このとき、台湾からの義捐金は200億円とも250億円とも言われ、日本人に「台湾」の存在を強烈に印象づけた。本誌で重点的にお伝えしているように、日台の都市間提携や鉄道提携、台湾への修学旅行などが急増したのはこの翌年からだ。
ただ、200億円とも250億円とも伝えられてきた台湾からの義捐金は、本当はいくらだったのか、どこから、どのくらいだったのか、その全体像は不明だったといってよい。ある種のもどかしさを感じていた人もすくなくないようだ。
ニッポン・ドットコム(nippon.com)編集部の高橋郁文(たかはし・いくとも)氏が台湾外交部発表資料を基にまとめ、昨日の「nippon.com」で発表したところによると、義捐金総額は253億円(1台湾元=約3.7円)だったと明らかにしている。
こういうまとめの作業はとても大事なことではあるものの、ともかく時間と根気を要する。高橋郁文氏の労を多とし、また改めて台湾の人々の真心に感謝の意を表しつつ、下記にその全文を紹介したい。
なお、本誌では今後、台湾から東日本大震災に寄せられた義援金は250億円または253億円と記すことにしたい。
データで見る東日本大震災の台湾からの義援金250億円 高橋 郁文(編集部)【nippon.com「シリーズ: 福島、元気です!」:2018年4月15日】https://www.nippon.com/ja/features/c04918/
東日本大震災が発生し、わが国が台湾など世界各国から多大な支援を受けたことは、日本で生きる人々にとって絶対に忘れてはならない。その中で、台湾の「200億円」という莫大(ばくだい)な義援金は、金額ばかりが独り歩きし、具体的な募金の実態については散発的にしか伝えられていない。
その理由として、長栄集団(エバーグリーングループ)会長・張栄発氏の巨額の支援に代表される個別の物語に報道のポイントが多く当てられ、総合的なデータに基づいたものが少ないことが考えられる。
台湾人の善意がどのような形で日本に送られ、震災復興に役立てられたのか。これは、支援した台湾人、それを受けた日本人問わず知りたい情報であり、シリーズ「福島、元気です!」にとっても、伝えたい重要なデータである。
東日本大震災から7年が経過した今、改めて台湾からの善意について、データから読み解いた。
◆台湾から届けられたのは総額253億円
台湾外交部が発表した東日本大震災に関する義援金などの資料によると、義援金は1)外交部や地方自治体などの政府機関からのもの、2)慈善団体や機関団体が集めたもの、3)長栄集団会長・張氏や日本台湾交流協会など直接日本に届けた個人や団体のものの3種に区別される。
2014年12月31日までに、1)からは7億6975万元(約28億円)、2)からは54億3145万元(約200億円)、3)からは6億5346万元(約24億円)、合計で68億5466万元(約253億円)に上る。
※1台湾元を約3.7円とし、台湾元を正、日本円は参考とする。
◆政府機関からの28億円とその行方
台湾の政府機関からは7億6975万元(約28億円)が届けられた。具体的な内訳や配布先は次の通り。
・外交部:5億666万元(約18億円)
1)日本赤十字社へ3億7000万元(約13億6900万円) 2)台北市松山区健康小学校から代理で宮城県石巻小学校へ14万1362元(約50万円) 3)中国佛教会から代理で福島原発殉職遺族見舞金500万元(約1850万円) 4)台北医学大学から代理で東北大学および東北福祉大学へ震災義援金139万283元(約510万円) 5)中華民国婦女連合会から日本赤十字社へ被災地復興のための支援金1000万元(約3700万円) 6)中華民国紅十字会を通じて日本赤十字社へ1億2013万8254元(約4億4450万円)
・内政部:192万元(約710万円) 外交部へ
・台中市政府:3485万元(約1億2890万円) 中華民国紅十字会総会へ
・新北市政府:6931万元(約2億5640万円) 1)日本台湾交流協会へ6868万4340元(約2億5410万円) 2)福井県美浜町へ63万4106元(約234万6190円)
・南投県政府:1112万元(約4110万円) 日本台湾交流協会台北事務所へ
・彰化県政府:621万元(約2290万円) 1) 現金606万5000元(約2240万円)、2)放射線量計測器2台(6万4000元[約23万6800 円])、3)マンゴー30箱とバナナ20箱(8万7000元[約32万1900円]) これらを宮城県へ
・台南市政府:5269万元(約1億9490万円) 宮城県仙台市へ
・高雄市政府:4045万元(約1億4960万円) 日本台湾交流協会高雄事務所へ
・雲林県政府:45万元(約160万円) 日本台湾交流協会台北事務所へ
・桃園県政府:576万元(約2130万円) 日本台湾交流協会へ
・南投県草屯町役場:90万元(約330万円) 中華民国佛教慈済慈善事業基金会へ
・南投県鹿谷村役場:283万元(約1040万円) 姉妹都市の福島県玉川村へ
・苗栗県政府:328万元(約1210万円) 外交部へ
・嘉義市政府:2010万元(約7430万円) 日本台湾交流協会高雄事務所へ
・交通部観光局:2227万元(約8230万円) 日本政府観光局へ
◆慈善団体などからの200億円とその行方
台湾の慈善団体などからは54億3145万元(約200億円)が届けられた。具体的な内訳や配布先は次の通り。
・中華民国紅十字会:25億7776万元(約95億円) 日本赤十字社へ(1)緊急救援と復旧活動金約5億8000万元(約21億円)、(2)災害復興計画約 20億元(約74億円)、 さらに(2)は 1)福島県新地町被災高齢者共同住宅に1億1000万元(約4億円) 2)福島県相馬市災害公営住宅「井戸端長屋」に約3690万元(約1億3650万円) 3)南三陸病院建設計画に約8億3000万元(約30億7100万円) 4)気仙沼市市民福祉センター「やすらぎ」に2億2400万元(約8億2880万円) 5)岩手県大槌町災害公営住宅と同町吉里吉里保育園の建設計画に約5億9160万元(約21億8890 万円) 6)岩手県山田町「日台きずな保育園」と「山田北小学校放課後児童クラブ」の計画に約1億 5500万元(約5億7350万円) 7)日本赤十字社への復興活動計画に約1370万元(約5060万円)
弱者支援活動に約1000万元(約3700万円)、 具体的には a.日本赤十字社岩手県支部の心理ケアサポートに約800万元(約2960万円) b.弱者支援活動に約300万元(約1110万円)
業務費に約1270万元(約4690万円)、内訳は 1)募金コスト約330万元(約1220万円) 2)業務執行コスト約940万元(約3470万円)
・財団法人台湾児童および家庭扶助基金会:5005万元(約1億8510万円) 義援金はチャイルドファンドジャパン、全国社会福祉協議会およびあしなが育英会に送られた。
・ワールドビジョン:3億5000万元(約12億円) ワールドビジョン台湾からワールドビジョンジャパンに送られた。
・中華社会福利聯合勧募協会:1億1209万元(約4億1470万円) 中央共同募金会(赤い羽根共同募金)に送られた。
・中華基督教救助協会:952万元(約3520万円) 基督聖協団に送られた。
・中華民国佛教慈済慈善事業基金会:22億445万元(約81億5640万円) 内訳は、震災初期では緊急支援として約3582万元(約1億3250万円)、震災中期では約19億8300 万元(約73億3700万円)、目的が変更され、フィリピンの災害援助計画に組み込まれた約1億 6500万元(約6億1000万円)、業務経費約2000万元(約7400万円)
・台南市美好社区関懐協会:41万元(約150万円) 仙台市に送られた。
・社団法人民主進歩党:8561万元(約3億1670万円) 日本赤十字社に送られた。
・財団法人佛光山慈悲社会福利基金会:2294万元(約8480万円) 宗教法人臨済宗日本佛光山・東京佛光山寺に送られた。
・社団法人台日国際扶輪親善会:5052万元(約1億8690万円) 「日台ロータリー親善会」の指定口座に送られた。
◆直接届けた個人や団体からの24億円
日本に直接義援金を届けた個人と団体からは、計6億5346万元(約24億円)が送られた。
・張栄発氏(長栄集団「エバーグリーングループ」会長):3億6380万元(約13億4600万円)
・中国信託慈善基金会:1億円
・台湾省佛教会、中華佛教比丘尼協進会、屏東県佛教会、新竹市佛教会:2247万元(約8310万円)
・松山慈佑宮:1100万元(約4070万円)
・中華民国工商協進会:643万元(約2370万円)
・路竹会:293万元(約1080万円)
・台湾区螺絲工業同業公会:4600万円
・日本台湾交流協会:2億2224万元(約8億2220万円、高雄市政府の4045万元[約1億4960万円]を 含む)
・前立法院長王金平氏:100万元(約370万円)
・中華民国基督教女青年会協会:300万元(約1110万円)
・高雄市佛教会:540万元(約1990万円)
・台北医学大学:139万元(約510万円)