡署であり、日本の海保だ。

海巡署も海保も、米国の沿岸警備隊(コースト・ガード)や中国の海警局にあたる。

ただし、米国も中国も軍の一翼を担っている点で大きく異なるものの、グレーゾーン対策の比重が増しつつある現在、その役割は大きい。

ちなみに、海保も海巡署も軍事任務に責任を負わないとされるが、有事の際には海巡署は海軍の指揮に入り、海保は防衛大臣の統制・指揮下に組み込まれる。

下記に紹介する読売新聞は「海保間の結束と現場での連携を強化し、中国が強引な進出を続ける東・南シナ海での不測の事態に備える狙いがある。

台湾有事への危機感が広がる中、訓練の定例化も目指す」と報じている。

ぜひ定例化して欲しいものだ。

◆公益財団法人日本台湾交流協会と台湾日本関係協会との間の海難捜索救助分野の協力に関する覚書 (2017年12月20日締結 略称:日台海難捜索救助協力覚書) https://www.koryu.or.jp/Portals/0/tokyo/MOU/20171220_0001.pdf


日本と台湾の海保が合同訓練、72年の断交後初…連携強化し不測の事態に備え【読売新聞:2024年7月18日】https://www.yomiuri.co.jp/national/20240718-OYT1T50265/?utm_source=webpush&utm_medium=pushone

海上保安庁と台湾海巡署(海保に相当)が18日、千葉・房総半島沖に互いの巡視船を出動させ、合同訓練を実施したことがわかった。

両機関による海上訓練は1972年の日台断交後初めて。

海保間の結束と現場での連携を強化し、中国が強引な進出を続ける東・南シナ海での不測の事態に備える狙いがある。

台湾有事への危機感が広がる中、訓練の定例化も目指す。

日台関係筋が明らかにした。

海巡署の巡視船「巡護9号」は先月21日に台湾南部・高雄を出港し、太平洋中西部の公海上で違法漁業に対する国際的な共同パトロールに参加した。

その後、補給などのため、今月10日から17日昼まで東京・お台場のふ頭に停泊していた。

日台関係筋によると、巡護9号は18日、横浜港を出た海保のヘリコプター搭載型巡視船「さがみ」と連携し、房総半島南端や伊豆大島に近い海域で合同訓練を実施した。

海難救助を想定し、情報共有や捜索海域の割り当て・調整などの訓練を通じて相互運用性の向上を図った。

海保は先月上旬、幹部らを非公表のまま台湾に派遣し、5月の就任から間もない張忠龍・海巡署長と懇談するなど交流を深めた。

海巡署の巡視船「巡護8号」も昨年8月、台湾当局の巡視船としては10年ぶりに東京湾に寄港した。

2017年12月には、日台の窓口機関同士で海難救助に関する覚書を取り交わし、海保と海巡署の相互協力を確認している。

一方、尖閣諸島(沖縄県)周辺で領海侵入を含む航行を常態化させている中国海警局は今年5月下旬、中国の陸海空軍などが台湾周辺で実施した合同軍事演習に初めて参加し、周辺海域で「法執行の巡視」などの演習を行った。

尖閣諸島周辺の海警船もこの間、台湾周辺の海域に複数展開していることが確認された。

中国は日本最南端・沖ノ鳥島(東京都)周辺を始めとする西太平洋でも、海洋調査や軍事演習を繰り返している。

先月中旬には日本の延長大陸棚「四国 海盆かいぼん 海域」内の北西部に小型ブイ(浮標)を設置した。

対中国を念頭に置いた各国海保機関の連携を巡っては、昨年6月に日米比がフィリピン北部近海で、先月も日米韓が日本海・舞鶴沖で、それぞれ初めての海上合同訓練を実施している。


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