セールスのため訪台したことについては、本誌でも詳細を伝えた。「オール千葉」で臨んだ一大
ミッションであり、森田知事も「千葉の魅力を存分に発信でき、成果の多い訪台だった」と感想を
述べていた。
森田知事は訪台前に「次世代の交流が大事」として修学旅行を含む教育旅行など双方の若者交流
を促していきたいと抱負を述べ、呉敦義・副総統との会談では修学旅行もテーマとし、副総統から
交流強化に期待を示す発言を引き出してもいる。
森田知事の訪台中、同行した県庁観光担当部長が経済関係職員とともに高雄市内の大学を訪問
し、副学長と千葉県への修学旅行について話し合っている。
実は、この仲立ちをしたのは、国会議員の政策秘書や鴨川ロータリークラブ会長もつとめた、鴨
川氏の古市一雄(こいち・かずお)氏(69歳)だ。
古市氏は今夏、台湾・高雄市にある国立高雄餐旅大学から留学生のカウンセラーに任命されてい
る。そこで、これまでのキャリアやカウンセラーの立場を活かし、訪台に合わせて県と掛け合い、
この話し合いを実現させたのだった。
その経緯や意義などについて、古市氏が南房総をカバーする地元の日刊紙「房日新聞」に寄稿し
ているので、下記に全文を紹介したい。
8月9日付の「房日新聞」は、古市氏が留学生カウンセラーに任命されたことについて「古市さん
は、これまでも日台共栄を推進している日本李登輝友の会(会長=小田村四郎・元拓殖大学長)の
一員として、ボランティアで台湾学生に対しさまざまな支援活動をしており、正式に高雄餐旅大の
容維業校長から任命書が交付された」と伝えている。
このような形で本会が紹介されていたことに驚いたが、本当に嬉しいことであり、古市氏が堂々
と日本李登輝友の会の会員であることを名乗り、誇りを持って活躍されていることに心から敬意を
表したい。
この古市氏の仲立ちによる千葉県と台湾の大学側の懇談の結果、古市氏が書かれているように、
千葉県を訪れた台湾からの修学旅行生たちが好印象を持てば「その後の留学、実習、研修機会の増
加、就業による定住化、姉妹都市の締結など、好循環が創出される」ことになることは十分に予想
される。まさに森田知事がめざした状況が実現することになる。
実は、英語で「ローカル・ガバメント」と表現される都道府県などの地方公共団体が「地方政
府」として台湾との交流を深める方法はいろいろある。
例えば、県の教育委員会が台湾の自治体と「教育交流協力協定」(2014年5月22日)を結んで、
教職員の交流研修や生徒の交換研修、教育(修学)旅行、スポーツ交流などを進めている広島県、
県独自の事務所を台北市内に設置し、台湾の複数の自治体と「防災に関する相互応援協定」(2014
年2月17日)を結んでいる静岡県、教育や観光に特化した都市提携をしている長野県、群馬県、熊
本県など、先例はいくつもある。
千葉県として台湾との交流に今後どう取り組んでゆくのか、森田知事の手腕に期待がかかる。
◆留学生カウンセラーに古市一雄さん[房日新聞:2014年8月9日]
http://www.bonichi.com/News/item.htm?iid=9246
知事の訪台に合わせてプロモーション手助け 古市 一雄(亀田医療大学講師)
【房日新聞:2014年11月20日】
森田健作千葉県知事が観光経済ミッション団とともに訪台し、10月24日から30日までトップセー
ルスを展開、成果を挙げたことがマスメディアで報道されていた。
今回の台湾訪問は就任から2回目となり、国会議員時代に培われた人脈を生かして、総統府(台
湾の首相官邸)では、呉副総統を始め、「亜東関係協会」(同外務省)の李会長との接見、初めて訪
問する高雄市では、陳菊市長との一連の会談や地元のメディアに出演し、千葉の魅力を直接台湾国
民に訴えていたことが特色と思っている。帰国後の談話の中で「千葉の魅力を十分発信でき、成果
の多い訪台だった」と総括していた。
私は今回の知事訪問団の一行が、台湾第2の港湾都市、高雄を訪問するという情報をキャッチし
た。以前から城西国際大学と提携関係にある国立高雄餐旅大学(台湾唯一の国立観光総合大学)の
日本側実習、研修生の顧問を依頼されていた関係上、交流基盤を構築する絶好のタイミングである
という認識を持ち、県庁を訪ねた。
国立高雄餐旅大学から城西国際大学で観光を学んでいる留学生が6月に、千葉県の良さを世界に
向けて発信する「チーバ君大使」に任命された。その後、県の訪問団一行が、高雄市でトップセー
ルスを展開するという情報に接し、観光での産官学の連携上、ぜひ国立高雄餐旅大学を訪ねてほし
いと県庁の観光担当幹部に要請した。市役所を退職してかなり時が経過しており、窓口となる部門
との接触は枯れかけていたが、国会議員政策担当秘書時代に残っていたパイプを生かし、理解を示
していただいたものと思っている。
私も別の航空便で、前日までに高雄入りした。大学構内には、三つ星クラスを目指して学生が運
営する実習、研修を兼ねたホテルがあり、そこに宿泊して出迎えることとした。当日は、訪問団に
同行した県庁観光担当部長が経済関係職員を伴い、私たちは正面玄関で出迎えた。その後、貴賓室
に移動し、観光・国際を担当する大学の副学長以下関係者と学内案内、懇談会に臨み、具体的な話
し合いを持つことができた。
現在の台湾の教育方針として、高校の卒業旅行はなるべく海外にしているということ。そしてそ
の大半は、日本を対象にしているという説明があった。副学長は、高校教育旅行総合審査会の役職
も兼ねており、自身の認識として房総半島の南に位置する南房総は、台湾の南部に位置する高雄市
と地理的に共通するところがあり、ぜひ推薦地域としたい。日本の旅行先で生徒の訪れたいテーマ
パークとしては、東京ディズニーランドは大人気だが、鴨川シーワールド、各市町での体験学習、
地元の生徒との交流などは人気がある。台湾は、日本との国交はなく、今までは、旅行社を通じて
の交流が主体であったが、公的な機関が間に入ることによって、両国との交流に厚みが増し信頼性
は向上する。
県側からは、各市町の観光プロモーション窓口を充実させ、情報を共有、圏央道という交通イン
フラ整備も進んだ利便性を生かし、観光交流を半島振興の大きな事業として位置付け、観光による
房総経済の振興を図りたいと言っていた。
私としては、千葉県と国立高雄餐旅大学との話し合いを仲立ちすることが出来、これまでの観光
業者などの「産」と大学などとの「学」に、千葉県という「官」が加わることにより、海外におけ
る「産官学の連携による房総観光の交流」について、話し合える環境づくりが出来、観光に生きる
房総経済の振興になればこの上ないことと思っている。
人間の一生の中で「最初の旅は修学旅行にあり」と思っており、その旅行先に日本、房総半島を
選んでいただいて、好印象を持ったとすれば、その後の留学、実習、研修機会の増加、就業による
定住化、姉妹都市の締結など、好循環が創出される。半島経済のみならず、活性化が持続されるこ
ととなる。
(亀田医療大学講師)