台北では台湾総督官邸(現在の台北賓館)や台中州知事官邸、高雄寿山館、お召艦「金剛」などを御泊所とし、新竹、台中、台南、高雄、さらには澎湖島の馬公にまで足を延ばされています。
摂政宮殿下はこの間に4度、台湾にちなんだ植物をお手植えされました。最初は4月17日に台北の台湾神社拝殿東側に油杉、次が18日に台北の台湾軍司令部玄関前庭にガジュマル(榕樹)、3回目が20日に薨去された北白川宮能久(よしひさ)親王を最初にお祀りした台南の新営神社の拝殿先中間左側にガジュマル、4回目が21日に台南の歩兵第二連隊(現在の成功大学)営庭にガジュマルをお手植えになっています(参考:名越二荒之助・草開省三編著『台湾と日本・交流秘話』所収「摂政街道・民衆の心に生きる昭和天皇」、片倉佳史著『古写真が語る台湾』所収「詳録・裕仁皇太子の台湾行啓」)
台北では台湾の人々が歓迎の意を表して御泊所近くの道路の両側に桜を植え、22日に屏東の台湾精糖屏東工場を訪問された際には、特設休憩所のテントの支柱としていた台湾特産の麻竹に新芽を発見され、台湾の人々は「瑞竹」と称揚し、大切に育んできたそうです。
そこで、このたびの今上陛下のご即位をお祝いし、「台湾民間『昭和天皇皇太子時代台湾行啓した際に植えた櫻樹など日本里帰り』を推進する会」(略称「桜里帰りの会」)は、昭和天皇にちなむ台湾の桜、竹、ガジュマルの苗木を日本に寄贈することになったそうです。
10月19日、東京・港区内の明治記念館で目録贈呈式及び記者会見を行い、曾文恵・李登輝元総統夫人からのメッセージが披露され、安倍洋子さん(安倍総理ご母堂)や謝長廷・台北駐日経済文化代表処代表、許世楷・元台北駐日経済文化代表処代表とともに、加瀬英明・本会副会長が「桜里帰りの会日本会長」として臨み、また本会常務理事の趙中正・全日本台湾連合会会長も臨席するそうです。
桜などの苗木は日台双方で植物検疫を受けなければなりませんので、来年以降、適当な時期に植樹式を行うそうです。
下記に目録贈呈式及び記者会見の詳細と、贈呈することになった経緯などを報ずる産経新聞の記事をご紹介します。
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「桜里帰りの会」の目録贈呈式及び記者会見
日 時:令和元年10月19日(土)午後1時30分〜
場 所:明治記念館 1階 芙蓉の間 東京都港区元赤坂2-2-23 TEL:03-3403-1171 https://www.meijikinenkan.gr.jp/access/
出席者:黄 石城 台湾伝統基金会会長、台湾「桜里帰りの会」会長 許 世楷 元台北駐日経済文化代表処代表 謝 長廷 台北駐日経済文化代表処代表 趙 中正 全日本台湾連合会会長 安倍洋子 書家、日本「桜里帰りの会」名誉会長 加瀬英明 外交評論家、日本「桜里帰りの会」会長
メッセージ:曾文恵 李登輝元総統夫人、台湾「桜里帰りの会」名誉会長 陳水扁 元総統
問合わせ:加瀬事務所TEL:03-3262-5226 FAX:03-3263-1585
—————————————————————————————–台湾、即位の礼祝う 昭和天皇ゆかりの植物里帰りへ 【産経新聞:2019年10月16日】
https://www.sankei.com/world/news/191016/wor1910160004-n1.html写真:裕仁親王が植樹された国立成功大学のガジュマル。立派に成長し、観光スポットとなってい る=台南市(「桜里帰りの会」提供)
22日に行われる天皇陛下の即位の礼を祝うため、台湾政財界の知日派が、昭和天皇が皇太子時代に行った台湾行啓(ぎょうけい)の際に植えられた桜や竹、ガジュマルの苗木を日本に寄贈する計画を進めていることが分かった。複数の関係者が明らかにした。受け入れる日本側の賛同者とともに「桜里帰りの会」をつくり、19日に東京・港区の明治記念館で目録の贈呈式を行う予定だ。(矢板明夫)
台湾側の「桜里帰りの会」では、李登輝元総統夫人の曽文恵氏が名誉会長、李登輝時代に政務委員(閣僚)などの要職を歴任した黄石城氏が会長を務める。許世楷・元台北駐日経済文化代表処代表(駐日大使に相当)、趙中正・全日本台湾連合会会長などが発起人として名前を連ねる。
受け入れる日本側では、安倍晋三首相の母親で書家としても知られる安倍洋子氏が名誉会長、外交評論家の加瀬英明氏が会長を務める。目録贈呈式には、謝長廷・台北駐日経済文化代表処代表も出席する。
里帰りするのは、1923(大正12)年4月、当時の摂政宮皇太子裕仁親王の台湾行啓にちなむ植物。桜は台湾民衆が親王を歓迎するため、宿泊先である台北・草山賓館までの道路両側に植えたもの。竹とガジュマルは、親王が屏東と台南で自ら植樹されたものだという。関係者は、それぞれの苗木数株を日本に寄贈し、皇室ゆかりの各地に植えたいとしている。
苗木を日本に入れる際には植物検疫などの手続きに長時間を要するため、台湾側の関係者は即位の礼の前に来日し、まずは目録を日本側に渡すことにしている。
台湾側の黄石城会長は産経新聞の取材に対し、「今回の『植物里帰り』を通じて台湾と日本の太い絆を改めて確認し、双方の関係をさらに発展させたい」と話した。
日本側の会長、加瀬氏は「大変ありがたい話であり、うれしく思います。これからは、全国各地の昭和天皇と皇室ゆかりの地に声をかけ、台湾の皆さんのご厚意を広げていきたい」と話している。
■良好な対日感情反映
昭和天皇は皇太子時代の大正12年、台湾を訪れて計12日間滞在され、台北、台中、台南、高雄など北から南へ各地を回られた。皇太子裕仁親王を歓迎するために民衆が植えた桜や、親王が手植えされた竹やガジュマルは大事に育てられ、今では観光スポットになっている。特に台南の国立成功大学構内にあるガジュマルは、大手保険会社の商標に選ばれるほど立派な姿となり、地元では、結婚記念撮影の背景としても人気を博しているという。
同じく日本による統治を経験した韓国では、日本時代に植えられた樹木を「日帝時代の残滓(ざんし)」とし、伐採を推進している。これとは対照的に、台湾では民衆の対日感情の良さを改めて実感させられる。
今回の「桜里帰り」計画は、即位の礼の日程が決まる数カ月前から準備が進められた。台湾の政財界など多くの著名人の賛同を得ている。関係者によれば、事務局が植物を管轄する台湾の当局者と交渉する際も協力的で「日本の新天皇即位を祝うためなら」とわがことのように喜んでいた。
しかし、22日に行われる即位の礼で、日本政府は約200の国や機関に招待状を送ったが、台湾は含まれていないという。反日政策を推進してきた中国の王岐山国家副主席や、韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相も出席するが、日本皇室に最も好意を抱く台湾の政治家は立ち会えず、多くの日台関係者を落胆させている。
台湾での研究によれば、戦前、裕仁親王をはじめ日本の皇族27人が台湾を訪問された。しかし、その後、中国への配慮などから、日本の皇室関係者と台湾の交流は途絶えている。
今回の「桜里帰り」で日台の太い絆が再確認され、皇族の台湾訪問実現につながることを多くの台湾人が期待している。
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台湾行啓1923(大正12)年の摂政宮皇太子裕仁親王による台湾ご訪問。軍艦「金剛」で4月12日に横須賀港を出港し、16日から27日まで台湾に滞在された。台北駅に到着された際には、同市の当時の人口約17万人の半分を超える10万人の出迎えがあった。台北、台中、高雄、台南といった主要都市をはじめ60カ所以上を視察され、200以上の祝賀行事が催されたとの記録がある。帰路の29日、洋上で22回目の誕生日を迎えられた。