今回の武漢肺炎こと「COVID(コヴィット)19」へ台湾政府が厳格に取り組んでいることの一端は、湖北省からの入国を1月26日に制限、2月6日までに中国全土からの入国を制限したことによく表われている。翌2月7日には、外国人で過去14日間に中国滞在した人を入国禁止とし、台湾人は14日間の隔離観察を義務づけた。日本が未だに湖北省と浙江省のみを入国制限しているのとは対照的な措置だ。
台湾の厳格性がどれほどのものか、それを象徴するような対応が「ダイヤモンド・プリンセス」に隔離されていた台湾人19人と事前に派遣していた医師1人の台湾政府が派遣したチャーター機による帰台だった。
同船に乗船していた台湾人24人のうち、感染が確認された5人は日本の病院で治療中で、2月21日夜、桃園国際空港に到着した。
東京新聞は、機内では付き添いの医師や看護婦を含め全員が防護服と医療用ゴーグルを着けていた上「座席を離れるのはトイレでも禁止。約3時間のフライト中の失禁に備え、全員が紙おむつを着用した」と報じている。また1列に1人ずつ座り、乗客同士で話すことも禁じられたという。
この記事にもあるように「ウイルス検査を2回受けた上、さらに2週間の隔離を経る必要」があり、空港からその足で病院に移動して1次検査を受けていた。中央通信社の報道では「1次検査では全員が陰性だったと報告した。午後11時半に2次検査を行い、23日午後にも結果が判明する見通し」だという。
日本は2月19日に「ダイヤモンド・プリンセス」から下船した陰性の乗客をその場で解放し、公共交通機関などで帰宅させている。その結果、栃木県南部に住むという60代の日本人女性が帰宅後に発熱して22日に感染が確認され、陽性になっていたことが判明した。この女性は公共の交通機関を利用して帰宅していたという。
武漢肺炎は日本では感染拡大期に入ったとする見方も出ており、台湾と日本のあまりにも対照的というか、対応の違いに唖然とさせられたが、台湾の対応はこれに止まらない。
蔡英文総統も外交部もすぐ日本政府の協力に感謝するメッセージを表明し、蔡英文総統は22日午後、フェイスブックで、このミッションに関わった中華航空の乗組員や医療検疫スタッフ、 謝長廷代表などに感謝の意を表するとともに「日本政府の支援に感謝します。伝染病の予防と医療活動において、台湾と日本は引き続き課題を克服するために協力していきます。日本の患者とその家族が安全でありますように」(我也要謝謝日本政府的協助。接下來在防疫及醫療工作上,台灣和日本會繼續攜手合作,一起度過挑戰。祈願日本的病患及家屬也都能平安)とつづっている。
一方で台湾は2月22日、日本と韓国への渡航アドバイスを、従来の「レベル1・注意」から予防措置の強化を促す「レベル2・警戒」に引き上げたと発表している。
報道によれば「日本への警戒レベルを引き上げた理由について同センターは、14都道府県で感染者が確認されており、多くのケースが感染源が明らかになっていないほか、市中・院内感染の例が出ていると説明。韓国については、感染者数が急激に増加したことなど」を挙げているという。これも、武漢肺炎に台湾政府が厳格に取り組んでいる証左の一つだ。
アメリカ国務省も22日、日本を対象にした渡航情報を4段階でもっとも低い一般的な注意を呼びかける「レベル1」から、より注意を要する「レベル2」に1段階引き上げた。
—————————————————————————————–ウイルス漏らすな 厳戒帰路 クルーズ客向け台湾チャーター機東京新聞夕刊「国際(TOKYO Web) 」:2020年2月22日】
【台北=迫田勝敏】クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」から下船した台湾人乗客は21日夜、全員が羽田発のチャーター機で台湾に戻った。台湾は2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)で防疫の遅れなどで疑い例を含め180人の死者を出した苦い経験があるだけに感染防止は厳重で、機内で座席を離れるのはトイレでも禁止。約3時間のフライト中の失禁に備え、全員が紙おむつを着用した。
台湾に戻ったのはクルーズ船の乗客19人と台湾当局から派遣された医師1人の計20人。約150の座席がある機内は三つに区分され、前部は検疫で陰性だった人、後部に陰性でもせきなどがある人、最後部は機内で体調を崩した人に充て、1列に1人ずつ座った。全員が防護服を着用、マスクと医療用ゴーグルを着け、乗客同士で話すことも禁じられた。
チャーター機の台湾到着後、乗客の1人は無料通信アプリLINE(ライン)でテレビ局に「ようやく終わった。感動した」と伝えてきたが、乗客たちは1人1台で救急車に乗せられ病院へ。ウイルス検査を2回受けた上、さらに2週間の隔離を経る必要があり、長い旅はまだ終わらない。
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