『安倍晋三回顧録』。いきなり「売り切れ」になった  宮崎 正弘(評論家)

【宮崎正弘の国際情勢解題:2023年2月9日】

 大ベストセラーとなっている『安倍晋三回顧録』は各方面で話題を呼んでいる。産経新聞と読売は好意的に報じている。

 安倍首相は世界の指導者に言及し、「好戦的」な印象のトランプ前大統領は、実際には軍事行動に消極的だったこと、それを北朝鮮に見抜かれることを恐れたこと。

 秘話は習近平国家主席に及び、「もし私がアメリカに生まれていたら、共産党には入らなかっただろう。おそらく民主党か共和党に入っていただろう」と語ったそうな。習は「強烈なリアリストだ」と分析した。

 在任中に27回も会談したロシアのプーチン大統領は「クールな感じに見えるが意外に気さく」との評価だ。

 さて台湾での注目箇所はやはり李登輝元総統との交流の深さ、その親密ぶりである。

 台湾のメディアでも已に内容が詳しく紹介され、日本とは別の角度からの評価が拡がっている。

 『自由時報』(2月8日)によれば、「安倍首相は、1994 年に李登輝前総統と初めて会ったときの衝撃を振り返り、李登輝は間違いなくアジアの偉大な代表者であると語った」と紹介され、安倍首相は官房長官や総理大臣を務めた後、李登輝と何度も会談した経過も書かれている。

 安倍首相は1994年に自民党青年局次長として台湾を訪れ、李登輝総統と初めて会って衝撃を受けたと語る。李登輝の教育と演説、そして台湾の 2000 万人の国を守るという見解に深く感銘を受け、李登輝にオーラがあると感銘を受けた。

 1996年に青年局長として再び台湾を訪問し、その際にも中国を訪問する予定であったと述べ、李登輝氏は安倍首相に、「中国訪問時に台湾の民主化が着実に進んでいることを説明するように」求めたという秘話も書かれている。

 安倍首相はまた、2007年6月に李登輝が3回目の日本訪問時に兄の祀られた靖国神社に参拝した。ときの総理大臣は安倍晋三だった。

 李登輝は彼に「日本人はいったい何をしているのだ。日本人の精神を失ったのだろうか? 国に貢献した英霊は靖国(神社)に祀られている」と述べ、安倍首相は反論の余地はなかったと回想している。

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