バイデンは駐米台湾大使を就任式に招待していた  宮崎 正弘

 1月20日に行われたジョー・バイデン氏の第46代大統領就任式に、駐米大使に相当する台湾の駐米代表が初めて正式招待されていたことが分かった。

 駐米台北経済文化代表処の蕭美琴代表を招待したのは主催団体の大統領就任合同委員会(JCCIC)で、正式に招かれるのは1979年1月1日の米台断交以来初めてのことだという。これまでは「連邦議員の招待枠で出席していた」(産経新聞)と伝えられている。

 昨日の本誌で、国務長官に指名されたアントニー・ブリンケン氏が上院の公聴会において「台湾の国際参加については、構成員が国家と定められていない国際機関には参加すべきで、国家であることが条件となる機関でも、参加を可能にするその他の方法がある」と述べ、また、国防長官に指名されたロイド・オースティン氏も公聴会において「中国に台湾侵攻の決定を下させないために力を尽くす」と述べたことを紹介し、これでバイデン政権の台湾政策の一端がみえたと記したが、トランプ政権でも実現しなかった駐米代表を大統領就任式に正式招待したことにより、バイデン政権の対中国政策と対台湾政策はトランプ政権を引き継ぐ可能性が高まった。

 宮崎正弘氏も慎重な言い回しながら「バイデン政権の今後の中国政策を占う出来事」と評し、「台湾は米国の新政権を歓迎している模様だ」と指摘している。下記に「宮崎正弘の国際情勢解題」を紹介したい。

 台湾政府はバイデン政権になって米国の支持が得られなくなる可能性があることを懸念していた。バイデン政権への期待はふくらむが、昨日も指摘したように、バイデン大統領が外交・軍事戦略の指針となる「国家安全保障戦略」を発表し、国防総省が「国家防衛戦略」を発表するまで対中国・対台湾政策の全貌は判明しない。注意深く見てゆきたい。

—————————————————————————————–バイデンは駐米台湾大使を就任式に招待していた中国政策ではトランプ政治からの大幅な逸脱はなさそう【宮崎正弘の国際情勢解題:令和三年(2021)1月22日

 1月20日のバイデン大統領就任式に台湾の駐米大使・蕭美琴が招待されていた。肩書きは駐北米事務所代表だが、英文名刺はAMBASSADORだ。

 中国は厳重に抗議の意味をこめた声明をだし、同日、ついでにトランプ政権高官だった28名を「制裁」するとした。

 米国の中国制裁はウィグル弾圧の共産党員にくわえ、香港の民主活動家弾圧の責任者らを「制裁」したが、この内容は渡航禁止、在米資産凍結、銀行取引停止などで、具体的に効果がある。皆がなにがしかの形で米国に資産を保有しているからだ。

 対して中国の制裁は、アメリカ人にとって痛くもかゆくもない。在中国資産はないし、銀行取引停止といっても中国銀行のカードを保有してもいなければ、渡航禁止って、中国に行く必要がない。

 台湾大使の米大統領就任式列席は、主催団体の大統領就任合同委員会(JCCIC)が正式に招待したもので、1979年の断交以降で初めてのこと。これはバイデン政権の今後の中国政策を占う出来事である。

 トランプ政権は台湾旅行法,TAIPEI法、台湾防衛法を連続して成立さえ、台湾に肩入れしてきた。

 2020年にはアバー厚生長官、クラック国務次官を訪台させ、クラフト国連大使も台湾訪問を予定していた。急遽、国連大使の台湾訪問は中止になったが、台湾は国連に加盟していないから、重大な外交政策の変化なのである。

 訪台中止がきまるとクラフト大使は蔡英文総統に電話し、会話した。また台湾国会は「台湾の国連復帰を目標とする法案」を与野党一致で可決している。国民党は従来の原則から逸脱し、台湾独立色をはじめて滲ませたのだ。

 さてバイデンの大統領就任式に招待された蕭美琴・台湾駐米大使は蔡英文総統の側近。立法委員2期。与党の外交専門家としても知られる。彼女は日本の神戸で生まれ、父親はアメリカ人。台湾の政治的危機に発奮し米国籍を放棄して台湾へ帰国、政界に飛びこんだ異色の女性政治家。日本語もかなり流暢で、岐阜県の郡上八幡にホームステイの経験もある。

 彼女は「民主主義は台湾と米国ならびに自由主義国家間の共通の言語であり、自由はわれわれの共通の目標です。バイデン政権と協力し、相互の価値と利益を増進していけることに期待しています」とした。

 蔡英文総統もバイデン新大統領とハリス新副大統領に祝意を送った。台湾は米国の新政権を歓迎している模様だ。

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