「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」より転載
宮崎正弘
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国際会議出席が名目だが、はたして中国共産党、誰がでてくるか?
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謝長廷が民進党国会議員数名を引き連れて、中国へ入った。10月4日、最初の訪問地・厦門では、空港に厦門副市長、章州市副市長が出迎え、謝の先祖が眠る東山島へ墓参したあと厦門大学を訪問、台湾華僑機関で挨拶した。
謝長廷といえば、弁護士出身の政治家。高雄市長、党主席、首相(陳水扁政権)をつとめ、2008年には野党の総統候補として馬英九と選挙戦を戦った(結果は惨敗)。
京都大学に留学し、日本語も流暢。ユーモアに溢れる人物である。
しかしながら民進党はこれまで中国とは明確に距離を置いた関与しか示さず、馬の北京べったり外交を批判してきた。謝の訪中は、野党の四天王のひとりであり、これまでの野党政治家では最高ランクの北京入りとなるため注目されている。
背景には従来、民進党支持と考えられた台湾の実業家が工場を進出させたりした結果、北京詣でを繰り返すようになり、あげくには台湾独立の先頭に立っていた実業家の許文龍「奇美実業」は液晶パネル工場を大陸に開設、エバグリーンの張栄発も台湾からの直行便を真っ先に開き、先月も北京へ詣でて、賈慶林・政治協商会議主席と会見したり、ムードが一変している。
許文龍は結局、中国に脅されて嫌気を指し、中国の工場を鴻海精密工業に売却した。鴻海は深セン工場での連続自殺事件や成都工場での暴動、太原工場での従業員二千名の乱闘事件などをかかえながらも大陸で80万人の雇用を抱え、さらにシャープとの合弁を模索、ブラジルにも工場を進出させるほど鼻息が荒い。
台湾実業界、もう一方の雄「旺旺集団」の蔡衍明は台湾漁船団の尖閣侵犯?示威行為の胴元になったばかりか北京礼賛派の「中国時報」を買収し、いまや中国の代理人に成り下がった。
こうした政治情勢の変化を背景に民進党は新しい路線を模索している段階だが、党主席の蘇貞昌をさしおいて、次期の党総統候補の主導権争いではライバル関係という構造を横目に見ながら謝は「熱愛和平」を唱えての訪中である。
もっとも謝長廷の北京入りは「国際調酒協議会」主催のイベント出席が名目で、中国共産党トップとの会談予定は発表されていない。
中国側の台湾工作は王毅(元駐日大使。台湾弁公室主任)が担当し、「野党であろうと中国は訪問を歓迎する」と表明している。さて5日北京入りする謝長挺を、共産党トップの誰がでてきて会うか?