「台湾の声」【抗議】日本の対台湾窓口がミスリードする台湾のリコール運動の本質
作者:周若珍・Narumi
(fbファンページ「なるみの楽しい日本語教室」主宰)
台湾情報誌『交流』Vol.1010の巻頭記事である、小林千乃氏が書いた「感情が動かす制度政治―台湾における否定的党派性とリコール運動―」という文章を拝読しましたが、非常に残念ながら事実を正確に反映していないと思います。
日本の方々に誤った認識を与えかねないと思われるので、僭越ながらここでいくつか反論させていただきます。
まず、「本来、リコール制度は立法委員個人の資質や立法活動を問うものである。
しかし今回のように、国民党団全員へのリコール提案にまで発展した背景には、個人の評価にとどまらず、党派間対立の延長として制度が戦術的に利用されている側面があるのではないか」と、あたかも今回のリコール運動は正当性に欠けているかのように作者は述べていますが、もちろん事実はそうではありません。
むしろ今回のリコール運動は、まさに「立法委員個人の資質や立法活動を問うもの」なのです。
程度の差はありますが、立法委員として適任だと言える中国国民党所属の立法委員なんて一人もいないと市民は考えているからこそ、全員に対してリコールが提起されたのではないですか。
なぜ適任ではないかについては、それぞれのリコール団体はすでに長い時間をかけてきちんと論理を立てて何度も何度も説明してきたと思います。
その説明に納得した人は署名し、納得しない人は署名しなくていい、という単純なことだけです。
また、「民進党主導のリコール運動」という言い方には本当に仰天してしまいました。
お言葉ですが、プライベートの時間を利用して、罵声を浴びられるだけでなく暴力を振るわれる恐れさえあるにも関わらず、なお勇気をもって、自発的かつ積極的にリコール運動に参加している市民たちをバカにしているのですか。
私が最も理解できないのは、作者は「『国民党団は中国による台湾社会への浸透に加担しており、議会多数を武器に議論を封殺して政策を強行している』との認識が、民進党支持者の間で広がっていることがある。
このような危機意識から、『可能な限り多くの国民党所属立法委員をリコールし、民進党候補を当選させることで、国会を正常化しなければならない』といった思考が働いていると考えられる」ということを正確に捉えているのに、なぜそれを「感情的分極化」とし、「双方が『自党以外はすべて敵』とみなすような、敵対感情の応酬状態に陥っている」という結論を導いたのか、ということです。
「自党以外はすべて敵」ではなく、明らかに「中国による台湾社会への浸透に加担しているような政党は敵」なのではないですか。
台湾人は決して「国民党が嫌いだからリコールする」のではなく、中国という敵国の侵略に必死に抵抗しているのです。
台湾人のこの自分の国を自分の手で守ろうとする気持ちを、「党派間対立」と安易に決めつけないでいただきたいものです。
編集部注:本記事の標題は編集部(担当:多田恵)による。
『交流』は公益財団法人日本台湾交流協会発行、Vol.
1010は2025年5月号である。
問題の記事の筆者は日本台湾交流協会台北事務所専門調査員として寄稿しているが「本稿の内容や意見等は日本台湾交流協会の公式見解を示すものではなく、また政治的な立場を示すものでもない」と記されている。
しかしながら、問題の記事を日本台湾交流協会台北事務所が同誌に掲載し、広く伝えたことも事実である。
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