め、台湾には北から順に、新北市、台北市、桃園市、台中市、台南市、高雄市の6つの直轄市があ
る。
1週間後に迫った統一地方選挙で、与党の中国国民党が優勢と伝えられるのは、新北市と桃園市
の2つ、民進党など野党が優勢なのは台北市、台中市、台南市、高雄市の4つ。毎日新聞が「政界の
勢力図を塗り替える可能性もある」として、台北市と台中市の選挙状況を伝えているのでご紹介し
たい。
ところで、一昨日の本誌で中国国民党のホームページから最終世論調査の結果をご紹介した。と
ころが、本誌読者の指摘により、台北市の調査結果がまったく逆だったことが判明した。
どこが間違っていたかというと、「蘋果日報」による台北市の調査結果だ。中国国民党のホーム
ページでは「連勝文(国民党):40.1%、柯文哲(無所属):28.6%」となっていて、中国国民党
候補者の支持率が高くなっていた。ところが、読者の方に送っていただいた「蘋果日報」11月18日
付の記事を見ると、まったく逆で、無所属候補が優勢だった。
中国国民党系だといわれる「TVBS」と「聯合報」の調査結果はいずれも中国国民党候補が劣勢
だったので、いぶかしく思いながらも「蘋果日報」の記事を確認せず、そのまま紹介してしまっ
た。お詫びして訂正したい。
読者の方から送っていただいた「蘋果日報」の記事を見ると、「柯文哲以41.1%支持率,領先國
民黨連勝文的28.6%」となっている。中国国民党のホームページでは「40.1%」。つまり、この数
字も違っていた。併せて訂正したい。
◆【大選】北市封關民調 柯41%連28%[蘋果日報:2014年11月18日]
http://www.appledaily.com.tw/realtimenews/article/politics/20141118/508227/
本誌を2004年2月4日に創刊して以来、中国国民党のホームページの記事を紹介したのは実は初め
てのことだった。こういうミスは、単なるケアレスミスとは思えない。何とか自党候補者を有利に
見せたいという心情が働いたのかもしれない。今後、本誌で中国国民党のホームページから記事を
紹介することは控えたい。
台湾統一地方選:29日投開票 与党が苦戦 有力地盤・台北、無党派広がる 16年の総統選に影響も
【毎日新聞:2014年11月22日】
台湾の統一地方選挙は29日の投開票まで1週間。馬英九総統が主席を務める与党・国民党は6直
轄市長選のうち、党の強力な地盤とされてきた台北市や台中市で苦戦し、野党系候補の優勢が伝え
られる。2016年の次期総統選の前哨戦ともなる史上最大規模の地方選の行方は、政界の勢力図を塗
り替える可能性もある。【台北・鈴木玲子】
台湾は北部が国民党の「青」勢力、南部は野党・民進党の「緑」勢力が強く、2大政党の対決が
続いてきた。特に政権のお膝元である台北市は国民党の有力な地盤だ。長期に及んだ1党独裁で掌
握した政財界に厚い支持基盤を築き上げた。1994年に直接選挙が初めて実施された台北市長選で
は、民主化の勢いとともに国民党系陣営の分裂も重なり、後に総統になった民進党の陳水扁氏が当
選したが、98年に国民党の馬英九氏が奪還してからは4期連続で国民党が市政を握る。
その市長選で異変が起きている。今回は、行政院長(首相)や副総統などを務めた連戦・国民党
名誉主席の長男で国民党新人の連勝文氏(44)と、無所属新人で台湾大学病院の外科医、柯文哲氏
(55)の事実上の一騎打ち。旧来型の青と緑の対決の構図とはならず、若者を中心に広がる既成政
党への不信感や政争への嫌悪感を背景に柯氏が人気を集めているのだ。
政財界に広がる連家の人脈や知名度、莫大(ばくだい)な財力を有すると言われる連氏が当初は
優勢との見方が強かった。ところが支持は伸び悩む。連氏は、米コロンビア大で博士号を取得し、
台北市の有力な交通カード関連会社の会長などを務めた。台湾で最も有名な市内の超高級マンショ
ンに自宅を持ち、若者の就職難や低賃金など格差社会が広がる中、華やかな生活ぶりが伝えられ、
特権階級を意味する「権貴」のイメージの払拭(ふっしょく)に躍起だ。連氏は「重要なのは私の
出身ではなく、私が台北のために何をするかだ」と強調する。
父の連戦氏は野党時代の国民党主席だった2005年に訪中し、中国共産党の胡錦濤総書記(当時)
との間で60年ぶりに国共トップ会談を実現した親中派だ。昨年2月の訪中では勝文氏も同行し、中
国の習近平総書記と面会した。台湾では今春、対中経済協定に反対する学生運動が起き、中国の影
響力が強まることへの住民の警戒心が噴出した。中国の影が色濃い連家に反発する住民も少なくな
い。
一方、柯氏は有名外科医でも政治経験はない。時には女性蔑視とも受け取られかねない「舌禍」
も相次いだが、率直な物言いで、既成政党による激しい政争に嫌気が差していた有権者の心をつか
んだ。高まる人気に民進党は柯氏に入党を打診したが、柯氏は拒否し、同党と一定の距離を置い
た。同党は6月、独自候補の擁立を見送り、柯氏支持に回った。
今月7日、両者による初のテレビ討論会は「政治の素人」と「政治の家柄」の対決として関心を
呼び、視聴者は最高時には人口の1割に当たる230万人に上った。16日に台湾紙「聯合報」が実施
した世論調査での支持率は、柯氏(42%)が連氏(28%)を上回り差は14ポイント。ただ態度表明
していない人も26%いる。
一方、中部の台中市長選は、民進党新人で立法委員(国会議員)の林佳龍氏(50)が国民党現職
の胡志強氏(66)をリードする。台湾の首長の任期は連続2期までだが、胡氏は合併前の台中市長
も務めていたため、在任期間は13年に及ぶ。胡氏が「多選」批判を浴びて苦戦するのに乗じ、民進
党が国民党の牙城である中部切り崩しを狙う。
「中部台湾の未来のために闘おう」。16日、台中市内の野外会場。民進党の台中市、彰化県、南
投県の各候補が集う大集会で、蔡英文主席が8万人(同党発表)の支持者を前に団結を呼びかけ
た。台北の政治評論家は「直轄2市を国民党が落とせば馬総統の責任問題につながりかねず、次期
総統選にも響く」と話す。
■ことば 台湾の統一地方選
台北市や高雄市、12月に合併して直轄市に昇格する桃園市を含む6直轄市と16県市の計22自治体
で首長や地方議員を選ぶ。任期はいずれも4年。町内会長に当たる里長なども含め九つの選挙を同
時に実施し、選出対象は計1万1130人で史上最大規模となる。6直轄市では台北、台中以外の新北、
桃園、台南、高雄の4市はいずれも現職リードとみられている。将来の国民党の総統候補の呼び声
も高い新北の朱立倫氏(53)や、高い人気を誇る台南の民進党、頼清徳氏(55)は、いずれも現職
で再選を目指すが、自らの選挙区以外でも候補者の応援演説に引っ張りだことなっている。