たり新しい希望を抱き、希望する目標に向かって、希望の実現のために、これから一年
努力なさることと存じます。私はここに新しい年を迎えるにあたり、台湾と日本の関係
がますます良好な関係を築けるよう願い、それに向かってより一層努力してまいりたい
と思います。
●進んだ台日間の文化・観光交流
昨年は台日文化観光交流年として、特に文化交流と観光に焦点をあてて台湾と日本の
関係を推し進めてまいりました。文化交流の点では特に昨年10月に早稲田大学125周年記
念祭の中において「台湾文化週間」を企画し、さまざまな台日文化学術交流を行いまし
た。
人形芝居(布袋戯)は台湾の伝統的でシンボリックな文化活動であり、私も子どもの
頃、祭りがあると人形芝居の舞台がどこにあるかと探して回ったものです。それくらい
台湾で慣れ親しまれているものですが、それを日本の早稲田大学で実演し、しかも日本
語で公演したことは大変感銘をあたえるものでした。
台湾先住民族の音楽公演も大変評判でした。東京の早稲田大学のほかにも、名古屋の
中京大学で「台湾デー」として台湾先住民族の文化と音楽の講演と実演を行い、普段わ
れわれが知らないもう一つの台湾の側面を披露したということで大変意義深いものがあ
りました。
昨年はじまった戦後の台湾史の台日共同研究は、日中、日韓の歴史共同研究とはまた
異なった、しっかりとした確実な事実に基づくことから出発し、戦後の国際情勢変化の
中における台湾外交や民間人の戦後の台湾情勢変化に対する反応等、主に6つのテーマ
について今年は具体的な成果が出てくるでしょう。
このほか、台日の若者同士の対話は、これまで70歳以上の日本語世代の日本理解に基
づいていた関係を超えて、日本の若者の体験的な台湾理解と、台湾の若者の体験的な日
本理解を直接意見交換したということで、特に今年のテーマである青少年交流と地方交
流の出発点になったと確信しております。
●今年のテーマは青少年交流と地方交流の推進
青少年の交流については、春に日本の小学生の台湾訪問や、台湾の高校生の日本訪問
などを企画しております。今年はこれらの交流を強化してまいりたい所存であります。
地方交流については、昨年は自動車運転免許証の台日相互承認が実現し、より地方へ
の観光および交通手段が便利になりました。かつて台湾から日本を訪問する観光客は、
東京、京都、大阪などの大都市にかたよっていましたが、いまや至るところに、多くの
台湾観光客が足を運んでいます。おそらくこの趨勢は今後も変わらず、ますます発展し
て行くことでしょう。
●日本人が興味を持つ観光ルートの開発を
一方、日本からの観光客を台湾の地方にどう引きつけるか、それが一つの課題となっ
ています。過去、ほとんどの観光客が台北のみの滞在でした。台湾新幹線ができたこと
により高雄まで足を延ばす旅客は増えてきましたが、ぜひそのほかの地方にも足を運ん
でいただきたいものと思っております。
台北と高雄の間の途中いくつもの駅の近くには、個性的な観光地があります。私たち
は観光機関や地方政府に対して、日本人や日本の歴史に関する名所や旧跡にはっきりと
した形で標識や記念碑を立てるなどの誘致活動をするようお願いしているところです。
昭和天皇は皇太子だったときに台湾を訪問された際、植樹をしておられます。ならばど
こに植樹されたのか、そこを訪ねて行ったり、北投の温泉記念館のように当時宿泊した
施設も現在なお残っています。台湾から日本を訪れる人が奥の細道を回りたいのと同じ
ように、関心を持っている方はこういう形で台湾を興味深く旅行できるのではないでし
ょうか。
また、花蓮の日本人移民村をはじめ、台南の八田與一技師が設計した烏山頭ダム、台
湾中部の日月潭の水力発電などの所在を取り上げ、日本との歴史と関連した観光ルート
を開発することも、来年の地方交流の基礎となるのではないかと思っております。
これらを進めるにあたって、在日台湾僑胞の皆様も十分関与し、貢献できるのではな
いでしょうか。日本人は台湾のどのようなところに興味を持っているか、また、こうい
う面白いところがあるというものを日本の人々に話すこともできます。このような形で
日本との交流においてもお手伝いをお願いしたいと存じております。
●投票権のある台湾僑胞は帰国して投票を
今年は台湾にとって大事な年です。昨年末には韓国で大統領選挙がありました。その
数日前には謝長廷・民進党総統候補が日本を訪問し、その一ヶ月前には馬英九・国民党
総統候補が訪日しました。日本人や在日僑胞にも台湾の選挙活動の一端を披露したわけ
ですが、それらが示すように、1月12日に立法委員(国会議員)選挙、そして総統選挙が
3月22日に控えています。
台湾は日本と違って総統制(大統領制)ですから、総統選挙は国会の立法委員選挙よ
りもさらに注目と期待を集めることでしょう。候補者の一人は知日派、もう一人は親日
派と自らを位置づけております。そうした意味において、これからの台湾と日本との関
係が変化することも考えられます。
今後国際的に、総統選挙および同時に行われる国連加盟の国民投票の視察ツアーを企
画していますので、ぜひとも台湾に関心を持っておられる日本の方々にも、できるだけ
多く参加していただきたく思っております。また、日本在住の台湾僑民の方々で投票権
がある人は、大変重要な選挙ですのでぜひ帰国して投票されるようお願いします。
来年は多くの国の選挙が続いています。米国では年末に大統領選挙があり、日本の国
会選挙も今年中にあることが予測されております。台湾の国際環境が、台湾も含むこれ
らの選挙によってどうのように影響されるのか、注目する必要があると思います。私た
ちは、それぞれが自己の信じる方向を、民主主義の形で推し進めていき、しかも民主主
義という線からはみ出さない形でこれらの行事に参加し、台湾の前途を決めていくこと
は、皆様の今年のもう一つの大事な仕事として考えていただきたいと願っております。
最後になりましたが、世界の平和とアジアの安定を祈念するとともに、台湾と日本の
友好関係のさらなる強化を願い、新年の挨拶とさせていただきます。
【2008年元旦】