【書評】川村純彦『尖閣を獲りに来る中国海軍の実力』(小学館101新書)

【書評】川村純彦『尖閣を獲りに来る中国海軍の実力』(小学館101新書)

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」より転載

               宮崎正弘
  

 まことに絶妙なタイミング、このテーマにまったくぴったりの筆者。

 元海軍パイロット、統幕学校副校長の経験がある川村さんは、あちこちの安全保障セミナーで顔を合わせる人だが、防衛問題のエキスパートで、最近は岡崎研究所の副理事長、日本戦略研究フォーラム幹事。

 本書はこういう風に書き出される。
 
「中国が尖閣諸島を獲りに来る場合、現状では東南アジア諸国から島を掠め取ったように、領土紛争の延長線上での通常兵器による領域の奪取という形を取るはずである。ただし、中国が最初から尖閣諸島に正規軍を送り込むなどということは考えられない。それこそ国際的な批判を浴びることになる。フィリピンやベトナムとの領有権問題がそうであったように、まず偽装漁民に上陸させ、その後、恒久的な施設を建設して実効支配を進めていくという作戦をとるはずである。その状況では、日米安保条約を結んでいるとはいえ、当初、米軍は介入できない」

 最近、評者(宮崎)も出席した幾多のセミナーで、米軍の専門家やシンクタンクの論客等は一様に、「米国は『尖閣諸島の帰属にかんする議論』には介入しない」という立場である。

 だから日本が守れと突き放している。

 となると、中国海軍が我が領土を盗みにやってくるシナリオは日々可能性が高まるが、いったい日本国民に領土をまもる意思があるのか、ないのか。

 川村さんは本書の最後にシミュレーションを試みられ、「偽装漁民」の上陸から、正規軍の登場、海保の犠牲ののちに出動が命じられる自衛隊は、いかにして戦い、いかにして中国海軍を敗北させるかを描く。

 2010年9月、まさに「偽装漁民」の暴力船長が、わが海保巡視艇にぶち当たった。日本側の防御態勢、反応を測定したのである。次は漁民ばかりか、反日活動家に扮した軍人が、尖閣諸島への上陸を試みるだろう。
 
決戦の日は近い?


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