台湾・陳建仁副総統「台湾がWHO加盟なら新型肺炎早期予防できた」

 収束する気配をいまだ見せず、拡がるばかりの武漢肺炎こと「COVID(コヴィット)19」。中国との往来も少なくない観光立国台湾では、感染者が格段に少ない。1月26日22時現在で32人しかいない。韓国の1261人、イタリアの400人、日本の175人(クルーズ船の705人と武漢から帰国の14人を除く)、イランの139人などと比べてみればよく分かる。

 本誌で王明理・台湾独立建国聯盟日本本部委員長が「台湾政府の武漢ウイルスに対する取り組み」で述べていたように、防疫対策の初動の早さと入国制限を躊躇なく実施するなど、果断ともいうべき対処が際立っている。

 そのため、蔡英文総統の支持率が急上昇し、2月25日付の毎日新聞は「民間団体『台湾民意基金会』が24日に発表した世論調査によると、蔡氏の支持率は68・5%。1月と比べ11・8ポイントも上昇した。政権発足時(16年5月)の69・9%に次ぎ、2番目に高い。感染対策では『80点以上』とした人が75・3%にのぼった」と伝えている。

 王明理氏が「SARS当時、衛生福利部部長(日本の厚労省大臣)として、対策全般を担当し、WHOからの情報を得られないにも関わらず、対策を考案し、封じ込めに成功した当時の立役者」と紹介した、公衆衛生学の専門家でもある陳建仁・副総統に産経新聞が単独インタビューしている。

 陳副総統は「武漢市での感染が『噂』程度だった1月2日、台湾の衛生福利部(厚生労働省に相当)が専門家会合を開き検疫や医療機関からの通報を強化した」と、早目の対応が奏功していることを明らかにしつつ、「医療従事者が感染した時点で市場が感染源なはずがない。人から人への感染は重大(な転換点)」と感染状況を見極めたポイントを指摘する。中国やWHOの不適切な対応にも言及し、台湾のWHO加盟を言外に訴えている。

 WHOは今回、中国の政治的圧力をはねかえし、2月11日・12日の緊急会合への台湾参加を容認した。台湾の武漢肺炎への取り組みを見ているWHOは今後、医療の空白地帯を作らないようにできるか、決断を迫られている。

—————————————————————————————–台湾・陳建仁副総統「台湾がWHO加盟なら新型肺炎早期予防できた」【産経新聞:2020年2月26日】https://www.sankei.com/article/20200226-ROIWEKHW3FNIXH7OZOXMHXIOJE/

 【台北=田中靖人】台湾の陳建仁副総統は26日、産経新聞の単独取材に応じ、中国湖北省武漢市を発生源とする新型コロナウイルスについて、台湾当局は中国より早い1月初旬に人から人への感染を前提に対策を始めたとした上で、「台湾が世界保健機関(WHO)に加盟していれば、より早期に感染予防措置を提言できた」と訴えた。

 中国の専門家が今回の肺炎が人から人に感染すると認めたのは1月21日だが、陳氏は武漢市での感染が「噂」程度だった同2日、台湾の衛生福利部(厚生労働省に相当)が専門家会合を開き検疫や医療機関からの通報を強化したと説明。「医療従事者が感染した時点で市場が感染源なはずがない。人から人への感染は重大(な転換点)で、台湾がもしWHOメンバーであったなら1月初旬に専門家を武漢市に派遣して警告を発し、隔離や治療の助言ができた」と述べた。

 また、「中国は感染が深刻になってから都市を封鎖するよりも、病院内のクラスター感染時に対処すべきだった。WHOも早期に専門家派遣や物資の支援をしていれば、全世界がここまで影響を受けなかった」として、中国とWHOの対応の遅れを指摘した。

 陳氏は公衆衛生の専門家で、2003年に台湾で重症急性呼吸器症候群(SARS)の院内感染が発生した際に指揮を執った人物。「SARSから多くを学んだ。台湾にはデング熱もあり、疾病管制署(CDC)は常に伝染病を警戒している」と当局の警戒水準の高さを強調した。

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陳建仁氏 南部・高雄生まれの本省人(台湾籍)系。台湾大卒、米ジョンズ・ホプキンズ大で理学博士。公衆衛生学の専門家で、2003年に台湾で重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した際、衛生署長(衛生相に相当)を務めた。技術振興を担う「国家科学委員会」(現・科技部)の主任委員(閣僚)や総統府直属の研究機関、中央研究院の副院長を経て現職。無党籍。カトリック教徒。68歳。

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