【台湾】熱い日本支援・「超A級の国民にC級の政府」

【台湾】熱い日本支援・「超A級の国民にC級の政府」

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2011.4.9 産経新聞

 東日本大震災直後、台湾は未曽有の災難にも礼節と秩序を維持して堪え忍ぶ日本の被災者への深い同情と、驚きにも似た称賛の声に満ちていた。それだけに発生直後からの台湾各界の日本支援は極めて熱い。しかし日本政府や東京電力の対応が後手に回り、放射性物質(放射能)汚染が広がるにつれ、対日観光のキャンセルが相次ぐなど、汚染被害への警戒も強まっている。

 外交部の調べによると、義援金(1日現在)は約37億4千万台湾元(約110億円)と米国をもしのぐ勢いで、うち9割以上が民間からという。産経新聞台北支局にも募金や援助物資寄贈の申し入れのほか哀悼、見舞いの電話が相次いだ。

 日本の対台湾窓口機関、交流協会が昨春発表した調査でも、台湾人の52%が日本を好感度1位に選んでいたが、親日台湾の面目躍如といえよう。

 その一方、震災1週間後ぐらいからは日本政府の救助や原発事故対応のもたつきへの批判も高まり始め、「超A級の国民にC級の政府」(台湾紙、聯合報)との評価も一般化した。「立派な国民がいても政府や自治体の災害処理の方針がはっきり決められない現状では、国民がかわいそう」(李登輝元総統)というわけだ。

 近隣だけに、原発事故処理の失態や放射能被害への懸念も次第に高まっている。行政院(政府)は3月25日、福島、茨城、栃木、群馬、千葉5県からの食品輸入を全面停止。酒類輸入最大手の橡木桶(台北市)は29日、日本からのすべての輸入を停止した。震災直後は日本食品の買いだめが起きたが、放射能汚染の拡大につれ買い控えが強まっている。

 北部の漁港では魚の卸値が600グラム当たり20〜50台湾元(60〜150円)下がり、売り上げも3割減った。

 こうしたなか、台湾気象局は4月2日、「福島原発事故による放射能が6日夜にも飛来する」との予報を初発表。行政院原子力委員会は「汚染レベルは1時間0・06マイクロシーベルトと警戒値の0・2マイクロシーベルトを下回る」見込みとし、「健康に影響はないが、もし警戒値を超えれば警報を出すので、外出を控えるか傘を差してほしい」などと呼びかけた。

 しかし気象局は5日夜になって、「放射能は日本の東方に向かい、今週中に台湾に到来することはない」と予報を修正するなど混乱している。

 台湾の旅行業界団体の見積もりによると、台湾から日本への桜見物客も、地震と原発事故で「キャンセルが15万人(ツアー5万人、個人10万人)に上った」。

 一方、台湾には日本旅行を予定していた中国人観光客がシフトし、高雄市では中国人客が激増。日本行きを見合わせた台湾人観光客はマレーシアやタイなど東南アジアに流れている。

 また、大震災は原発問題を来春の台湾総統選挙の重要争点としつつある。

 民進党の総統選候補に立候補した蔡英文・同党主席は3月24日、来年末完成をめざして建設中の第4原子力発電所(新北市)の商業運転に反対を表明、2025年までに第1〜3までのすべての既存原発も廃棄する政策を掲げて賛否両論を巻き起こしている。

(台北 山本勲)


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