一般社団法人東京国際合唱機構(松下耕・代表理事)が主催する「第7回国際合唱コンクール」が7月25日から27日まで、都内・晴海の第一生命ホールで開催され、参加国は、日本、韓国、中国、台湾、インドネシア、ギリシャ、スペイン、タイ、フィリピン、香港などアジアを中心に多くの国や地域にわたっていました。
後援には、文化庁や中央区教育委員会、朝日新聞社などがついていますが、民間団体の催しです。
驚いたことに、開催中に中国側から主催者の東京国際合唱機構に対し、「台湾」ではなく「チャイニーズ・タイペイ(中華台北)」の名義を使用するよう要求があり、主催者側が台湾側に「コンクール会場に飾られている中華民国(台湾)の国旗を撤去し、名義をチャイニーズタイペイに変更する必要がある」と通告してきたそうです。
台湾はこれまで「台湾」の名で参加してきたそうですが、主催者側が中国の政治介入に屈してそのような通告をしてきたため、台北駐日経済文化代表処は合唱団に同行してきた立法委員(国会議員)とともに主催者と交渉。
しかし「主催者側は最終的に、台湾の合唱団の名義をチャイニーズタイペイに変更した上で、全ての参加国の国旗を掲げない決定を下した」(中央通信社)そうです。
最終日には台北駐日経済文化代表処の周学佑・副代表などが会場を訪れ、主催者側と交渉し、中央通信社は「司会者が団体紹介をする際に複数回にわたって『台湾』と言及するに至った。
ニーブーン合唱団の演奏後には、客席から『台湾、台湾』の歓声も上がった」と報じています。
主催者の一般社団法人東京国際合唱機構は設立趣意書において「本機構は、合唱の振興と発展のための国際的文化交流事業を行う」と文化事業であることを明記し、「本機構の全ての活動の拠り所は、真の世界平和、人間同士の信頼関係の構築」と謳っています。
ましてや、日本では公文書の戸籍にも台湾出身者は「台湾」と記されるようになっています。
戸籍でも「台湾」と表記される日本におけるコンクールであり、民間機構、それも文化事業であるにもかかわらず、こういう威圧的な政治行動に出てくる中国の横暴は許されることではありません。
主催者は設立趣意を説明し、中国に対しいささかも屈するべきではありませんでした。
ちなみに、今回のコンクールには台湾から「ニーブーン合唱団」や「八角塔男聲合唱團」など6組が出場しており、東京国際合唱機構のホームページの紹介では「ニーブーン合唱団(台湾)」「八角塔男聲合唱團(台湾)」など、「台湾」と表記して紹介していました。
もっとも、主催者側に訂正する時間的な余裕がなく、すでに閉会したことなので当初のままにしているのかもしれません。
しかし、コンクール最終日に司会者が台湾からの合唱団を「台湾」と紹介したことを考え合わせると、中国側へのせめてもの抵抗の証として残しているとも思えてきます。
中国の言い掛かりに対する主催者側の静かな憤りが残っているようです。
◆第7回東京国際合唱コンクールhttps://www.ticctokyo.icot.or.jp/
下記に、主催者と交渉した経緯などを台北駐日経済文化代表処の「台湾週報」が詳しく報じていますのでご紹介します。
駐日代表処が第7回「東京国際合唱コンクール」出場の台湾合唱団に対する中国による妨害に厳重抗議【台湾週報:2025年7月27日】https://www.taiwanembassy.org/jp_ja/post/105590.html
1. 中華民国(台湾)から「ニブン(Nibun)合唱団」、「南投県信義郷シナパラン(Sinapalan)国民小学校」、「高雄市桃源区興中国民小学校ブクラヴ(Bukulavu)児童芸術団」、「青韵合唱団」、「ナフイ・マトゥイ(Matui & Nahuy)児童合唱団」、「八角楼男声合唱団」の6つの合唱団が、7月25日〜7月27日に開催された第7回「東京国際合唱コンクール」に出場した。
開催期間中、中国は主催者に対し、会場から我が国の国旗を撤去し、出場名義を「台湾」から「チャイニーズ・タイペイ」(Chinese Taipei)に変更するよう要求した。
当代表処は、このような中国による強引な行為を厳正に非難する。
2.当代表処は昨日(26日)夕方、上記の情報を受け取った後、ただちに合唱団と同行来日した邱議瑩・立法委員(国会議員)と共に、主催者と交渉を行った。
「日華議員懇談会」の古屋圭司会長も、ただちに台湾のために声を上げた。
しかし、主催者は最終的に、我が国の合唱団の名義を「チャイニーズ・タイペイ」に一方的に変更し、すべての出場国の国旗を掲揚しないことを決定した。
3. 音楽は国境を越え、世界中の人々が楽しめる芸術であり、過去6年間、我が国の合唱団は「台湾」の名でこのコンクールに出場していた。
しかし今回、中国は悪意のある政治手段を用い、活動を政治的に干渉し、音楽を汚染し、台湾の国民感情を傷つけた。
当代表処はこの卑劣な行為を強く非難する。
また、主催者が中国の要請に部分的に屈し、台湾を紹介する際の名称を一方的に変更したことに対して、当代表処は深い遺憾の意を表明し、厳正なる抗議を申し入れた。
4. 当代表処の周学佑・駐日副代表と職員16名は当日(27日)会場へ赴き、台湾の合唱団を応援するとともに、中国側がさらなる策謀を企て、台湾の合唱団の公演を妨害することのないよう支援した。
5. 李逸洋・駐日代表は、「台湾と日本における互いの国民好感度は88%に達した一方で、中国に対して悪い印象を持つ日本人の割合が90%近くに達しており、日本の2025年版『防衛白書』には、中国の軍事拡張と侵犯を日本にとっての最大の戦略的挑戦として挙げている」と指摘した。
さらに、「台湾と中国が異なる国であることを最もよく理解しているのが日本国民であり、中国が乱暴な政治的手段を用いて台湾の合唱団に圧力をかけ、台湾名義で活動に参加できなくすることは、日本人の義憤を引き起こし、状況をエスカレートさせかねない。
中国の行動は逆効果であり、自らの欠点をさらけ出すだけだ」との認識を示した。
6. また、李代表は「台湾は高度な科学技術力および自由と民主主義を背景に、世界で最も人気のある国の一つとなっている。
合唱の分野でも国際的な賞をよく受賞しており、台湾の文化芸術は世界中で視聴されている。
台湾はますます世界から注目され、重視されるようになっている。
中国がどんな横暴な圧力をかけようとも、『台湾は台湾、中国は中国』という事実を決して変えることはできず、中国の目標が達成されることは絶対にない」と強調した。
国際大会で台湾を代表する選手たちに大きなプレッシャーがかかっていることに対して、李代表はその心情を痛感し、すべての国民と海外僑胞が力強い後盾となり、引き続き力強い支援を続けていく。
台湾は、今後も成長を続け、国際的な友人からの支持をさらに勝ち取れると信じており、チーム台湾がこれからも努力を続け、最高のパフォーマンスで台湾を世界に知らしめ、世界も台湾をより受け入れてくれることと確信している。
(E)
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