識別圏」(事前通報のない航空機などが入った際に戦闘機を緊急発進させる基準)設定を
発表した。由々しき事態だ。
外務省は即座に電話で在日本中国大使館に抗議し、台湾の行政院大陸委員会も「大陸側
は争いを棚上げし軍事措置を取るべきではないとし、国防部や外交部とともに今後の動き
を随時注視していく」(中央通信社)と述べ、国防部も遺憾の意を表明した。
さらに米国も「一方的な行動は誤解と誤算(による不測の事態)の危険性を増大させ
る」として非難声明を発した。
中国問題に精通する宮崎正弘氏が本日のメルマガで「日本への戦争準備完了宣言か」と
書かれている。下記にご紹介したい。
なお、2010年6月、防衛省が与那国島の上空を通過する「防空識別圏」の境界線を、領空
の2カイリ西側へ半円状に拡大することを発表したことで、台湾が日本側の一方的な決定で
あると反発したことがあった。
しかし、これは与那国島上空の日本の領空と台湾の防空識別圏が重複していたために取
った措置で、台湾側も当時、すでに与那国島の上空を避けて飛行していたことから「防空
上の問題は事実上生じない」ことを見越しての措置だった。
今回の中国側の危機を増大させる措置とは真逆の、危機回避のための日本の「防空識別
圏」境界線移動措置で、台湾の反発は形式的なものだった。その背景には、安全保障に関
する日台の民間会議などの積み重ねがあり、沖縄の南西航空混成団司令だった方々の陰の
交渉があったと漏れ聞く。
中国の一方的な「防空識別圏」の設定は日本への戦争準備完了宣言か
危機を高め、緊張を煽る中国軍ははたして何処まで本気なのだろう?
【宮崎正弘の国際ニュース・早読み:平成25(2013)年11月25日】
2013年11月23日、中国政府は突如、東シナ海上空に戦闘機による緊急発進(スクランブ
ル)をするかどうかの基準=「防空識別圏」の一方的な設定を発表した。しかも同日午前
10時(日本時間同11時)から施行した。
この恣意的で身勝手な「防空識別圏」には尖閣諸島(沖縄県石垣市)上空周辺が含ま
れ、日本が既に設けている防空識別圏と重なり合う。即ち戦争の一歩手前の状態を宣言す
ることに等しく、一触即発の緊張を伴うのが「防空識別圏」であり、軍事的な脅威のレベ
ルが高まる。
嘗て台湾が「防空識別圏」を設定したとき、たとえば香港行きのJALはフィリピン上
空を迂回する羽目に陥った。このため飛行時間が一時間ていど遅れた。JALは、後日
「日本アジア航空」を設定した。
中国が主張する「防空識別圏」は朝鮮半島の南側から台湾の北側まで、日本の南西諸島
に沿うように設定されており、この防空識別圏を飛ぶ航空機は飛行計画を中国外務省また
は航空当局に提出する義務を負うとされている。
日本政府はただちに反駁し、強く抗議した。
米政府もすぐに反応した。外交と軍事双方のルートを通じて「強い懸念」を中国政府に
伝えたが、これは米政府の抗議である。
ケリー国務長官とヘーゲル国防長官、ならびに国家安全保障会議(NSC)は一斉に声
明を発表した。
産経新聞に従うと、「ヘーゲル長官は、防空識別圏の設定を「地域の現状を変更し、不
安定化させる試みだ。一方的な行動は誤解と誤算(による不測の事態)の危険性を増大さ
せる」と非難し、「日本を含む同盟・友好国と緊密に協議する」と強調した。さらに、尖
閣諸島が日米安全保障条約第5条の適用対象であることを「米国は再確認する」と中国に
くぎを刺し、防空識別圏の設定でも「この地域における米軍の軍事作戦の遂行に、一切変
更はない」と警告した。
米政府は「尖閣諸島は日米安保条約の適用対象」と繰り返し表明しており、その外交的
経緯をまったく無視した中国の防空識別圏設定は「米国と日米同盟へのあからさまな挑
戦」(米国ペンタゴン筋)である。つまり米国は、自分の国が馬鹿にされたと怒っている
のである。