日台交流新時代の予感―この絆を太く、大切に  古市 一雄(本会千葉県支部幹事)

昨年12月23日に開催した本会の「日台共栄の夕べ」は、全国各地から約140名が集い、1年を締めくくるにふさわしい一夜となりました。

 ゲストとして、謝長廷・台北駐日経済文化代表処代表をはじめ、柿澤未知・日本台湾交流協会総務部長、吉田信行・元産経新聞論説委員長、頭山興助・呉竹会会長、エッセイストの一青妙さん、ジャーナリストの野嶋剛氏などが参加し、台湾からは李登輝元総統のご名代として王燕軍・李登輝基金会秘書長も早川友久秘書と出席。

 このような中、台湾独立運動を第一線で進めてきた王育徳氏の記念館や黄昭堂氏を記念する公園が造られ、羅福全、許世楷、金美齢、林建良の各氏が日台双方で叙勲まで受ける時代になったことについて、台湾独立建国聯盟日本本部委員長の王明理さんが「日台が受け入れた台湾独立運動」と題した講演で熱弁をふるい、本当に楽しくも充実した夕べとなりました。

 本会千葉県支部の幹事をつとめる元衆議院議員政策秘書で、かねてから日台交流に熱心な古市一雄(こいち・かずお)氏も千葉県鴨川市から「日台共栄の夕べ」に参加。このほど、かつて客員論説委員として社説を執筆していた「房日新聞」に参加した感想を謝長廷・台北駐日経済文化代表処代表とのツーショット写真とともに寄稿しています。

 古市氏は、謝長廷代表と台湾で何度かお会いしたときのことも踏まえ「謝長廷大使就任で、何か新時代の幕開けを予感」し、「日台関係の絆をより大切に太いものにしなければならない」とも感じさせられたといいます。参加した方々の感想を代弁していただいているような嬉しい一文です。

—————————————————————————————–日台交流新時代の予感―この絆を太く、大切に【房日新聞:2018年1月21日】

 年末の房日新聞の一面に、館山市の金丸謙一・市長と館石正文・館山市観光協会会長さんらが、台北駐日経済文化代表処(日本で言えば大使館相当)の教育部を訪ね、館山などへの修学旅行誘致にむけて、要望されたという記事が紹介されていた。時同じく12月23日には、私の所属している日本李登輝友の会(会長・渡辺利夫前拓殖大学総長)が主催して、「日台共栄の夕べ」が開催された。台湾側からは、財団法人李登輝基金会始め、台湾と日本の交流促進を願う研究者など総勢140名近い人が集まった。

 本年は、台湾側の来賓として、蔡英文総統の肝いりで着任した謝長廷代表(大使)が主賓として招かれ、今後の日台の関係についてスピーチした。小生も何度かこの懇談会には、出席しているが、かつて台湾民進党主席や行政院長(日本では首相に相当)を歴任した同氏が駐日代表となり、そして、出席したこと事態、大きな変化を感じた。そして、窓口になる機関もそれぞれ機構改革があった。

 台湾の歴史上、外交チャンネルは、1972年の日中国交正常化によって、国交断絶を余儀なくされ、以来、地域と国との関係となり、いわゆる民際外交(草の根の相互交流)に移行し今日まできた。双方の外交窓口は、外務省ではなく、日本側は、「財団法人交流協会」、台湾側は「亜東関係協会」という団体が担ってきた。しかし、民進党の蔡英文総統は、早速、この機構改革に乗り出し、昨年1月に名称変更し、台湾側は「台湾日本関係協会」、そして日本側は「公益財団法人 日本台湾交流協会」として新たな段階に入り、そのスタート台となった懇談会であった。

 実は、小生が謝長廷氏とお会いするのは、今回で3回目である。初めて、お会いしたのは、2008年台湾総統選挙の時だった。日本からの台湾総統選挙応援ツアーの一員として、台北市内の選挙事務所を訪ねたり、選挙戦最後の大集会で、日本側応援団の一員として壇上で紹介された。そして、ホテルの一室を貸し切り、テレビの開票速報を待った。結果は、国民党候補だった馬英九氏が当選、以後2期8年に及ぶ国民党政権が続くこととなってしまった。2回目は、小生が当時国会議員の政策担当秘書であった2010年10月、超党派で結成された国会議員、秘書団およそ30名で、双十国慶節(建国記念式典)に国賓として招かれ、式典に参加した時だった。当時は、野党党首であったので、公式行事が終わった後、数人の国会議員、秘書団に声を掛け、少し寂しい面会だったことを覚えている。

 懇談の中での説明は極めて具体的だった。協会が実施した中学高校生と大学生アンケートでは、友好的な国ランキングでは、72%が日本と答え、強化すべき言語は日本語というアンケート結果を踏まえ、まずは、親日国日本との交流を促進する必要性を強調しておられた。私としても、森田健作知事も幾度となく台湾を訪問され、農産物輸出拡大、訪日観光客を本県に呼び込むことを要請されていることを仄聞し、さらなる交流促進をお願いした。

 勤務していた城西国際大学の観光学部は、台湾内で観光学部を持っている国立高雄餐旅大学はじめ、複数の大学と提携関係にあり、留学生同士の交流、そして、高校生修学旅行の誘致に首都圏に近い房総半島の良さをアピールした。

 これに対し来年度からは、高校生の修学旅行という形だけでなく、1年間の高校生留学プログラムも実施したい旨のお話もいただき、民際外交に明るい話題を提供された。日本、台湾の双方の外交チャンネルの変更拡大、また、謝長廷大使就任で、何か新時代の幕開けを予感した懇親会となったような気がした。

 また、安倍一強政権下、米国トランプ大統領のアメリカ第一主義への協力的な発言が続く中で、日中関係、日韓関係ともに、お世辞にも良好とはいえない現在、日台関係の絆をより大切に太いものにしなければならない必要性を大いに感じた。同時に、修学旅行生のみならず、台湾からの観光客誘致に向けて、官民一体の努力が、より必要なのではないだろうか。現在の台湾は、それに応えてくれるだけのことを予感させる懇談会だった。

                          (日本李登輝友の会 千葉県支部幹事)

              ◇     ◇     ◇

古市一雄(こいち・かずお)昭和20年(1945年)、千葉県長狭町(現・鴨川市)生まれ。地元の小・中学校、千葉県立安房農業高校(現・安房拓心高校)を卒業後、長狭町役場、鴨川市役所に勤務。主に産業、企画部門を担当し、地域の活性化・国際化、まちづくりの根幹事業に従事する。その間、日本青年海外派遣団(昭和42年)として西アフリカを訪問し、また日本青友会幹事、千葉県PTA連絡協議会副会長を歴任。2005年(平成17年)2月、鴨川市と天津小湊町との合併を機に退職し、同年4月から2009年(平成21年)12月まで城西国際大学に勤務。その後、衆議院議員政策秘書を経て日本李登輝友の会千葉県支部幹事に就任。2005年6月から2009年12月まで「房日新聞」の客員論説委員として社説「展望台」を週2回担当。主な著書に『地方の品格―房日新聞「展望台」からのメッセージ』『南房総からの日本再考―続・地方の品格』など。


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