沖ノ鳥島に「港」建設へ 中国の「岩」主張に対抗

【11月7日 産経新聞】

 政府は6日、日本最南端の無人島、沖ノ鳥島(東京都小笠原村)に港湾施設を設ける方
針を決めた。平成22年度予算に必要経費を計上し、調査や設計に着手する。沖ノ鳥島周辺
にはレアメタル(希少金属)などの海底資源が存在するとみられているが、中国政府は排
他的経済水域(EEZ=海岸から約370キロ)を設定できない「岩」だと主張している。
政府は沖ノ鳥島に調査・開発などの経済活動の拠点を設けることで「島」であることを内
外に示す構えだ。

 沖ノ鳥島は東京の南南西約1700キロの北緯20度25分、東経136度4分に位置する。満潮時
の高さ、幅ともに数メートル程度の2つの小島を環礁が取り囲む。船舶の接岸施設はなく、
上陸するには沖合に停泊し、ボートで島に近付くしかない。

 このため、政府は環礁部分に船舶が接岸できる港湾施設を建設し、島の護岸管理や海洋
調査の拠点とする方針。国土交通省は22年度予算の概算要求で「離島における活動拠点の
整備」のため、数億円規模の調査・設計費を計上した。海上自衛隊、海上保安庁、気象庁
の職員らが滞在する南鳥島とあわせ現地調査や概略設計を行う方針だという。

 沖ノ鳥島をめぐっては中国が今年8月、大陸棚拡張を協議する国連大陸棚限界委員会で
「人の居住または経済的生活を維持できない岩」と認定するよう求めた。現在、日本は沖
ノ鳥島の存在により、島周囲に国土面積(約38万平方キロ)を上回る約40万平方キロのE
EZを設定し、資源開発や漁業などの経済活動に関して主権的な権利を行使できる。これ
が「岩」とみなされると、EEZは設定できず、日本の権益は島を中心に半径約22キロ
(約1500平方キロ)の領海だけに制限されてしまう。

 中国は台湾有事への米軍の介入に対抗するため、制海権の防衛ラインとして南西諸島か
ら台湾に至る「第1列島線」を設定。さらに外側の小笠原諸島からサイパン、グアム島を
結ぶ「第2列島線」への進出を意図しているとみられ、沖ノ鳥島は要衝となる。すでに島
周辺海域での海洋調査を活発化しており、潜水艦の航行に必要なデータ収集も行っている
とみられている。

 それだけに沖ノ鳥島を経済活動の拠点と認定させる安全保障上の意義は大きい。同様の
観点から海上保安庁は19年、沖ノ鳥島に灯台を設置し、日本の主権が及ぶことを明確に
した。

 一方、前原誠司国交相は野党時代から「中国が沖ノ鳥島とその排他的経済水域の実効支
配を試みる可能性が否定できない」と繰り返してきた。


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