「日台交流基本法」制定に期待  謝 長廷(台北駐日経済文化代表処代表)

「日台交流基本法」制定に期待  謝 長廷(台北駐日経済文化代表処代表)

 本誌9月2日号で、産経新聞が連載する「話の肖像画」は、9月1日から論説委員で元台北支局長の河崎真澄氏を聞き手に、代表就任5年目を迎えた謝長廷・台北駐日経済文化代表処代表を取り上げ、第1回は東京オリンピックをテーマに、謝代表との関わりなどを紹介していることをお伝えしました。

 9月12日の12回で、2016年5月に起こった台湾漁船の海上保安庁による拿捕(だほ)事件で台湾側が巡視船を出す一触即発の事態になったことについて触れ、謝長廷代表は「蔡政権が発足して、私が駐日代表に着任してからは台湾漁船の拿捕はゼロになりました」と述べるとともに、「正式な外交関係のない日本と台湾の間では、民間取り決めという形式をとらざるを得ません。ただ制度的にも、より明確な法的措置が日台間には必要ではないでしょうか」と述べています。

 それに続けて、日本に法的措置を取ってもらうよう粘り強く交渉したいと考えているとも述べていましたので、次は恐らく「日台交流基本法」に言及するのではないかと思っていました。

 案の定、13回では、謝代表が「『日台交流基本法』の制定をめざすのは、民間の関係であったとしても、日台双方が法的にしっかりした取り決めをする必要がある」と述べたことを伝えていました。

 自民党の国会議員でつくる「保守団結の会」(共同代表:高鳥修一・衆院議員、城内実・衆院議員、赤池誠章・参院議員)が今年の3月24日、参議院議員会館で謝長廷代表を講師に招いた勉強会を開き、李登輝元総統ご生誕日の1月15日を「日台友情の日」にすることや「日台交流基本法」の制定などに言及した「日台友情の更なる深化に向けた決議」を採択したことを冒頭で取り上げたことに続く発言として紹介しています。

 謝長廷代表は最後に「私が駐日代表でいる間に『日台交流基本法』の実現に向けた道筋がつけば、と考えています」と締めくくって、この法案制定の実現に強い意欲を示しています。

 すでに昨年10月26日、謝長廷代表も来賓として参加し、地方議員約300人でつくる全国日台友好議員協議会が主催して石川県加賀市で開催した「日台交流サミットin 加賀」では「日台の外交・安全保障政策を推進するため『日台交流基本法』を早急に制定すること」を掲げた加賀宣言が可決されています。

 また和歌山市議会や石垣市議会では「日台交流基本法の制定を求める意見書」が可決され、国会議員連盟の保守団結の会でも「日台関係の基盤強化策として、我が国の窓口機関である公益財団法人日本台湾交流協会の予算や組織体制の更なる充実を図り、法的位置づけとなる『日台交流基本法』を制定すること」が決議されています。

 下記に13回目の「話の肖像画」全文をご紹介します。謝長廷代表がなぜ日台交流基本法制定へ熱情を傾けるのかがよくよく伝わってくるかと思います。

—————————————————————————————–「日台交流基本法」制定に期待台北駐日経済文化代表処代表・謝長廷(75)【産経新聞「話の肖像画(13)」:2021年9月14日】

《今年3月に自民党有志グループが参議院議員会館内で会合を開き、「日台交流基本法」制定を求める決議を行った》

 高鳥修一衆院議員らが代表世話人を務めている「保守団結の会」に招かれ、私も会議に出席しました。双方の交流促進を目的とした「日台交流基本法」の制定に加えて、自民党と台湾の与党、民進党との定期協議の開催などが決議されましたね。

 日本と台湾の間には正式な外交関係がなく、民間の交流が基本となっています。双方が結んでいる漁業や航空、課税などに関する合意は重要なものばかりですが、いずれも取り決めは双方の民間窓口機関が当事者であることに違いはありません。

 台湾側からみれば在日大使館の役割を果たしている台北駐日経済文化代表処も、大使や大使館員の役割を果たす私も職員も一般民間人の扱いであり、もちろん外交特権はありません。

 「日台交流基本法」の制定をめざすのは、民間の関係であったとしても、日台双方が法的にしっかりした取り決めをする必要があるとの考えからです。

《台湾の法的な位置づけが明確でないと不都合もある》

 すこし複雑な話ですが、仮に台湾人が日本で何らかの容疑で身柄を拘束されたとしても、日本の捜査当局は台湾の駐日代表処には通知してくれません。

 通常の国家同士の関係であれば、外国人の拘束や逮捕の場合、まず大使館や管轄エリアの領事館など公館に通知がきます。そして大使館などから担当官が出向いて、拘束された自国の人物に事情を聴く領事面接が認められます。仮に不利な扱いなどを受けていれば、支援もできます。

 日本では外国人登録証明書(現在では在留カード)の国籍欄に、以前は台湾人も「中国」とされており、反発する声が大きかったのです。その後、これが「国・地域」との表記になって「台湾」とすることもできるようになりました。しかし在留カード以外に日本で同じような問題がいくつもあり、残念ながら基本的な解決にはなっていません。

《米国は台湾に法的措置でどのように対応しているか》

 1979年に米国は中国と国交を結び、台湾と断交したのですが、同年に国内法で「台湾関係法」を制定しています。外交関係はなくなっても、台湾との関係を法的に定めたのです。

 台湾人に対する米国入国の査証(ビザ)や台湾パスポートの取り扱いは「Taiwan」としています。また、台湾の安全保障のための武器供与なども法的に定められています。日本では「ダメ」なことも、米国では問題ないことが多いのは、台湾関係法が有効に作用しているからですね。米国のさまざまな法律を台湾に対して「適用」はできなくとも、「準用」することができる規定もありますので。

《日台が何らかの公的関係を結ばないよう、中国が政治的な圧力をかけ続けているが》

 制定を求める声が広がり始めた「日台交流基本法」は、台湾のためだけではありません。留学や仕事など、台湾で暮らす日本人の方々、そのご家族も支えることになる。観光などで人的往来が多い日台関係を、法的にも安心して維持発展させることが、日本と日本人にとっても大事な課題になってきました。

 民主主義の価値観を共有する日本の国民が法律の重要性を理解して、政治を動かしてくださることを期待しています。私が駐日代表でいる間に「日台交流基本法」の実現に向けた道筋がつけば、と考えています。

(聞き手 河崎真澄)

※この記事はメルマガ「日台共栄」のバックナンバーです。

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