危機を高め、緊張を煽る中国軍ははたして何処まで本気なのだろう?
宮崎正弘
2013年11月23日、中国政府は突如、東シナ海上空に戦闘機による緊急発進(スクランブ
ル)をするかどうかの基準=「防空識別圏」の一方的な設定を発表した。しかも同日午前
10時(日本時間同11時)から施行した。
この恣意的で身勝手な「防空識別圏」には尖閣諸島(沖縄県石垣市)上空周辺が含ま
れ、日本が既に設けている防空識別圏と重なり合う。即ち戦争の一歩手前の状態を宣言す
ることに等しく、一触即発の緊張を伴うのが「防空識別圏」であり、軍事的な脅威のレベ
ルが高まる。
嘗て台湾が「防空識別圏」を設定したとき、たとえば香港行きのJALはフィリピン上
空を迂回する羽目に陥った。このため飛行時間が一時間ていど遅れた。JALは、後日
「日本アジア航空」を設定した。
中国が主張する「防空識別圏」は朝鮮半島の南側から台湾の北側まで、日本の南西諸島
に沿うように設定されており、この防空識別圏を飛ぶ航空機は飛行計画を中国外務省また
は航空当局に提出する義務を負うとされている。
日本政府はただちに反駁し、強く抗議した。
米政府もすぐに反応した。外交と軍事双方のルートを通じて「強い懸念」を中国政府に
伝えたが、これは米政府の抗議である。
ケリー国務長官とヘーゲル国防長官、ならびに国家安全保障会議(NSC)は一斉に声
明を発表した。
産経新聞に従うと、「ヘーゲル長官は、防空識別圏の設定を「地域の現状を変更し、不
安定化させる試みだ。一方的な行動は誤解と誤算(による不測の事態)の危険性を増大さ
せる」と非難し、「日本を含む同盟・友好国と緊密に協議する」と強調した。さらに、尖
閣諸島が日米安全保障条約第5条の適用対象であることを「米国は再確認する」と中国に
くぎを刺し、防空識別圏の設定でも「この地域における米軍の軍事作戦の遂行に、一切変
更はない」と警告した。
米政府は「尖閣諸島は日米安保条約の適用対象」と繰り返し表明しており、その外交的
経緯をまったく無視した中国の防空識別圏設定は「米国と日米同盟へのあからさまな挑
戦」(米国ペンタゴン筋)である。つまり米国は、自分の国が馬鹿にされたと怒っている
のである。