国民党惨敗  傳田 晴久

傳田です。いかがお過ごしでしょうか。「台湾通信N0.90:国民党惨敗」を作成いたしましたの
で、お送りいたします。

 前号をお送りしてまだ10日しかたっておりませんが、昨日台湾で画期的なことが起こりましたの
で、何は置いてもお伝えしたいと思い、徹夜して作成いたしました(笑)。

 台湾在住の方は既にテレビや新聞でご存知のことですが、日本在住の方はまだご存知ないかもし
れません。これは台湾の政治を塗り替える出来事と思います。

 いつも台湾通信では、「お時間ある時にご覧ください」と書くのですが、今回は是非とも「直ち
にご覧ください」と書きたい気持ちです。よろしくお願いいたします。

                ◇   ◇   ◇

【台湾通信(第90回):2014年11月30日】

◆はじめに

 昨日(11月29日土曜日)、台湾では「九合一選挙」が行われ、驚くべき結果が出ました。我々の
予想を上回る結果、政権党の国民党が惨敗、野党の圧勝でした。

 私は政治評論家でもないし、情報網を持っているわけではありませんので、本格的な解説は今後
いろいろ報道されるであろうニュースや評論に期待して、速報と若干の期待を申し上げたいと思い
ます。それにしてもこれほどの結果になろうとは……。

◆驚くべき結果

 最も注目されていた直轄6都市の市長は野党勢力が5つ取り、国民党は現職朱立倫氏の新北市一つ
だけ、それも対立候補民進党の游錫堃氏に辛くも勝つという体たらくでした。

 投票前の予想では、国民党は新北市、桃園市はまず間違いなし、民進党は高雄市、台南市は間違
いなし、台中市と台北市をどちらが取るかということで、3対3で引き分け、否3対3では国民党の負
け、野党側が台北市を取ればむしろ勝利、台中市もとり、4つ取れたら大勝利の見通しでした。そ
れが台北市を圧勝(柯文哲氏)、台中市も圧勝(林佳龍氏)、さらにまず無理と思われていた桃園
市も圧勝(鄭文燦氏)したわけです。台南、高雄は予定通り民進党候補の圧勝ですから、直轄市の
市長選挙は国民党の完全なる惨敗と言ってよいでしょう。

 その他の同時に行われた地方政治のレベル別の各種選挙も国民党の後退は著しく、国民党主席で
ある馬英九総統の責任は厳しく問われることになるでしょう。開票途中、行政院長江宜樺氏は敗戦
の責任は国民党の政治にありとして、辞任を表明しました。

◆九合一選挙とは

 台湾通信No.88「国家の品格を取り戻そう」でご紹介いたしましたが、台湾の選挙は総統と立法
院委員(国会議員)を選ぶ国政選挙と直轄市や県市の首長並びに地方議会議員、里長村長を選ぶ地
方選挙があります。

 今回は9種類の地方選挙を同一日に行うので「九合一選挙」と呼ばれましたが、これで11,130人
の「地方公職」(首長、地方議会議員など)が選ばれました。その内訳は直轄市長6名、直轄市議
員375名、県市長16名、県市議員532名、郷鎮市長198名、郷鎮市民代表2,096名、村里長7,851名、
山地原住民区長6名、山地原住民区民代表50名です。

 この選挙は台湾史上最大の選挙と言われ、各メディアも大規模な報道体制を敷いて、報道しまし
た。投票は朝8:00開始、午後4:00に投票締め切り、直ちに開票が行われました。

◆直轄市市長選挙の結果

 今回の選挙で最も注目されたのは直轄市の市長選挙、中でも台北市の選挙でした。直轄市という
のは人口が125万人以上で、政治・経済・文化の発展に重要な都市で現在台北市、新北市、台中
市、台南市、高雄市の5市ですが、12月25日に桃園市の昇格が決まっています。

 最高権力者である総統は皆台北市市長の経験者ですから、この台北市の市長に誰が成るかは当然
注目の的です。市長の座を与党国民党が取るか、野党民進党などが制するかはもちろん、地方議会
の勢力がどのようになるかも重大関心事でした。

 結果は前述のとおりですが、詳細得票などは次のようになりました。候補者名・政党名の後ろの
数値は得票数、(今回の実績得票率)、(予測得票率)です。予測得票率は未来事件交易所が11月
18日に公表したものです。

台北市の結果  
柯文哲(無所属)  853,983票(57.16%) (52%) 当選
連勝文(国民党)  609,932票(40.82%) (45%)

 柯文哲氏は開票直後から終始リード、危なげなく当選を果たしました。いろいろな失言や中傷情
報が乱れ飛びましたが、見事に克服しました。

新北市の結果
朱立倫(国民党)  959,302票(50.06%)(57%) 当選
游錫●(民進党)  934,774票(48.78%)(44%) ●=方方の下に土

 游錫●氏は一時朱立倫氏をリード、6市制覇の希望を持たせてくれましたが、惜しくも破れまし
た。決定は開票の5時間後、終了直前でした。 

桃園市の結果
呉志揚(国民党)  463,133票(47.97%)(54%)
鄭文燦(民進党)  492,414票(51.00%)(46%) 当選

 両者互角、一進一退を繰り返して居りましたが、鄭文燦氏が予想を覆して、逆転勝ちを収めまし
た。

台中市の結果
胡志強(国民党)  637,531票(42.94%)(47%)
林佳龍(民進党)  847,284票(57.06%)(54%) 当選

 一時胡志強氏がリードする局面もありましたが、徐々に差が付き、最後は予想通りの結果、林佳
龍氏の圧勝となりました。

台南市の結果
頼清徳(民進党)  711,557票(72.90%)(63%) 当選
黄秀霜(国民党)  264,536票(27.10%)(36%)

 頼清徳氏は最初からぶっちぎりの独走、下馬評通り、大差で黄秀霜氏を下しました。相手が巨人
過ぎました。

高雄市の結果
陳 菊(民進党)  993,300票(68.09%)(57%) 当選
楊秋興(国民党)  450,647票(30.89%)(41%)

 陳菊氏も最初からぶっちぎりの独走、楊秋興氏を大差で下しました。高雄市民の心意気、ここに
ありを示しました。

◆県市の市長、議員選挙の結果

 自由時報紙(2014年11月30日)の統計によれば、直轄市を含む県市の市長選挙の結果は国民党6
名(27%)、民進党13名(59%)、その他3名(14%)県市の議員の数は国民党386名(43%)民進
党291名(32%)その他230名(25%)した。また、郷鎮市区長の数は、国民党80名(39%)民進党
54名(26%)その他70名(34%)でした。

◆里長村長選挙の結果

 里長村長は行政の最末端の長で、政治家というより、どちらかというとその地の世話人と言った
方々ですが、矢張り住民に一番近い所にいるわけですから、関心をもたれるのです。

 今回は今年の3月から4月に話題となった「ひまわり學運」の若い力が地方末端にヒマワリの種を
蒔く、「島国前進」を進めていましたが、その結果が見えるかもしれませんので、矢張り注目され
ていたわけです。

 その結果については、11月30日朝の時点では残念ながら報道されていないようです。やはり上位
のレベルの選挙結果が注目されるので、この時点ではまだ統計も出ていないということでしょう。
いずれ、発表されると思いますので、その時点でお伝えできるかと思います。

◆国政選挙への影響

 総統、立法院委員を選ぶ国政選挙は2016年、2年後に行われますが、今回の「九合一選挙」がそ
の前哨戦と見られていたわけです。結果は上記のとおり、国民党の惨敗、野党の圧勝に終わりまし
たが、詳しい内容分析、今後の予想、予測については専門家にお任せせざるをえませんが、素人
の、床屋談義としては、政権与党に対しては相当なダメージ、インパクトがあったことは間違いあ
りませんし、大いに2016年に期待が膨らむのではないでしょうか。

◆私が注目した結果

 今回の選挙で私が一番関心を持って見ていたのは、もちろん台北市、台中市、台南市、高雄市の
市長に誰が、どのくらいの票数で選ばれるかでした。

 特に高雄市の国民党候補者の小さな巨人と言われていた楊秋興氏、台南市の国民党候補者黄秀霜
氏、この二人は巨人現職(高雄市の陳菊市長、台南市の頼清徳市長)に挑んだわけですが、もちろ
ん国民党としては候補者を立てない訳にはいかなかったでしょうが、果たして市民のどれほどの支
持が得られるか、特に楊秋興氏に関しては元民進党員であってその後国民党に鞍替えした人です。
台湾人は忘れっぽいとか、政治音痴とか悪口がありますが、私は高雄の数字で、その正否を判断し
よう考えておりました。

 台北市の連勝文候補は連戦の息子です。連戦は台湾で「半山仔(ポアソアンナ)」と呼ばれる典
型的な人で、日本語にすれば「出戻り台湾人」とでも言おうか。すなわち、戦前に中国大陸に移住
し、戦後中国国民党と共に再び台湾に戻ってきた人の事で、台湾語が出来るために戦後国民党政府
内で重用され、高い位につき、金持ちになった。その大金持ちの息子が、台湾医大のドクターに、
しかも無党派に敗れたのであり、台湾政界に与えるインパクトは極めて大きいと言えます。

 もう一つの選挙、台中市の胡志強対林佳龍は台北市と同様国民党の牙城でしたが、ここも遂に国
民党は城を明け渡しました。勝利した林佳龍氏は苦節10年、10年磨1剣、遂に胡志強を追い落とし
たとTVや新聞は報道していました。

◆おわりに

 台湾の複雑な政治事情を変え、民主化を更に進めるための第一歩が踏み出されたのは確かと思い
ますが、問題は国政をどのように変えるかです。2016年に予定されている総統選挙と立法院委員選
挙で国民党を打ちのめして初めてその可能性が見えてくると思います。

 最大の問題は立法院選挙だと思います。現在の立法院(定員113名)の勢力図は与党国民党が65
名、野党47名、無所属1名で、立法院は国民党が多数を占めています。曾て民進党の陳水扁氏が総
統になりましたが、立法院は国民党が抑えているために、政策の遂行は困難を極めました。

 今回の里長村長選挙に打って出た「ひまわり學運」の若者たちの戦いについてもお伝えしたかっ
たのですが、残念ながら今回はできませんでした。

 2週間すると日本でも選挙ですね。偶然ですが、私は投票日の前日に一時帰国いたします。他人
の選挙もさることながら、今度は自分が投票する番です。


【日本李登輝友の会:取り扱い本・DVDなど】 内容紹介 ⇒ http://www.ritouki.jp/

*本会ご案内の書籍等は、4月1日発送分から消費税8%に対応する価格(送料を含む)となってい
 ます。5月1日から消費税対応価格の台湾食品をご案内しております。

*ご案内の詳細は本会ホームページをご覧ください。

●2014年・台湾ポンカンお申し込みフォーム【締切:12月5(金)】 *new
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/a0mm6tpx6wtx

★沖縄県や伊豆諸島を含む一部離島への送料は、1件につき1,000円(税込)を別途ご負担いただ
 きます。【2014年11月14日】

●台湾向け「りんご」お申し込みフォーム【締切:12月10日(水)】 *new
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/dn1z3wvoi8ma

●美味しい台湾産食品お申し込みフォーム【随時受付】 *new
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/nbd1foecagex

★沖縄県や伊豆諸島を含む一部離島への送料は、1件につき1,000円(税込)を別途ご負担いただ
 きます。【2014年11月14日】

・台湾点心セット 2,650円+送料700円(共に税込、冷凍便)*new
 *同一先へお届けの場合、2セットまで700円

・台湾産天然カラスミ 4,160円+送料700円(共に税込、冷蔵便)
 *同一先へお届けの場合、10枚まで700円

・パイナップルケーキ 2,480円+送料600円(共に税込、常温便)
 *同一先へお届けの場合、10箱まで600円

● 台湾ビール&フルーツビール【12本セット・24本入り】お申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/rfdavoadkuze

●書籍お申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/uzypfmwvv2px

・李登輝元総統特別寄稿掲載の別冊「正論」22号「大解剖『靖國神社』」
・李登輝著『李登輝より日本へ 贈る言葉
・浅野和生著『親台論─日本と台湾を結ぶ心の絆』
・江畑哲男・台湾川柳会編『近くて近い台湾と日本─日台交流川柳句集
・宗像隆幸・趙天徳編訳『台湾独立建国運動の指導者 黄昭堂
・小林正成著『台湾よ、ありがとう(多謝!台湾)
・喜早天海編著『日台の架け橋
・李登輝元総統対談掲載の月刊「MOKU」2013年9月号
・荘進源著『台湾の環境行政を切り開いた元日本人
・石川公弘著『二つの祖国を生きた台湾少年工
・林建良著『中国ガン─台湾人医師の処方箋』
・盧千恵著『フォルモサ便り』(日文・漢文併載)
・廖継思著『いつも一年生』
・黄文雄著『哲人政治家 李登輝の原点
・井尻秀憲著『李登輝の実践哲学−50時間の対話
・李筱峰著・蕭錦文訳『二二八事件の真相』

● 台湾・友愛グループ『友愛』お申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/hevw09gfk1vr

●映画DVDお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/0uhrwefal5za

・『台湾アイデンティティー
・『台湾アイデンティティー』+『台湾人生』ツインパック
・『セデック・バレ』(豪華版)
・『セデック・バレ』(通常版)
・『海角七号 君想う、国境の南
・『台湾人生
・『跳舞時代』
・『父の初七日』

●講演会DVDお申し込みフォーム
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/fmj997u85wa3

・片倉佳史先生講演録「今こそ考えたい、日本と台湾の絆」(2013年12月23日)
・渡部昇一先生講演録「集団的自衛権の確立と台湾」(2013年3月24日)
・野口健先生講演録「台湾からの再出発」(2010年12月23日)
・許世楷駐日代表ご夫妻送別会(2008年6月1日)
・2007年 李登輝前総統来日特集「奥の細道」探訪の旅(2007年5月30日〜6月10日)
・2004年 李登輝前総統来日特集(2004年12月27日〜2005年1月2日)
・許世楷先生講演録「台湾の現状と日台関係の展望」(2005年4月3日)
・盧千恵先生講演録「私と世界人権宣言─深い日本との関わり」(2004年12月23日)
・許世楷新駐日代表歓迎会(2004年7月18日)
・平成15年 日台共栄の夕べ(2003年11月30日)
・中嶋嶺雄先生講演録「台湾の将来と日本」(2003年6月1日)
・日本李登輝友の会設立総会(2002年12月15日)

● 李登輝元総統特別寄稿掲載の別冊「正論」22号「大解剖『靖國神社』」お申し込み
https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/uzypfmwvv2px


◆日本李登輝友の会「入会のご案内」

入会案内 http://www.ritouki.jp/guidance.html

入会お申し込み】https://mailform.mface.jp/frms/ritoukijapan/4pew5sg3br46


◆メールマガジン日台共栄

日本の「生命線」台湾との交流活動や他では知りえない台湾情報を、日本李登輝友の会の活動情報
とともに配信する、日本李登輝友の会の公式メルマガ。

●発 行:
日本李登輝友の会(小田村四郎会長)
〒113-0033 東京都文京区本郷2-36-9 西ビル2A
TEL:03-3868-2111 FAX:03-3868-2101
E-mail:info@ritouki.jp
ホームページ:http://www.ritouki.jp/
Facebook:http://goo.gl/qQUX1

●事務局:
午前10時〜午後6時(土・日・祝日は休み)

●振込先:

銀行口座
みずほ銀行 本郷支店 普通 2750564
日本李登輝友の会 事務局長 柚原正敬
(ニホンリトウキトモノカイ ジムキョクチョウ ユハラマサタカ)

郵便振替口座
加入者名:日本李登輝友の会(ニホンリトウキトモノカイ)
口座番号:0110−4−609117

郵便貯金口座
記号−番号:10180−95214171
加入者名:日本李登輝友の会(ニホンリトウキトモノカイ)

ゆうちょ銀行
加入者名:日本李登輝友の会 (ニホンリトウキトモノカイ)
店名:〇一八 店番:018 普通預金:9521417
*他の銀行やインターネットからのお振り込みもできます。