2007年元旦祝辞 許世楷・駐日代表
日本の友人の皆様、在日僑胞の皆様、謹んで新年のお祝いを申し上げます。自由と民主
主義という共通の価値観を有する台湾と日本の関係が今後ますます発展するよう、ここに
新しい年を迎えるにあたり、さらに邁進していきたいと願っております。
●安倍内閣のもと、さらなる台日関係促進に期待
日本で安倍新内閣が成立し、日本の外交政策において懸念されていた日中関係もこれま
でと違い順調となりつつあります。これは非常に喜ばしいことではありますが、中国はい
まだ独裁国家で日本とは基本的な社会観が異なっており、この点には十分な注意と警戒が
必要かと存じます。一方、台湾は日本と同じ自由と民主主義の国であり、安倍政権のもと
で今後も両国の関係がさらに促進されるものと期待しています。
●台日は基本的価値観を共有 連携し地域情勢に対応
昨今、東アジア地域においては台湾海峡問題と、北朝鮮の核問題という二つの問題があ
り、これらの問題に中国はともに大きく関わっています。すなわち台湾海峡においては絶
えず軍事拡張を進め、両岸の緊張をもたらし、また北朝鮮問題においては、表面的には仲
裁役となっているかに見えるものの、その実、基本的な独裁社会という点で中国は水面下
で北朝鮮と繋がっています。日本の新政権は、今後こうした情勢に適切に対処していかな
ければなりません。対中国、対北朝鮮の関係において台湾と日本は同様の立場にあります
。今後も基本的な立場を堅持し、両国の関係を強化する必要性はここにも存在しておりま
す。
●安全保障面での連携促進に向け、台日関係の制度化を
台湾と日本の関係は、地理的にも民主主義擁護の共通した立場からも、国家の安全保障
において緊密に連携していく必要がありますが、それを推進するための制度ならびに構造
がまだ両国間にはありません。この点をいかに補うかは、今後の大きな課題と言えるでし
ょう。台日は平等互恵の関係で非常に親密な間柄だと見られていますが、実際には正式国
交がないために、台湾はことごとく互恵平等でない扱いを受けがちです。二国間の関係促
進を進めるうえで、この点に留意し解決策を喫緊に模索していかねばならないと思います
。日本政府ならびに国民の方々が、経済文化交流の必要性とともに、この点について一層
認識を深められるよう切望しております。
●自由と民主主義の堅持こそ台日と地域の安定に繋がる
一方、台湾国内においては、昨年末の台北、高雄両市長選挙および市議会議員選挙が実
施され、台北市長に最大野党国民党、高雄市長に与党民進党の候補者が当選するという結
果になりました。与野党の対立は、今後2007年の国会議員選挙、翌08年の総統選挙に向け
て継続していくと思われますが、これらの選挙の結果は、台湾と中国の関係に変化をもた
らす可能性がありますし、ひいては台湾と日本の関係、東アジア全体のパワーバランスに
変化を及ぼすことも否定できません。今後ともわれわれは自由と民主主義を堅持していか
ねばならず、この意味においても新しい良好な台日関係がさらに発展していくことを願っ
てやみません。
●台湾高速鉄道が開通、台日関係の増進に繋がることへの期待
時速300キロで台北−高雄間を約90分で結ぶ台湾高速鉄道(台湾版新幹線)の開通には大
きな経済効果が期待されています。これは日本の新幹線技術が初めて海外に輸出された例
であり、目下開業に向けての作業が鋭意推進されております。台湾の在来線はこれまで100
年にわたって台湾の北と南の経済圏を繋ぎ、社会の発展に寄与してきましたが、これから
先の新しい100年間は、この台湾版新幹線が台湾の社会の発展と構造の変化を促す役目を担
うことになります。台湾高速鉄道の開業は日本の各界でも注目されており、台湾を訪れる
観光客にとっても大きな魅力となるでしょう。その開通によって、台日関係がさらに緊密
なものとなるよう期待しています。
●在日僑胞へのメッセージ
台湾が国際社会でこのような状況と位置にあるなか、外国である日本でさまざまな分野
で台湾の政府を支持してくれている僑胞の皆様に、まずは心より感謝を述べたいと思いま
す。台湾をめぐる状況はこれからもすぐに変わるわけではありませんが、われわれは自由
と民主主義という、歴史の必然の流れである価値観を選択しています。この世界の主流の
価値観を堅持しつつ、たゆまず努力して行けば、同じ価値観を持つ日本での社会生活はよ
りスムーズになり、またわれわれの未来は必ず拓けると確信しております。今後も皆さん
と手を携え、奮闘していきたいと願っております。
最後になりましたが、世界の平和とアジアの安定を祈念するとともに、台湾と日本の友
好親善のさらなる増進を願い、新年の挨拶とさせていただきます。
2007年 元旦