昨夜の北京冬季オリンピックの開会式を生中継するNHKの廣瀬智美アナウンサーは、日本の次に11番目に入場してきた台湾を「台湾です!」と紹介した。昨夏の2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の折にも、NHKは和久田麻由子アナウンサーが「台湾です!」といささか興奮気味に紹介していた。
もちろん、心配された場内アナウンスは、これまでのオリンピックと同じ「チャイニーズ��ぢタイペイ」とアナウンスされるとともに、台湾の選手団3人を先導するプラカードにも「チャイニーズ・タイペイ 中華台北」と書かれていた。
ただ、中国国営中央テレビ(CCTV)のアナウンサーは、中国の一部であることを強調する「中国台北」と呼んだと報じられている。
台湾の中央通信社は「正式な国名、中華民国でなく『チャイニーズタイペイ(中華台北)』という名称の使用を余儀なくされている」と、「チャイニーズタイペイ(中華台北)」という呼称で呼ばれるのは本意ではないと述べつつ「式典で中国の一部とのニュアンスが強い『中国台北』と呼ばれるのではと懸念されていたが、会場アナウンスは2008年北京夏季五輪と同様『中華台北』だった。また、中国国営中央テレビが中継で『中国台北』と呼称したのに対し、NHKは昨夏の東京五輪に続き『台湾』と紹介し多くの台湾人を喜ばせた」と報じている。
台湾の国際機関に加盟する名称は、世界貿易機関(WTO)には「台澎金馬個別関税領域」で加盟し、アジア開発銀行(ADB)や経済協力開発機構(OECD)、アジア太平洋経済協力(APEC)、そしてオリンピックやユニバーシアード競技大会などの国際スポーツ大会では「中華台北」で加盟している。
一方、「台湾」の名称で加盟している機関もある。アジア・太平洋マネー・ローンダリング対策グループ(APG)、世界選挙機関協議会、国際病院連盟、世界医師会などだ。また中華民国の名称で加盟している機関としてはアジア国会議員連合(APU)があり、中華民国が唯一、「中華民国」の名称で正加盟国として1965年に参加した国会議員を対象にした国際組織だ。
一つの政治実体がいろいろな名称で国際機関に加盟しなければならないのは、台湾の複雑な戦後史を物語って余りあるが、その原因をつづめて言えば、中国の「一つの『中国』原則」にあると言って過言ではない。米国や日本もその主張を承認していないにもかかわらず、中国が一方的に台湾を自国領と主張しているからに他ならない。
本誌ではこれまで何度も指摘してきたが、現在の中華民国は昔日の中華民国ではない。台湾省も福建省もない中華民国だ。いわば、中華民国=台湾としか言いようがない実態なのだ。
最終的な解決は、中華民国が国名を台湾や台湾共和国に変えること以外にないと思われる。ただ、その劇薬を使う前に、せめてオリンピックなどスポーツの世界では台湾の名称で参加できるようになるなど、台湾の人々が願う名称で参加を実現したいものだ。
—————————————————————————————–台湾選手団、日本の次に入場 NHKは「台湾」と紹介 北京五輪【中央通信社:2022年2月5日】https://japan.focustaiwan.tw/entertainment_sport/202202050001
(台北中央社)北京冬季五輪の開会式が4日夜、北京市の国家体育場(通称「鳥の巣」)で行われ、台湾選手団は日本の次となる全体の11番目で入場した。
中国の圧力を背景に、台湾は五輪をはじめ多くの国際大会への参加に当たり、正式な国名、中華民国でなく「チャイニーズタイペイ(中華台北)」という名称の使用を余儀なくされている。
この日も「チャイニーズタイペイ、中華台北」のアナウンスが流れると、旗手を務めたスピードスケート女子の黄郁[女亭]、アルペンスキー男子の何秉睿らの計3人が登場し場内を行進した。
今大会の開閉会式を巡り、台湾は当初、新型コロナウイルス対策などを理由に欠席を表明していたが、開幕4日前の1月31日には「国際オリンピック委員会(IOC)の度重なる求めに応じる」として参加する方針を示していた。
一方、式典で中国の一部とのニュアンスが強い「中国台北」と呼ばれるのではと懸念されていたが、会場アナウンスは2008年北京夏季五輪と同様「中華台北」だった。また、中国国営中央テレビが中継で「中国台北」と呼称したのに対し、NHKは昨夏の東京五輪に続き「台湾」と紹介し多くの台湾人を喜ばせた。
台湾選手団は総勢15人。スピードスケート、リュージュ、アルペンスキーの3競技に計4人の選手が出場する予定。
(呉協昌/編集:羅友辰)
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