昨日の本誌で、ドイツ連邦議会は10月2日、超党派の国会議員団6人、それも議会に議席を持つ6会派すべてから議員が1人ずつ参加する正式訪問団を台湾に派遣したことをお伝えしました。
団長は、社会民主党とともにドイツ二大政党のキリスト教民主同盟に所属するクラウス・ペーター・ウィルシュ議員で、6議員はいずれも「独台友好議員連盟」のメンバーだそうです。
10月3日、議員団が蔡英文総統と会談した際、ウィルシュ議員は「我々は(ウクライナと同様に)、台湾が武力による脅威を受けた時にはともに立って支援する」(朝日新聞)と述べたと報じられています。
共同通信も「軍事圧力を強める中国を念頭に『台湾が武力による脅威を受けたら、われわれは台湾を助け支援する』と強調した」と伝えています。
なんとも心強く、頼もしい発言です。
この発言の背景には、ドイツもその一員である欧州議会が香港での人権状況の悪化を理由に「香港における基本的自由の侵害に関する緊急決議案」を可決(2021年1月20日)したことや、今年6月、ドイツ・エルマウで開かれた先進7ヵ国首脳会議(G7サミット)において、中国の脅威に対して深刻な懸念を表明し「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」という文言が入った「G7エルマウ首脳声明」を採択したことなどが強く影響しているのではないかと思われます。
ちなみに、昨年6月にイギリスで開かれたコーンウォール・サミットでも「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」という文言が入った首脳声明が採択され、2年続けて同じ文言が入った首脳声明が採択されました。
この文言が出てきた背景には、安倍晋三・元総理が唱道した「自由で開かれたインド太平洋」構想があり、米国はじめG7や欧州各国が賛同しています。
また、ウィルシュ議員が「台湾が供給する半導体がなくなれば、全世界の工業にとって大きな問題となる」と指摘しているように、中国の脅威を取り除いて半導体を供給する台湾を守ることが各国の国益につながるとする実利的な判断もその背景にあるようです。
それにしても、ドイツ連邦議会訪台団による「台湾が武力による脅威を受けたら、われわれは台湾を助け支援する」という発言は、中国と一線を画すと宣言するような勇気ある発言です。これまで台湾を訪問した各国の議員で、ここまで明瞭に台湾への武力支援を明らかにした訪台団は初めてのことではないでしょうか。
—————————————————————————————–武力脅威なら「台湾支援」 ドイツ議員団、蔡総統と会談【共同通信:2022年10月3日】https://nordot.app/949578775413653504
【台北共同】台湾の蔡英文総統は3日、訪台したドイツの超党派議員団と総統府で会談した。団長のビルシュ氏は台湾への軍事圧力を強める中国を念頭に「台湾が武力による脅威を受けたら、われわれは台湾を助け支援する」と強調した。
中国外務省は同日、共同通信の取材に「中国は国家主権と領土の一体性を断固守る。台湾独立勢力と結託するのをすぐにやめるようドイツの政治家に促す」と反発した。
ビルシュ氏はロシアのウクライナ侵攻に触れて「激しい軍事攻撃にかかわらず、勇敢なウクライナ人は自らの国家と自由、民主主義を守っている」と強調。台湾とも連帯していく考えを示した。
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