台湾防衛は「曖昧戦略」だったがトランプ政権は「曖昧戦術」へ  宮崎 正弘

台湾防衛を「明確な戦略」化け、ポンペオ国務長官の発言の意味【宮崎正弘の国際情勢解題:2020年9月11日】

 「台湾防衛法」が米議会に提出されたのは7月である。中国が香港安全法を施行したのが7月1日、トランプ政権は14日に香港特別待遇を撤廃し、制裁を発表した。米議会には台湾防衛を明確にする法案が陸続と提出された。下院議員の一部は「台湾は独立国だ」という議会決議を求める動きもある。

 米議会にいま、媚中派はいない。皆無である。

 過去40年、中国の軍拡は予算だけでも9倍に膨張し、空母2隻、ステルス戦闘機、米軍基地や空母を狙う中距離ミサイルを配備した。

 軍事覇者として君臨してきた米国が、その地位を脅かされていることに危機感を募らせているのである。

 米国の台湾政策は「曖昧戦略」と言われた。

 とくに「台湾を守るかどうかは土壇場まで曖昧にしておくことが、有効だ」と言い切っていたのがビル・クリントン政権だった。そのクリントンですら1995−96年の台湾ミサイル危機のおりには米空母2隻を台湾海峡へ派遣した。

 ポンペオ国務長官は、この曖昧戦略を「戦術」とグレードダウンした。

 日米はともに、「中国は台湾を不可分の領土である」としていることに「留意」するとしてきたが、米国は一方で「台湾関係法」(1979年)を制定し武器供与を続けてきた。

 トランプ政権になってからは「台湾旅行法」(これにより、アザー厚生長官の訪台が実現した)、「台北法」と続き、同時に台湾のWHO加盟を要求した。中国の操り人形と化したWHOからは脱退を宣言し、同時に台湾にはF16ジェット戦闘機、アブラハム戦車108両など合計133億ドルの武器供与を決定した。

 これによって安堵感を得たのが台湾企業でもある。

 ファーウェイ(華為技術)への最大の半導体サプライヤーとして知られたTSMCは、大量のチップを華為に供給したが、8月14日をもって終了した。

 以後はアリゾナ州に120億ドルを投資する新工場建設を発表した。まるでトランプの台湾防衛に御礼を言っているようなものである。

 米国議会の動きは、台湾防衛からさらに踏み込んで、台湾との国交回復を要求する声があがっている。

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。


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